ミステリの部屋

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2005年09月26日

赤ちゃんがいっぱい：青井夏海

(4)

テーマ：ミステリはお好き？(1646)

カテゴリ：日本ミステリ

勤め先の助産院をリストラされた陽奈は、急場をしのぐため、胎内育児を行う「ハローベイビー研究所」にアドバイザーとして再就職することになります。
施設では価値のないものばかりが消失するという目的が不明の盗難が相次いで起こったり、十八年前を再現したような赤ちゃん置き去り事件が起きたりと騒動が相次ぎます。
研究所内で何が起こっているのか？
かつて天才兄妹と騒がれた二人との関連は？
「伝説の助産婦」にして安楽椅子探偵・明楽先生の推理が冴えわたります。

青井夏海さんは「スタジアム　虹の事件簿」をわずか500部で自費出版し、それを偶然手にした新保博久氏が「本の雑誌」の書評で取り上げ、
それをきっかけとしてネット上で話題になり、
2001年創元推理文庫より刊行される

「スタジアム　虹の事件簿」は万年最下位のダメ球団のオーナーでありながら、筋金入りの野球音痴である虹森多佳子さんが日常の謎をといていく連作短編集でした。
登場する人たちに向ける作者の目がとても優しく感じられる話ですが、いつのまにかダメ球団東海レインボーズをハラハラしながら応援してしまいました。

今回も安心して、楽しく読むことが出来る作品になっています。
後味もいいです。

前作では出張助産婦・聡子さんの助手ということで、聡子さんがブレーキ役だったのですが、今回は陽奈ちゃんが一人で暴走するので、それがちょっと鼻についたかもしれません。
とはいえ、それがなければ事件はここまでテンポよく進展しないし、そのおかげで明楽先生の推理もさらに光るというものです。

元天才児の時夫や、聡子さんの旦那さんがかなりクセのあるキャラクターだったのが気になりますが、もしも今後も登場させるつもりならば、わかる気もします。

人が死なないで、人が生まれるミステリーです。