半分夢の中で、聞き慣れないピンポンの音がした。スマホのアラームの音、こんな音にしたんだっけ? 電話の着信音 変えたっけ? う~ん、誰? 寝返りをうった。枕元にある筈のスマホを手探りで、布団から畳まで手を伸ばして、やっとスマホを見つけた。寝ぼけたまま、スマホのボタンを探し、画面が明るくなって、ロックを外そうと指を動かすが、巧く動かせずやり直している内に、ピンポンに重ねて、今度ははっきり聞こえた。ドンドン叩く音。スマホのロックを解除して、ピンポンはスマホではなく、ドンドンもドアで ピンポンは家の呼び鈴だと気づいた。気づいたけれど、ここはどこ? え~と、俺、誰?とまでは思わないけどさ、なんて、馬鹿なセリフが頭の中で響いていた。だんだん意識がはっきりしてくる。取り敢えず布団から出て、頭に当たった紐を引っ張れば照明が灯くはずなのが、消してしまった。もう一度、二度引っ張って、やっと明るくなって。まだぼんやりした頭で周囲を見回して、ピンポンとドンドンの意味が分かった。うわっ、血流が一気に上がる。血流が上がると、血圧は上がるんだっけ下がるんだっけ、頭の端ではまだ余計なことを考えている。一気に上がった血流で、階段をドタドタ降りていき、スマホが引っ張られてコードから外れ、ほぼ同時に俺は階段を踏み外してダダダッと十段ぐらい滑り落ちたので、凄まじい音がした。いや、音よりも何よりも腰も肩も痛い。玄関のたたきに落ちる寸前で止まった。イタタタ。すぐ目の前のドアの外から
「大丈夫ですか」
「はっ、はい」
「ほら、やっぱり誰かいるでしょ」
「すみません、K警察ですが、確認させていただきたいことがあるので、動けるようでしたらドアを開けてください」
動けるさ。腰が痛いし、足首にも違和感があるが、靴に足を突っ込み、ドアノブに腕を伸ばしながら、素早く……考えられない。頭の中は大混乱。何をどう答えればいい? 取り敢えずスマホは、あっ、スマホどこ行った? 階段の下に転がっていた。身体を捻りよろめきながら手を伸ばして拾い上げた画面に大きく時刻が表示されている。06:50。えっ、早い。出社するには早過ぎる。ってか、応答しなきゃ、いや、誰だか名乗らねば、えっと、俺、誰なんだっけ。あっ、財布、名刺入れ。昨日どこに置いたっけ。名刺入れ。あっ、上だ、いや、下に吊るしたスーツの中。
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