ミステリの部屋

ミステリの部屋

2006年03月06日
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宝箱のように、きらきら光る粒よりの作品がつまった短編集でした。

収録作品



「この間、あなたが人を殺した時、わたし、現場にいたんですよ」……殺し屋リーヴズの前に現れた男は、自分はタイム・マシンで犯行を目撃したと言います。
最初は一笑に付したリーヴズでしたが、男が次々に示す証拠に次第に真剣になっていきます。
このマシンを手に入れれば、どんな犯罪も思いのままだ…

これが表題作の「クライムマシン」です。

でも、こういう奇想天外な話なのか、とあなどってしまったら大間違い。

これをジャブだとしたら、その後は次々と繰り出されるフックに打たれっぱなしという感じでした。

作者のジャック・リッチーは短編ミステリのスペシャリストです。

ヒッチコック・マガジンの常連でもありました。

ところが生前に刊行された短編集はわずか1冊なのです。

ここにも不当な扱いを受けた作家がいたんですね。

どの作品にも流れる軽さというもののせいで、まさに軽く扱われてしまったのは不運だったと思います。

無駄な言葉や描写を極力そぎ落とした文章が特徴ですが、
対話の主が気がつかないままだけれど、読み手にだけはその真相がわかるという作品など、まるで職人芸です。

こちらの予想を次々に裏切ってくれる妙技には、深読みしすぎるミステリマニアほどひっかかるのではないかと思います。

また、後半には二人のキャラクターが登場します。

名推理ならぬ迷推理のヘンリー・ターンバックル部長刑事、ちょっと変わった私立探偵カーデュラ、どちらもとても魅力的です。

彼らについては予備知識なしの方が、よりよく味わえるはずなので、解説は後から読んだ方がいいですよ。

余計な説明が一切ないため、あれ?と気づく楽しさがあり、ちょっとシニカルなユーモアにニヤリとさせられ、読めば読むほどもっと読みたくなる。



是非おすすめです。


クライム・マシン クライム・マシン :ジャック・リッチー










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最終更新日  2006年03月06日 20時17分01秒
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