ミステリの部屋

ミステリの部屋

2005年09月01日
XML
カテゴリ: 日本ミステリ
上遠野浩平さんの作品は読んだことがありませんが、


そこで近所の古本屋さんの前を通りかかって、外の3冊250円コーナーで見かけた時に衝動買いしました。
「密室」という題名に惹かれたからでもあります。

薄いので電車用にちょうど良く、持ち歩いて少しずつ読んでいました。

表紙の絵がとてもきれいなんですが、二人の美少女の服が、ライブでよく見かける、いわゆるゴスロリなんですけど。
これがライトノベルでしょうか。初めての体験です。


しずるさんは長いこと入院しているらしいのですが、病名は不明です。
よーちゃんはしずるさんのところに足繁くお見舞いに行っている、心やさしい女の子。

巷で起きた、すべてが密室がらみの不思議な事件について、世間話をするような調子でしずるさんが謎を解くという短編集です。

つまり安楽椅子探偵というわけですが、しずるさんの「そこにあるのは謎ではなくごまかしだけ」という言葉通り、謎解きの爽快感はあまりありません。
しずるさんが、“ごまかし”を哲学的ともいえるような理屈を語りながら指摘します。

事件はすでに解決したものが多く、実際に関与するわけではありませんし、病院の一室で語られるということもあるんでしょうが、どこか虚無感の漂う、不思議な独特の雰囲気があります。
そこが魅力といえるかも知れません。

それでいて病室の白い壁と対比するせいか、よーちゃんが見上げる空の青さや、雨の中のパレードを探し歩く様子などが、シュールな映画の一場面のように、不思議に美しく目に浮かんできました。

また、二人で少しずつ作っている「はりねずみチクタ」の話が挟みこまれていてリズムを作っています。

全体に血なまぐさい場面でさえ現実感はなく、きれいな話でしたが、現実感がないゆえに、何だかときどきゾクッとするような怖さも感じました。

密室は底無しでも密室なんですね。


しずるさんと底無し密室たち  しずるさんと底無し密室たち: 上遠野浩平


※書き忘れていましたが、この作品は「 しずるさんと偏屈な死者たち










お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2005年09月01日 21時43分44秒
コメント(4) | コメントを書く
[日本ミステリ] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

バックナンバー

2025年11月
2025年10月
2025年09月
2025年08月
2025年07月
2025年06月
2025年05月

コメント新着

月見草@ Re:夜のピクニック:恩田陸(07/06) 「夜のピクニック」のご紹介ありがとうご…
アルビレオ@ Re:白馬への旅、2日目(07/30) 白馬 行って見たくなりました。ワタスゲ…
アルビレオ@ Re:マフラー(01/29) samiadoさんの優しさがしみます。36ufh
アルビレオ@ Re:冷凍ロールケーキ(02/07) 書き出しの「待っていたロールケーキが届…
アルビレオ@ Re:節分もどき(02/03) 恵方巻きって確かに子どもの頃 福岡には…
アルビレオ@ Re:つらいときは(02/02) 「情けは人のためならず」って、何か辛い…
アルビレオ@ Re:マフラー(01/29) samiado さん 編み物も🧶されるんですね…

お気に入りブログ

『新訳 冬物語/シ… shovさん

未定の予定~ラビ的… みっつ君さん
留年候補生W2.0… 留年候補生W2.0さん
魔女の隠れ家 たばさ6992さん
ちょっと休憩 ときあさぎさん

キーワードサーチ

▼キーワード検索

サイド自由欄


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: