ミステリの部屋

ミステリの部屋

2006年05月23日
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今、「料理にまつわるミステリ」という特集をトップページに載せています。
そこで、図書館で見かけたこの本の題名を見すごせず、読むことにしました。

作者は火坂雅志さんです。(火の後には、つい村と書いてしまい、書き直すこと3回!)
歴史小説をたくさん書かれているようですが、この方の作品を読むのは初めてです。

美食探偵として描かれているのは、実在した作家の村井弦斎です。

村井弦斎は明治時代を中心に活躍した小説家で、代表作は本邦初の美食(グルメ)小説である『食道楽』です。
これは当時としては空前の五十万部を超える大ベストセラーとなって、明治の文壇に旋風を巻き起こしました。

そしてその5年前、村井弦斎は35才、もと郵便報知新聞(後の報知新聞)編集長で、まだ小説家としては売り出し中。
海水浴旅館で医学助手を務める同郷の後輩・山田文彦を尋ねて、彼が別荘地である大磯に汽車でやってくるところから、話は始まります。


洋行帰りのグルメ作家・村井玄斎の赴くところに事件あり。
文明開化の花咲く明治三十年代の湘南を舞台に、死者の復活、衆人環視の殺人、人間消失など五つの謎が。
同時代の名探偵シャーロック・ホームズの向こうを張って、玄斎探偵の推理が冴える。





村井弦斎は旅館に滞在して『食道楽』を執筆しようとするのですが、なぜか次々に事件が起こり、鋭い推理をくり広げることになります。

観察力が鋭く、その人を見ただけで色んなことを言い当てるところは、シャーロック・ホームズを思わせます。ワトソン役は医者の山田文彦というところでしょうか。

頭脳明晰で、好奇心旺盛で、アメリカ滞在中におぼえた西洋料理の知識を披露する、なかなか魅力的で好感が持てる人物です。

背景として、明治時代の日本の様子が描かれているところも面白かったです。
大磯には伊藤博文、大隈重信、後藤象二郎、山形有朋、西園寺公望、といった政財界の大物達の別荘もあったようで、話にも登場してきます。
そして、その描かれ方が決していいことばかりではないのです。
歴史が好きな方には一層楽しめると思います。

ただ、美食という割には、出て来る料理がそれほど美味しそうに感じられなかったことと、料理にまつわる事件は「薄荷屋敷」と「冬の鶉」のみだったことが、少々物足りなかったかなと思います。
そこで、できればさらに美食にこだわった続編を期待したいです。


美食探偵 美食探偵 : 火坂雅志









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最終更新日  2006年05月23日 17時52分38秒
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