ミステリの部屋

ミステリの部屋

2007年04月25日
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主人公はマシュー・プリーストリー氏。36歳。メガネをかけた小太りの独身男。
彼は本、陶器、嗅ぎ煙草入れのコレクションという落ち着いた、というか地味な趣味を持ち、家のことは執事のバーカーにまかせて何不自由ない快適な生活を送っていました。

ところがある日、婚約したばかりでテンションの高い友人パット・ドイルから、
「君はキャベツだ! カブだ! ペポカボチャのカタツムリ野郎だ!」と自分の人生を活気の無い退屈なものだと指摘されます。

友人の言葉を一笑に付したものの少しは気になっていたプリーストリー氏は、ある日街で見知らぬ若い美女から声をかけられた時に、人違いと知りながら思わず話を合わせるという行動に出てしまいます。

そしてその女性に頼まれてある屋敷に忍び込んだところ主人に見つかり、脅すつもりで撃った銃が命中、警官に手錠をかけられた二人は逃走するはめに陥ります。

ところがこれは、全てがドイルと友人達のしくんだ、実験と称する悪ふざけだったのです。

手錠に繋がれての逃避行がどうなるのかということも気になりますが、友人達が冗談で始めた事件が悪ノリでどこまでエスカレートしていくのかも目が話せません。


フランク・キャプラ監督の「或る夜の出来事」、ハワード・ホークス監督の『赤ちゃん教育』などを指し、恐慌で落ち込んだ人たちに笑いをもたらす効果があったそうな。

確かにハリウッド黄金期のコメディのような印象を持ちながら読みました。
とくに執事バーターの反応が笑えました。

次々に登場する人物がそれぞれ個性的で思いつきのように勝手な行動をとるので、ハチャメチャな展開になるのですが、描きわけが巧みなので混乱する事も無く読み通すことができました。

冴えない男が、友人達の悪巧みではあっても一人の女性と出会い、それをきっかけに人生の冒険に乗り出していく……。
バークリーの皮肉さがほとんど見られないユーモア・ミステリも、なごんだ気分になることができてなかなかいいものです。



 プリーストリー氏の問題 : A・B・コックス








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最終更新日  2007年04月26日 12時34分40秒
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