ミステリの部屋

ミステリの部屋

2005年12月21日
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この方の作品を読んだのは初めてです。

『花まんま』で直木賞を受賞されたとき、「ホラーだけど怖くない話です。」というような話をされていたのをテレビで見ました。
子供のようですが、本当に夢に見てしまうので、ホラーは苦手です。でも、この言葉が頭に残っていたので、まったく内容も知らなかったのですが、読んでみることにしました。

昭和40年前後の東京を舞台とした連作短編集です。

【目次】
紫陽花のころ/夏の落し文/栞の恋/おんなごころ/ひかり猫/朱鷺色の兆/枯葉の天使


今より貧乏だけれど、もっと人々がお互い助けあっていた頃、おせっかいが迷惑ではなく、有り難いと思われていた時代のこと。
下町にある、アーケードのついたアカシア商店街では不思議なことが起こっていました。
古くから住んでいる人たちは、近くにある覚智寺という小さなお寺があの世とつながっているのだと言いますが、そのせいなのかも知れません。



人間の残酷さや、弱さが描かれた悲しい話もありました。
けれども、読み終えて温かさが湧き起こって来る話や切ない話が印象に残りました。

「夏の落し文」人を守ろうとする、子供のけなげさが胸に迫りました。

「栞の恋」古本屋で起こる不思議な不思議な、短いけれど決して忘れられない出会いの物語です。

「ひかり猫」ここまで猫の気持ちになって涙が出るとは思いませんでした。私はこの話が一番好きでした。

それぞれの話は少しずつ時は違いますが、全編に登場する古本屋の主人を通じて、かすかにつながっています。

そして最後の「枯葉の天使」では、その古本屋の主人の人生が垣間見えます。
彼が毎朝夕、お寺の石灯籠をのぞいていたのは何故か。
深い後悔を抱いて生きてきた人に、何が伝えられたのか。
やるせなく切なく、そしてほっとしました。


この作品では「かたみ歌」という題名の通り、それぞれの話に当時のはやり歌が使われていて、ますますノスタルジックな雰囲気を盛り上げています。


40歳以上ならば、登場する歌に一層懐かしくなることと思います。



かたみ歌  かたみ歌 : 朱川湊人









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最終更新日  2005年12月21日 17時55分52秒
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