のんびり、やさしく。

のんびり、やさしく。

PR

プロフィール

さつきのひかり

さつきのひかり

カレンダー

コメント新着

かずみ@ Re:☆ゲリラ開催☆ 1/10~1/15 はじまりのひかり&ロシレムヒーリング(01/10) かなりお久しぶりになります。 当時は、お…
悪女6814 @ Re:ブログお引越しのお知らせ(01/14) 「お気に入り登録」させていただきました…
ユウリ@ Re:【銀月物語 28】 消えない十字架(04/22) 私も。 必要であれば自分自身を斬れます。…
確かに。@ Re:【銀月物語 26】 哨戒空域(04/18) 必要ではない、というかその時ではないと…
Ving@ Re:天使夜話 ~暁の星~ 1(03/10) さつきのひかりさんへ 今日から天使夜話…
くまたろう@ Re:☆ゲリラ開催☆ 1/10~1/15 はじまりのひかり&ロシレムヒーリング(01/10) いつもありがとうございます。 どうぞよ…

お気に入りブログ

アシスタント吉田の… ヒーリングセミナー bulan・batuさん
天使と住む楽園 楽園に住む私♪さん
ぷち・すぴ ぴ子さん
なにが見えてる? umisora1897さん
おだやかに。 aki-☆さん
ミカエルブレイズ たんたん4531さん
虹をつかもう 双光 持元さん
神社☆エール!頑張れ… 瑚☆月さん

サイド自由欄

nmcard_128128.gif
トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2009年11月26日
XML

その日出勤したリフィアは、職場に入るなり同僚達に取り囲まれた。

「リフィア、あんたやるじゃないの! よかったわね~」
「それで告白できたの?」
「え、振られたんでしょ?」
「可哀想に、リフィア。せっかくチャンスがめぐってきたのにねぇ」

かしましい喋り声を手でさえぎりながら、リフィアはどんと荷物を自分の机に置いた。

「ちょ、ちょっと、何の話よ?」

すると同僚達は、意味ありげに目を見合わせて笑いを浮かべた。

「隠さなくてもいいのよ。アルディアスさまの話」
「……はあ?」

一瞬、昨夜見た美しい色が目の前に踊って返答が遅れる。同僚達は、わが意を得たりとばかりにリフィアの肩を叩いた。

「あんた昨日、アルディアスさまに見惚れてぼーっとなってたじゃないの。あたし見たのよ、あんたがアルディアスさまとテラスから戻ってくるの」
「そうよそうよ、何があったのかおっしゃい」
「キスしてたんでしょ~?」
「ちょっとカノン、あんたは昨日彼氏とデートでいなかったじゃないのよ」

「な、何もないわよ」

リフィアは慌てた。実際何もなかったのだが、抗弁すればするほど泥沼にはまっているような気がしなくもない。

「何もないったら!」

むきになるリフィアに、同僚達はくすくす笑いをしながら机の端末を指差した。
不思議に思いながら立ち上げると、辞令が発表されている。
そうか今日は発令の日だった……と思いつつ文字を追うリフィアの表情が固まった。

アルディアス・L・フェロウ大尉  生活支援担当/後方支援課 リフィア・ルーテウス伍長

その一行が目に飛び込んでくる。

「こ・れ・で、お嫁さん修行もばっちりね」

「ばっ……そんなわけないじゃないの。仕事よ仕事。あんたたちも早く仕事しなさいよっ」

半分叫んで、リフィアは机のインカムをとりあげた。素早い操作で、リストの上位にある名前から通話をつないでゆく。
アルディアスの名は、リフィアのリストの最後にあった。彼の名前の上に緑の点が点滅し、ここ三日以内に昇進したことを示している。一昨日の出撃で戦果をあげたと聞いたから、今日付の辞令で昇進したのだろう。

後方支援課は、戦士達が戦いに専念できるよう、日常生活のすべてを支援する部署である。家族もちの既婚者であればまた違うが、単身寮に入っているような場合、まさに衣食住のすべてをフォローする窓口となる。

また、出入金明細を提出する義務のある出張中などは、その金額のチェック等も行う。賄賂をふせぐために、経費のみならず私費までも明細提出の義務があるから、当然守秘義務はあるものの「おこづかいの内訳まで」知ることになるのは確かだった。

リフィアは新しく担当になった軍人達に、自分の名前を告げ何か不自由はないかを聞いて、次々案件を処理していった。

寮には、ベッドや寝室作りつけのウォークインクロゼット、書斎の机と椅子、階級に沿った通信端末、カーテン、大小のスタンドライトなど、最低限の家具は揃っている。食事は寮の食堂でとることになっており、ミニキッチンはお茶を沸かす程度のものだ。
タオル・リネン類は、こだわりがなければクリーニング都度交換、という形になっている。

破損箇所の補修などは別にして、部屋や備品に不満があればある程度は認められる。部屋が狭いの汚れているの備品が気に入らないの、だいたいにおいては階級があがるほど不満を言う率が高くなるのが常だった。

そういった不満に対応したり時にはなだめて黙らせたり、体格のよすぎる入居者のためにサイズの大きいベッドと椅子に交換の手配をしたり、ひととおりの仕事をしてからリフィアは大きく伸び上がった。椅子から立ち上がり、自分のマグに紅茶を入れてくる。

喋りすぎた喉をそれで潤してから、リストの最後の名前にアクセスをとった。
待機中になっていたその人は、すぐに画面をつないで応答した。

「フェロウ大尉です」
「はじめまして。新しく支援担当になりました、リフィア・ルーテウス伍長です。ご昇進おめでとうございます」
「ありがとう」
「生活の中で、なにかご不満はありませんか?」

特にありません、と彼は笑った。画面の端に、読んでいたらしい厚い本の角が見えている。
不満はないと即答されることはめったにないため、リフィアは思わず聞きなおした。

「……何もないのですか?」
「ええ、何も」

画面のむこうで、銀髪の男は落ち着いた表情をみせていた。諧謔やこちらの気をひくための芝居とも思われない。
リフィアは端末の別ウィンドウを立ち上げて、彼の部屋を確認してみた。大尉にしては小さい、二・五部屋のスペース。クロゼットつきの寝室と書斎、あとはミニキッチンとシャワールームしかない。それも寮の真ん中の部屋で、ベランダ側にしか窓がない場所だった。

「大尉のクラスでしたら、お部屋をもっと広い場所に変えることもできますけど」
「いいえ、ここでかまいませんよ。本を置く場所と寝るところがあればいいんです」

アルディアスは物柔らかに言った。きっとずっとこの調子で、士官学校を出てから同じ部屋に住んでいるに違いない。
リフィアは横目でさっと左右を確認し、インカムに手を添えて小さな声でつけくわえた。

「その……昨日は失礼しました」

すると、彼はあの藍色の瞳で彼女を見て微笑んだ。

「どういたしまして。ちゃんと帰れましたか?」
「おかげさまで。ありがとうございます」
「そう、それはよかった」

アルディアスがもう一度笑うと同時に、鋭いベルの音が鳴り響いた。青い目がすっと細められる。壁のスピーカーから慌しい指令が発せられた。

「出撃要請。敵艦隊の偵察船を捕捉。以下の待機者はすぐに艦橋に集合せよ。――」

何名かの名前が呼ばれる中に、アルディアスの名もあった。彼は半分机から立ち上がりながら、端末に向かって言った。

「失礼、出撃しなくてはなりませんから」

「ああ、はい、その……どうか、お気をつけて」

リフィアが言うと、アルディアスはちょっとまばたきをして、それからまたあの笑顔をみせた。

「ありがとう、気をつけます。それでは」

通信が切れる。暗くなった画面を見ながら、リフィアは彼のまばたきの意味を考え、すぐに思い至った。
これから武器を持って戦いに行く人に、お気をつけて、はなかった。普通なら、ご武運を、というところだったのに。

何度も言いなれたその言葉が、なぜさっきは出てこなかったのだろう。
それでも彼女は思った。

彼が無事に戻ってきますようにと。























【銀の月のものがたり】 道案内
http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911230000/

【第二部 陽の雫】 目次
http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911240000/



前話の反応が皆様とても静かだったので…
もしや引かれてる?!とかどきどき不安になりつつ(←小心者
でもアップしちゃいます。爆
ただの恋バナ(にもまだなってないけど)でどうもすみません。。


拍手がわりに→ ブログランキング
webコンテンツ・ファンタジー小説部門に登録してみました♪→




☆ゲリラ開催☆10/25~11/30 ラファエル先生の保健室



※業務連絡※


☆25日にお問い合わせのK様



お手数ですが、再度アドレスをお知らせくださいますよう、お願いいたしますm(_ _)m








お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2009年11月26日 10時29分52秒
コメント(9) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X

Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: