ミステリの部屋

ミステリの部屋

2006年10月16日
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カテゴリ: 日本ミステリ


突然の爆発音が、カンボジアの荒れ地に轟く。
誰かが、地雷を踏んだのだ!
現地に駆けつけた坂田とアネットは、頭部を半分吹き飛ばされたチュオン・トックの無惨な死体に、言葉を失った。
チュオンは、なぜ、地雷除去のすんでいない立入禁止区域に踏み入ったのか?
そして、これは、純然たる事故なのか?坂田の推理が地雷禍に苦しむカンボジアの哀しい「現実」を明らかにする―。表題作「顔のない敵 」






今作品には「対人地雷」がテーマの6編と処女作短編を収録されています。
いつも新しいことで驚かせてくれる石持さんの第一短編集です。

地雷といえば思い出すのは2001年に放送された地雷ゼロキャンペーンの番組です。
GLAYのTAKUROさんとTERUさんが参加しているから、というそれだけの理由で見たのですが、軽い気持ちでいたことに後ろめたさを感じるくらいの衝撃がありました。

特に、蝶の形をした地雷もあって、それを手に取ろうとして子供が被害にあってしまうと知ったときには愕然としました。

まず、そんな物を埋めるなよと思います。
それに地雷は埋めた人が取り出すべきだと思うのですが、そう簡単にはいかないのは、まさに地雷が「顔のない敵」だからです。

この作品からも、地雷除去の困難さはうかがえますが、世界中に埋められた対人地雷は6000万個以上あるというのですから、時間は際限なくかかります。坂田のような人は今も作業を続けているんですね。

それぞれ事件と地雷は様々な形で関連しており、謎解きをすることにより問題提起もされるという見事な作りです。



それから、これまでの作品で感じてきたように、やはり石持さんは「法の裁きが全てではない」と考えているのではないか、と思える結末がほとんどです。
今回は、状況が特殊なだけに、受け入れられないことはありませんでしたが、違和感を感じる人もいるかも知れないですね。

最後の「暗い箱の中で」は処女作ながら、短い中に石持さんらしさが詰め込まれていました。
よく考えついたというような状況ですし、ひたすら議論していますし……。
次は長編で、のめりこむくらいの議論が読みたいと思いました。



顔のない敵 顔のない敵 : 石持浅海







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最終更新日  2006年10月17日 15時45分07秒
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