ミステリの部屋

ミステリの部屋

2005年10月17日
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カテゴリ: 日本ミステリ
舞台は東京の高級住宅街である成城にあるペンション。
祖父から譲り受けた風格のある大邸宅を改造したオーナーの弟がメンバーにいたことから、そこで大学時代のサークルの同窓会が開かれることになります。
参加者は男4人、女3人。

冒頭から殺人が行われ、その細かい描写から話は始まるのです。
以前からの計画を実行した彼は、殺害後には鍵をかけてストッパーを差し込み、密室を作り上げます。

犯人の視点で、つまりは倒叙形式で話が進んでいきます。

倒叙 とは、最初に犯人が明かされ、主に犯人の視点で物語が展開されていくタイプのもので、テレビドラマ「刑事コロンボ」「古畑任三郎」でおなじみです。

しかし、ここではちょっと変わった形をとっています。
普通ならば死体が発見された後に、探偵や警察が登場して捜査を始め推理を繰り広げて、真相を暴く、となるはずです。


部屋から降りてこない被害者を気づかいつつも、扉を壊そうとはしないメンバーたち。
それは犯人が、被害者の死を知られないように、先を読みつつ巧みな誘導をしているからですが、ここはすっかり犯人の気持ちになってはらはらしてしまいます。

そしてついに真相に気付きはじめた探偵役との攻防はとてもスリリングでした。

なぜ殺したのか。
なぜ発見を遅らせなければならなかったのか。

驚くべき理由が明かされます。

動機がちょっと弱いですが、ある体験をもとにした信念ならば、ありうるでしょう。(自分だったら他の方法をとりますが……)

この作品は私には、どきどきするくらい面白かったです。
これからも石持さんには注目したいと思いました。


<作者の言葉>

本格ミステリの世界にはよくあるシーンです。
「そうではない」話を書こうと思いました。
閉ざされた扉を前にして、探偵と犯人が静かな戦いを繰り広げる。
この本に書かれているのは、そんな物語です。



扉は閉ざされたまま  扉は閉ざされたまま  : 石持浅海  









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最終更新日  2005年10月17日 18時17分48秒
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