ミステリの部屋

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2005年10月27日

ヘビイチゴ・サナトリウム：ほしおさなえ

(8)

テーマ：ミステリはお好き？(1498)

カテゴリ：日本ミステリ

これもミステリ・フロンティア、第２回配本の作品です。

舞台は中高一貫教育の女子校、私立白鳩学園。屋上から、高３の江崎ハルナが落ちて死亡します。

学校にハルナの幽霊が出ると言う噂が広まる中、彼女との間に何かあったという噂のある男性国語教師は、おかしな行動をとり、ついに屋上から墜死。

小説家志望の彼は、死んだ女生徒と協力しあって書き上げた作品の新人賞受賞を、死の直前に辞退していましたが、ある雑誌で作品中の文章と同じ文章を発見したからだと思われました。

二人の女生徒が、真相を探ろうと動き出すのですが、ハルナの名前が出て来る怪しげな原稿や、死んだ妻の原稿を発表する男の物語まで出てきて、どれが応募作品なのかわからず戸惑います。

一方殺された教師の同僚である高柳も疑問を抱き、独自に真相を究明しようとしていました。

死の直前に男性教師が図書室に残した、ポール・オースター特集の雑誌。そこにある小説『鍵のかかった部屋』は死んだ友人の小説を出版する男の話でした。これは何を意味するのか。
そして、教師の自殺した妻が残した「ヘビイチゴ・サナトリウム」というウェブ・サイトとはどういうものか。

謎はうずまき、女生徒たちは振り回され、やがて密室殺人がうかびあがってきます。

学園なのになぜか学園小説らしさのない、独特の世界がそこにあります。
それは魅力的だといえますが、ただ、登場する女生徒たちの個性が薄く、ハルナ以外の印象が残らないのが残念です。

密閉されたような少女たちの空間の中での、思春期の微妙な残酷さには胸が痛くなります。
どうしても、中途半端な時期の嫌な自分を思い出すからでしょう。

ただ、同性の先輩にあこがれる気持ちや、芸術家にあるような繊細な感覚は自分にはないので、理解できたとは言えないかもしれませんが。

読んでいる途中もそうですが、あらすじを書いていても眩暈を味わいます。
題名からライトなものを想像していましたが、これは集中して読まないと、わけがわからなくなる恐れがあります。

かなり複雑ですが、ミステリが好きならついて行けます。…と思います。

ただし、一気に読むこと、眠い時には読まないこと、が大事でしょう。