ミステリの部屋

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2008年05月17日

ラットマン：道尾秀介

(4)

テーマ：ミステリはお好き？(1645)

カテゴリ：日本ミステリ（ま行作家）

高校時代に同級生3人とともに結成、デビューを目指すでもなく、解散するでもなく、細々と続けて14年になり、メンバーのほとんどは30歳を超え、姫川の恋人・ひかりが叩いていたドラムだけが、彼女の妹・桂に交代した。
そこには僅かな軋みが存在していた。
姫川は父と姉を幼い頃に亡くしており、二人が亡くなったときの奇妙な経緯は、心に暗い影を落としていた。
ある冬の日曜日、練習中にスタジオで起こった事件が、姫川の過去の記憶を呼び覚ます。
――事件が解決したとき、彼らの前にはどんな風景が待っているのか。
新鋭作家の新たなる代表作。
（出版社より）

アマチュアバンドの練習中に、貸しスタジオで事件が起きます。
高校時代にバンドをやっていたという道尾さんの体験が生かさているのでしょうか。

タイトルの「ラットマン」とは、見るものに錯覚を起こさせる絵で、心理学の世界では有名だそうです。
ラットマンの絵は、見方を変えると全く違ったものに見えます。
その錯覚は去年の早稲田大学で行われた　道尾さんの講演会にて、実際に体験しました。

人にはありのままが見えているわけではない。
自分の目で見たからといって、それが確かとは限らない。

これが作品のテーマとなっています。

動機のある者は絞られ、現在起こった事件に、姫川が幼いころ家族に起きた出来事が微妙に関連しているように思えます。

またもや騙されました。

目の前の事件も、過去の事件でさえも、見た通りとは限らないのです。
巧妙なミスリードで、気持ちいいくらい揺さぶられました。

この作品は「シャドウ」「ソロモンの犬」と併せて、青春三部作の完結編だそうです。

最後の真摯な問いかけには、ホロ苦さよりも哀切さえ感じました。

ようこそ。ここが、青春の終わりだ。

ラットマン：道尾秀介

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最終更新日 2008年05月22日 19時18分47秒
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■コメント

Re:ラットマン：道尾秀介(05/17)

＠かぼちゃさん

これは本当に傑作ですよね。
今年の各種ミステリランキングには順当にランクインされそうな作品ですね。

8月上旬には講談社から「カラスの親指」という作品も出るそうですし、今年も道尾さんの作品には期待できそうです！ (2008年05月20日 22時40分20秒)

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Re[1]:ラットマン：道尾秀介(05/17)

samiado さん

＠かぼちゃさん、こんばんは！

＞これは本当に傑作ですよね。
＞今年の各種ミステリランキングには順当にランクインされそうな作品ですね。

道尾さんはどこかで言われていたように、人間を描くためにミステリを書く、という言葉を着々と実行しておられますね。本当にこれからも楽しみです♪

＞8月上旬には講談社から「カラスの親指」という作品も出るそうですし、今年も道尾さんの作品には期待できそうです！

8月ですか！また新作が読めるとは嬉しいですね。 (2008年05月21日 22時55分10秒)

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ミステリは，面白い！

アルビレオさん

長く彷徨っていた暗い森の中で遠くに光を見つけたような…深い感動を覚えました！読み終わってここへすっ飛んできた伊坂作品の時とは，違って，読み終えて静かにゆっくり歩みよりました。「ミステリって面白い！」って本当思いました！上手いですね！もう，だまされてだまされて…。靄が晴れていく爽快感味わいました！また，偶然にも私の友人の中にもう解散してしまったけれどもエアロスミスの好きなロックバンドを組んでいた友人がいたので私もエアロスミスの♪Walk This Way とかよく聴いていたので本の中の音楽も楽しめました。ただ，まだ謎の部分があって…。読み返しています。いい本と出会わせていただき感謝感謝です。これからもよろしくお願いします！（それから野性時代３月号読みたくなりました。） (2009年03月10日 23時56分15秒)

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Re:ミステリは，面白い！(05/17)

samiado さん

アルビレオさん、こんばんは！
読まれたのですね。この作品は、しっかりしたミステリなので、楽しんでもらえるかどうか、気になっていました。だから、騙される快感を味わっていただけたと知って、嬉しいです。道尾さんは、自分が読みたいものしか書かない、と言い切る方です。興味をもたれたら、野生時代も読んでみてくださいね。 (2009年03月11日 22時32分02秒)

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