ミステリの部屋

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2006年11月09日
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「向日葵の咲かない夏」( 感想 )で衝撃を受けた、道尾秀介さんの最新作『シャドウ』です。
すっかり引き込まれて一気に読んでしまいました。


その会話から3年後、凰介の母は病気でこの世を去りました。
葬儀も終わり、父の洋一郎と二人だけの暮らしが始まって数日後、幼馴染みの亜紀の母親が自殺を遂げます。
夫の職場である医科大学の研究棟の屋上から飛び降りたのです。
凰介と亜紀の父親同士、母親同士は学生時代からの親友でした。
さらに、亜紀が交通事故に遭い、洋一郎までもが……。
父とのささやかな幸せを願う小学5年生の少年が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは?


「向日葵の咲かない夏」では不条理な世界に飲み込まれていきましたが、この作品では日常のふとした情景が既に不穏な空気をまとっています。
小学校の運動会の場面でも、父と子で食事をする場面を読んでいても、どことなく不安な気持ちにさせられます。

話の運びからは、どうしても忌まわしいことを想像してしまう。
きっと嫌な物を見せられるに違いないと言う予感を抱えたまま読み進める、という感じです。
しかも先が知りたくてやめられないのです。

確かに嫌な物に直面しますが、それは全く予想を裏切る形で姿を表しました。


この方独特のダークな世界は健在でした。
でも、前作にあった強引さはあまり感じらず、読みやすくなっています。
それにしても素晴らしいリーダビリティでした。
そしてたゆまぬミスリード。

登場する子供たちは年齢より大人びています。無邪気な子供でいられないというのは、決して幸せではないでしょう。
けれども未来はきっと明るいに違いない、そう信じさせて貰えたのは意外でした。



シャドウ シャドウ : 道尾秀介









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最終更新日  2006年11月20日 19時28分33秒
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