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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2010年01月27日
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翌日は、リフィアは公休、アルディアスは十日に渡る作戦から帰還後の休みだった。


「ねえアルディ、これ弾けるの? 触ってもいい?」

大きなソファの脇に置いてあったのは、膝に乗せられるタイプのラップハープだった。そばに本が積んであるのは、自立するものの倒れないための用心だろうか。

「いいよ。ちょっと待って、調弦するから」

アルディアスは、ひょいとハープを持ち上げてソファの前に置いた。
リビングには手触りのいい厚手のラグが敷かれ、ソファには淡いミントグリーンのカバーがかけてある。ほとんど色彩のなかったただの官舎は、リフィアの手をもって少しずつ暖かな家に変わってきていた。

T字型の道具を右手に持ち、アルディアスが片膝を曲げて床に座り、ソファによりかかる。リフィアも隣に座った。
長い指が弦をはじくと、ポーン、と深みのあるいい音がした。木でできた胴の部分は焦げ茶色に艶々と光っている。


「いや、単に古いだけだよ。神殿に元々あってね……だんだん気難し屋になってきて、他に弾ける者がいなくなったから、もらってきたんだ」

話しながら、左手で一本ずつ弦をはじいてゆく。そしてほぼ毎回、右手の器具で上部のネジのようなものを微妙に締めたり緩めたりしていた。

「一応、レバーと弦を代えたり木を磨いたりしたから、ご機嫌はだいぶ直ったと思うのだけどね」

ふっと微笑む。ひとつずつの音を拾ってゆくその様子から、長い間、神殿でも大切に扱われていたのに違いないとリフィアは思った。

長い指がすべての弦をはじき終わり、最後にポロロンとなでる。満足げな微笑を浮かべて、「できたよ。はい、どうぞ」とアルディアスは言い、ハープをリフィアの前に置いた。

彼女は片手につけていた細いブレスレットを外し、手前のラグに手をついておもむろにじっとハープを見つめた。

「……なんてご挨拶すればいいかしらね?」

隣の銀髪の男を見上げる。気難しいと聞いたばかりだし、彼の愛器でもある。最初から嫌われたくなかった。

「ふふ、リンが嫌われるわけがないよ。ハープは初めて?」

そう笑うと、彼は指の置き方や弦のはじき方など、基礎的なことをリフィアに教えた。

「ええ。実家には姉と兄の使ってたピアノとギターみたいなのがあって。姉さまのピアノレッスンにくっついてたから、なんとなく簡単な楽譜ならたどれるけど……」



しばらく気ままに鳴らして喜んだあと、リフィアは笑顔で傍らを振り返った。

「ねえ、教えてくれる?」
「いいとも。じゃあね、始めは親指をここ、人差し指と中指を隣に置いて……そう。慣れたら、左手で同じように順番に鳴らしてごらん。コツはね、最初に使う指を全部置いてしまうことだよ」

ド・レ・ミ・レ・ミ・ファ、とゆっくりした音階が流れ出した。オクターブを辿ったら、今度は下げていく。
それにも慣れたら、今度は両手を使って、音を二度ずらして。


たどたどしい音階がしばらくしてなめらかになったあと、リフィアは力の入っていた肩をゆすってほっと息をついた。

「ああ面白かった。アルディはどんな曲を弾くの?」
「そうだねえ。神殿で習ったから、賛美歌とか古典曲が多いかな。歌もそういう感じのが好きだし」
「歌?」
「ああ、小さい頃から聖歌隊にいたからね、ずっと。神殿では音楽の講義もあるし」

人の多い中央の大神殿ならまだしも、地方の神殿になると神官ひとりで何でもやらなくてはならないことが多いから、神殿で行われる講義は多岐に渡っている。
神秘的な諸々はもちろん、音楽、奉納舞、各種の言語と基礎学問、古代語、医学、薬学、基本的な護身術など。そして自給自足の生活の中で、男女の区別なく畑仕事や簡単な料理、針仕事などもひととおり身につけてゆくのだ。もちろん人それぞれ、分野の得意不得意はあるが。

リフィアはハープから手を離し、淡いストライプのコットンシャツの袖を指先でひっぱった。

「ねえ、私聴きたいわ。お願い、歌って」
「いいよ。どんな曲?」
「あなたの好きな曲。できればハープの伴奏つき」
「かしこまりました」

アルディアスはハープを自分の前に置いて、軽く肩にたてかけた。指が弦の上を踊ると、どこか懐かしげなメロディが流れ出す。

彼が歌ったのは、おそらくは賛美歌の一種だった。古語の歌詞のため、そのままではリフィアには意味がわからない。

わからないけれども、やわらかな光が空から一面に降りそそいでくるようだ、と彼女は思った。
歌声はけして大きくはない。声楽のような歌い方とはまったく違っていて、なのにとても響いて聴こえる。

いつか神殿で聴いたことのある賛美歌はこんな歌だったかしら。
友達の結婚式で聴いたのはこれだったかしら?

ハープと彼の喉から流れる旋律はとても優しくて、どこかそう……遠い昔に耳にしたような、暖かな陽だまりにつつまれているような、そんな気分になる。

歌でクリスタルを調律するとか、空間を調整するとか、そんな話も聞いたことがあった。
ヒーリングもそうだったっけ……波動がどう、とか……

伸びのよいテノールを聴きながら、リフィアはしだいに、うとうとと舟をこぎだした。
陽射しをうけた壁やクリスタルに触れたときに似た、思いがけないようなじんわりした温もりが身体を包む。
心地よすぎて目を開けていられない。

歌い終わってアルディアスが気づくと、片膝折っていた彼の足にいつのまにかリフィアの頭が乗っていた。

「リン?」

小さく尋ねた返事のかわりに、すやすやと規則正しい寝息がきこえる。
ベッドに運ぼうかと思いかけて、あまりにも気持ちよさそうなのでアルディアスは思い直した。
ふと微笑んでハープから離した手に毛布をとりよせ、冷えないように彼女の体にかける。

金茶色の髪をそっとなでてから、彼の手はまたハープに戻った。
素朴な旋律の子守唄が流れ出す。

うららかな春の日、窓の外ではそよ風に若葉がゆれている。裏庭では、リフィアが蒔いた花の種がそろそろ芽を出しているだろう。

二人だけの昼下がり、穏やかな時間が優しい音色に乗ってゆっくりと流れていた。















【銀の月のものがたり】 道案内

【第二部 陽の雫】 目次



今日はやさしいお話で♪

実は去年の暮れからリアル本体もケルトハープを始めまして。
まだまだ、とてもとても彼のよーには弾けませんが…
ピアノも弾けない私、生まれて初めて学校以外でまともに習った楽器がハープだったりします。もしかしなくても変かもしんない。 ←
でも楽しいのです~♪

今もうひとつ挑戦中なことがあり、それが一段落したらごほうびに賛美歌のハープ楽譜集を買うんだwww

しばらくバタバタ忙しい日々が続きますので、メール等レスが遅れたり
コメント返しができなかったりすることもあるかもしれませんが
どうぞお許しくださいませm(_ _)m

でも物語が更新されてるかと毎日チェックしちゃいます、とか言われちゃったので
なるべくいそいそと書いて更新するようにしたいと思います♪♪ 笑
ありがとうございます♪


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最終更新日  2010年01月27日 16時50分39秒
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