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カテゴリ: 映画の話
食べものにまつわる不穏なニュースが、次から次へと後を絶たないこの頃です。

その度に感じさせられることは
「どうやって出来たのか、よくわからないものを食べているんだなぁ」
ということです。

だから、昨年秋に公開されて話題になっていたこの映画、ずっと観たいと思っていたのです。
先日のブログ に感想を書いた「earth(アース)」に続き、素晴らしいドキュメンタリー作品に出会うことが出来ました。

ただ、大自然の様々な姿を捉えた「earth」とは、色々な点で対極にある映画です。

最先端の撮影技術を駆使し、美しい音楽と叙情的なナレーションが全編を彩る「earth」に対して、この「いのちの食べかた」という映画は、字幕やナレーションによる説明は一切、ありません。
そして、カメラは基本的に固定。音楽もまったく使われず、聞こえてくる音は、モーター音やエンジン音がほとんど・・・その中に時折、鋭い動物の鳴き声が混じります。



ベルトコンベアから滝のように流れるヒヨコ、機械によって畑やハウスの中に散布される農薬、そして、流れ作業で“生きた動物”から“食肉”へ変身させられる、鶏、豚、牛・・・

かつて、映画「 血と骨 」で描かれたような、豚を一匹屠ってまわりで宴会をする、祝祭的なムードは微塵もありません。

合間には、現場で働く人々の食事風景が差し挟まれます。
仕事の手を休め、サンドイッチや温かい飲み物を手に、ほっと一息つく姿は、万国共通のお昼休みの光景。

工場見学が大好きな私にとっては、様々なプロフェッショナルの仕事ぶりを目にすることが出来て、とても興味深かったです。

静かな画面に見入りながら、先に観た「earth」のことを思い出しました。

動物の狩猟シーンが出てきた際、チーターが獲物を捕らえた瞬間でシーンが切り替わってしまい、その先にあるはずの“殺して、食べる”行為がカットされていたことに対する、一瞬の違和感・・・

食物連鎖のヒエラルキーの頂点に立ち、「食べられる側に回る」ことのない人類。
その中でも、先進国に暮らし、大量消費に慣らされてしまった私たちは、日々の食卓を囲むことが、狩って(捕って、採って)、命を奪って食べているのだという実感から、とてつもなく遠ざかっている(遠ざけられている)・・・

その事実を、痛感させられました。


ただ、実際の人間の営みを静かに切り取っているだけの映画ですから、そこから何を感じるか、考えるかは、観る側に委ねられています。

映画の作りはシンプルだけれど、シンプルな言葉ではとてもまとめられない、複雑な思いがこみ上げた鑑賞後。

命を食べなければ、自分の命を支えていけない。そういう、生きものとしてのわが身の『業』を、改めて思い知らされ・・・

食糧自給率は低いのに、世界で最も残飯を出している日本に暮す私たち。
せめて、「いただきます」と「ごちそうさま」の言葉に日々、心を込めること。


そんな、ささやかな誓いが、今の私の心に静かに宿っています。知らないよりは知っている方がいい、そんな場面が詰まった、多くの人に観てほしい映画です。

公式サイト の内容も充実していて見ごたえ十分です。
予告編も観られます。お奨め!
http://www.espace-sarou.co.jp/inochi/

【邦題をどこかで聞いたことがある・・・と思っていたら、書評を見ていつか読みたいと思っていたこの本の題名でした。必ず読もうと思います。】

いのちの食べかた





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最終更新日  2008.02.02 23:33:36
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