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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2010年05月12日
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縄に戒められたトップが実地検分から連れ戻されてくると、部隊からはブーイングが巻き起こった。

「生きたまま有機分解炉に放り込め!」
「子供達と同じ運命を味わわせてやれ」

アルディアス、デオン、エル・フィンの三人は、書記役の男に子供を任せてテントの外に出た。
子供に会わせたくはない。

部下達が言う台詞はもっともではあったが、それをしては事件の解明が遅れてしまう。ましてデオン隊は本当にやりそうな人材が揃っていたから、彼らはただため息をついて首を横に振っただけだった。

「隊長!」
「駄目といったら駄目だ。今はまだそんなこと出来ねえんだよ、わかるな?」

隊員の一人が思い切って直訴するのを、デオンは却下した。



「……本当にやってやりたいな」

まあね、とでも言いたげにアルディアスは片方の肩をすくめ、それからエル・フィンに向き直った。
気づけば夕刻も近くなっている。

「エル・フィン、君はシェーンに乗って、あの子を家まで送っていきなさい」
「は、しかしここの処理がまだ……」
「ここはもういいよ。あの子の話はもう聞いたし、ご両親もさぞ心配されているだろうから。誘拐団のほうはアジトは突き止めてあるんだったね」
「はい。トップを焙り出すために泳がせていただけで、制圧しようと思えばすぐ」

ネオンブルーの瞳がきらりと光る。彼とて怒りは変わらない。

「その黒幕もほぼ断定が終わってます」

赴任地の隊員から昨日報告を受けたことを伝える。

「人数は足りるか?」



「ああ。目立たないためだろう、誘拐団の方は人数はろくにいない。俺の隊だけで一日もあれば十分だ。今のところ、気付かれた様子もないしな」
「よろしい、ではそちらも明日中に制圧してくれ。黒幕は後日、正式に証拠を持って訪問する」
「イエス・サー。必ず」

ぴしりと敬礼してエル・フィンが去る。言葉通りに明日中には仕事が終わっているに違いなかった。

「デオン、事後処理に必要な人数と時間は?」

「では明日一番に私と私の部隊は帰還することにするよ。そろそろ時間も迫ってくるのでね」
「わかりました、今日いっぱいお借りします」


夏の祭礼が迫っているので、神殿とも連絡をとって確認を行なわねばならない。
端末を叩いてさまざまな仕事を行なっているうちに、あたりはすっかり夜更けになっていた。
部下達も捜査を終えて移送艇に戻ってきている。

月の明るい夜だった。
アルディアスはそっと部屋を抜け出すと、ひとり施設の方角に歩き出した。
すでに意味を成さなくなっている結界を越え、有機分解炉の近くへ歩いてゆく。生臭い匂いが風に乗って流れ、彼はかすかに顔をしかめた。

炉のある穴を見下ろせる森の際で足を止める。
月影がひらめいて穴の奥まで差し込んでいた。

「…………」

頭を垂れ低い声で唱えたのは、鎮魂の祈りだった。

失われてしまった子供達の命。
それから今日の作戦で散らした敵の命。

あれほど怒りを燃やした裏組織の構成員であっても、彼らのためにもアルディアスは祈った。
敵味方関係なく鎮魂の祈りをささげるのは、彼の毎夜の習慣だ。

長い時間が経って顔をあげたとき、ふと背後に人の気配を感じた。
振り返るとオーディンがもの言いたげな顔をして立っている。

「なんだい?」
「……神殿と軍部に両方籍を置いていて、あんたはどう思ってるんだ。平気なのか。
普通の人間だったらバランスを崩すんじゃないかと思うが、あんたはどこかで落とし所を見つけているのか」

一瞬の躊躇の後に、彼は訊いてきた。
それは話を聞いた誰もが持つ疑問だろう。通常は、そんな対極に身を置いてまともでいられるとは思えない。
アルディアスが無言でいると、オーディンは片手でがしがしと頭をかいた。

「俺はよ。あんたとあんたの隊のみんなが好きだからここにいる。でも、できるだけ人は殺したくないんだ。だから、無駄に死者を出さないあんたの戦い方は好きなんだ」

アルディアスが、味方はもちろん敵にも無駄に死者を増やさない戦い方を好むのは、部隊の者ならみな知っていることだった。火器や火薬を使うときも、大量殺戮よりも目くらましやピンポイント射撃を得意とする。
必ず砲台や司令塔、補給線、場合によっては動力部を狙って足止めし、脱出艇には手を出さないのが鉄則だった。

「ありがとう」

ふっとアルディアスは微笑んだ。

「あんた、昔からそうやって祈ってるよな。味方も、敵も関係なく。そんなに優しくて、どうして軍隊なんかに入ってるんだ」
「私は優しくなんかないさ……オーリイ、君だってなるべく人を殺したくないといいながら軍人をやっているだろう? 同じだよ」
「俺は他にできることがねえから。それにあんたの部隊にいるのが好きだ。……だけど、あんたは違う。あんたは、もっと大きなもののことも愛してる」

アルディアスの瞳がわずかに見開かれる。自分の口から出た言葉に驚いたように、オーディンは顔をしかめた。それでも水滴を絞り出すように、彼は朴訥な言葉を続けた。

「狭い範囲が好きなだけなら、他の範囲にいる奴に向かって攻撃ができる。だけど、あんたは全部を愛してるんだ。敵も、味方も。それなのに誰かを斬ったら、それはあんた自身を斬ってるのと同じことなんじゃないのか? 流れる血はあんたのもじゃないのか?」

森の梢をかすめた月光が、オーディンの黒髪を照らしている。薄く苦笑をうかべ、アルディアスがかすかに首を横に振った。

「同じだよ、オーリイ。それは私だけじゃない。刃に自分と相手の命を同等に乗せているのは、皆同じさ」

気づいているかどうかだけの差だよ、と彼は言った。

「わかんねえな」

オーディンはまた頭をかきむしった。ひとつだけわかっているのは、この上官の強さが哀しいということ。

戦いが終わる日が来ることを望みながら、敵味方共、被害を最小限に抑えるための戦術を用いて。
偽善に見えるかもしれない、無駄なことに見えるかもしれない、それでも。
そして、祈りながらも毎日のように犠牲者を出してゆく……。

強ければ強いほど、敵を倒す人数は増える。
一人を剣に倒すごとに、上官の魂は見えない血を流すのだろう。そしてそれを止めようともせず、まるで涙のように流れるままにしておくのだろう、この人は。

けれど、それをそのまま口にするのは憚られた。
言わずとも伝わっているような気もする。

結局オーディンは月を見上げ、傍らの草むらを見やり、そしてぼそりと呟いた。

「戦いが、終わるといいな」

「ああ……そうだね、本当に」

誰もが人殺しをすることもされることもないような、軍人が役立たずでいられるような、平和な世界が来るといい。

子供が満開の笑顔でいられるような。
好きな職業を選べるような。

並んで森に立つ二人の背を、月光がひらひらと流れ落ちていった。















<ただの物語 断片55 作戦6> エル・フィンさん
http://elfin285.blog68.fc2.com/blog-entry-211.html







【銀の月のものがたり】 道案内

【第二部 陽の雫】 目次




そうして、彼はひたすらに祈っていたのでした。
鎮魂と平安の祈りが時空を超えて、今ここの世界で必要とするすべての魂たちのもとにも等しく届きますように。


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最終更新日  2010年05月12日 11時01分02秒
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