ミステリの部屋

ミステリの部屋

2006年06月24日
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医学ミステリということで、かた苦しく重いのかと思いきや、決して難解ではありません。
専門用語もポンポン出てきますが、分かりやすく読みやすかったですね。


ところが今、三例続けて術中死が発生している。
しかも次は、海外からのゲリラ少年兵士が患者ということもあり、マスコミの注目を集めている。
そこで内部調査の役目を押し付けられたのが、神経内科教室の万年講師で、不定愁訴外来責任者・田口と、厚生労働省の変人役人・白鳥だった……。


バチスタ手術は、学術的な正式名称を「左心室縮小形成術」という。一般的には、正式名称より創始者R・バチスタ博士の名を冠した俗称の方が通りがよい。拡張型心筋症に対する手術術式である。肥大した心臓を切り取り小さく作り直すという、単純な発想による大胆な手術。

大型量販店に行くと、電化製品の進歩に驚かされ、いつも全部欲しくなるのですが、医学も確実に進歩しているのですね。
大きくなりすぎた心臓なら、小さくすればいいというラテンののりのバチスタ手術、「医龍」にも登場します。

手術の様子や、医局での勢力争いなどがリアルに描かれていますが、それもそのはず、作者の海堂尊(かいどう・たける)さんは、現役の勤務医です。

この作品がデビュー作で、『このミステリーがすごい!』大賞を受賞しました。
ミステリとしての驚きはそれほどないものの、最終選考で、数十秒で満場一致の決定をみた、というのはうなずける作品です。

とにかくキャラクターの描き方が鮮やかです。


厚生労働省大臣官房秘書課付技官の白鳥圭輔。
人がついてこれないくらい頭が切れ、とにかく強烈。
彼が登場してから、俄然吹き出すくらいコミカルな場面が多くなります。

そのほかの人物も個性的に生き生きと描き分けられています。
同じ人から話を聞くのに、田口と白鳥の調査の結果は違っていて、そのあたりの二人の掛け合いも楽しく、加速度がつくように面白くなります。
もう途中でやめられなくなるくらいでした。

白鳥には、今回名前だけ出てきた「氷姫」こと姫宮という部下がいるらしいのです。
優秀であるらしい彼女にも是非会いたいです。

インタビューによると、海堂さんは「続編も構想中」らしいので、そのうち期待できるかもしれません。

兎に角面白い作品。
これはおすすめです。


チーム・バチスタの栄光 チーム・バチスタの栄光 : 海堂尊












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最終更新日  2007年11月29日 18時36分24秒
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