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我が「なんでもありトラベル社」が誇るツアー第三弾目のご紹介です。前回、前々回のツアーでは大変にご好評頂きまして「もう家には戻りたくない」症候群のお客様が大多数でございまして、未だに帰路につかれていないお客様ばかりです。当社としてはこれ程までにお気に召して頂きまして、光栄の至りでございます。さて、今回は更にパワーアップ致しまして皆さま方にお知らせ出来る事と相成りました。今回のツアーはあの宇宙船「ムーン・ツアーズ」の『空間ライナー』ならぬ「シーンライナー」をご用意させて頂きました。そうなんです、今回は皆様を誰もが憧れるあの宇宙旅行へご招待です。何時もは見上げるあの大空へ、あの星の煌めく宇宙へあなたを「シーンライナー」がいざないます。では、申込み要領から。1、 生年月日 ここに記載される年齢は適当で構いません。2、 身体の状態 体重制限あり3、 費用 お申込み頂いている方は全て高額収入の方ばかりです。(上限なし)4、 保険 この旅行に関しては保険の適用は有りません。では、旅行の簡単な予定とある国の軍〇機〇施設からの御出立となります。発射台が幾つかありましてその日の気分で決まります。エンジンを点火させてからでも取りやめになることがありますのでご承知おきください。たまにエンジントラブルで打ち上がってから急降下することもございます。日本語が通じないと不安と思われる方の為に同時通訳機が設置されておりますのでご安心ください。また、故郷が恋しくなられる日本人の為に特別に和みの和の茶室を誂えてございます。ではコースのご案内です。まず、無事に発射台から飛び立つ事が出来たら大気圏突破となります。ここでは皆様ご一緒にファイトーーいっぱーーつと掛け声をお願いたします。操縦士の大変な励みとなりますので大きな声でお願いいたします。今回のコースは太陽系の惑星順番一周コースです。では、太陽から一番近い星 水星から参りましょう。水星(マーキュリー)に水が存在するのかしないのか、クィーンのマーキュリーが居るのかいないのか皆さんの目でお確かめ下さい。お次は金星(ヴィーナス)さあ、皆さん素晴らしいヴィーナスの姿を堪能してください。ではでは、お次は地球(アース)となりますがこちらは一番最後となりますので青い星を流し目に軽く流して、火星(マーズ)へ向かいましょう。ここには昔から火星人が住んでいると噂されていました。今はどうでしょうか?ではでは 戦いの星と異名をとる木星(ジュピター)です。こちらを通り過ぎる時に武装をしてください。一体何が起こるか分かりません、しかも、次は土星(サターン)でございます。御覚悟をお願い致します。運よく二つの星を通り過ぎましたら、天王星(ウラヌス)と参りましょう。ここでは男性の皆さんには特にお気を付けになって欲しい事があります。女性を怒らすと魔法の金属で作られた刀で大事なお宝を切り落とされてしまいます。身に覚えのある方はよーーく身を清めて下さい。海王星(ネプチューン)が見えて参りました。ここでゲームを行いたいと思いますので3人一組になって下さい。一番面白いコントをやった方に特別にブイジャーからの美しい映像をパネルにして差し上げたいと思います。さあ、長いような短いような宇宙旅行の締めはなんと言ってもあの青く美しい星、地球への帰還です。如何でしたでしょうか、今回の「イチかバチか行ってみようツアー」あっと 言い忘れていました。この旅行は無事に帰って来れたらめっけもんツアーでもあります。最後の最後での大気圏突入で大破する可能性が大きいのが玉に傷でございます。では 皆様方 お元気でいってらっしゃいませ。無事の御帰還をお祈り申し上げます。
2013年07月31日
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うーーーん楽天の夏休み妄想旅行のお題で「イチかバチか行ってみようツアー」をUPしようとしたけど出来ない。 ↓ これが出て 何回か修正したのに出来ない『わいせつ、もしくは公序良俗に反すると判断された表現が含まれています』何がどうわいせつなのか????そんなシーンなの書き込んでいないのに!!!分からない??????なんでもありトラベル社の第三弾をUPしたいのに (;一_一)がっくり
2013年07月31日
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駐車場脇の小さな花屋は今日も店先に沢山の黄色に輝くひまわりの花を並べているのが見えた。僕は迷わず「すみません、このひまわりの花を全てください」店員は穏やかな笑顔を見せて「どなたか、このひまわりの花が好きなんですか?」「はい 僕のとても大切な人が・・・」「そうですか」店員はそれ以上何も云わずに一本だけ残して全てのひまわりの花を束にして彼女の好きなオレンジ色のリボンで絡げてくれた。僕がひまわりの花束を抱えて病室に入ると消え入りそうな笑顔で彼女は「嬉しい、ひまわり畑に行ったみたい」そう一言云うと静かに目を閉じた。ひまわりの花束に囲まれた彼女は穏やかで嬉しそうな笑顔だった。それからどうなったのかよく分からないけど、彼女の両親や親せきやらが病室を埋め尽くしたので僕は静かに廊下に出た。どうやってこの胸の怒りやら悲しみを消せるのか分からないまま、駐車場に向った。涙で滲む世界は彼女を失った悲しさで歪んで見えたけど駐車場に着くとその光景に息を飲んだ。あの花屋が無い。さっきまであったのに、ひまわりの花をここで買ったのに、その花屋が無い。涙の跡がまだ残っている頬をパシンと叩いてみた。痛っ確かに僕は生きているし痛さも感じる。一体どうなっているんだ。店の跡らしき所は雑草が生えていてもう何年も空き地だったことを教えてくれている。暫くそこで立ちすくんでいるとまだ蕾みの花の苗が一本すくっと空に向かって生えているのが見えた。あっこれはひまわり。あの時、店員が一本だけ残しておいたひまわりなんだろうか。僕はがむしゃらにそのひまわりの苗の根を掘り起こし、タオルで根を包むとそれを車に乗せて持ち帰り、家の僕の部屋の前に植えた。僕はこのひまわりを大事に育てて種を取り、庭中をひまわりだらけにするから空の上から待っていて。君が一緒に見たいと言っていたひまわり畑、来年ここで一緒に見よう。ここが僕と君のひまわり畑になるから。一年後、僕の家の庭は見事なひまわり畑になった。「わぁ、凄い!! こんなひまわり畑に来てみたかった」そんな明るい声が垣根の向こう側から聞こえて来た。声のする方を見ると、彼女によく似た同じ年頃の女性が微笑みながら立っていた。 終
2013年07月30日
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それは突然に訪れた。彼女の余命があと一カ月なんて、どうやって信じろと言うのだ。僕は彼女が入院している病院へ駆けつけた。点滴やら何やらで何本ものチューブで繋がれた彼女を見た時、言葉が無かった。僕は毎日、彼女を見舞うと彼女は儚げな笑顔で僕を迎えてくれた。時間ぎりぎりまで病室の彼女と何気ない会話をして駐車場に戻る時、「私ね、ひまわり畑に一緒に行ってみたかった」彼女がぽつりと呟いたのが聞こえた。そう言えば以前、一面ひまわりのポスターを見て彼女が「わぁ 凄い!! 今度、ここに行こうね」って言っていたのを思い出した。その時は別にどうとは思わなかったけど今となってはあの時、仕事の忙しさににかこつけて出かけなったことを悔やんだ。ひまわりかぁ誰に聞こえる訳でも無い独り言を言いながら駐車場に向かった時、ほんの少しの灯りが見えた。駐車場脇に小さな花屋が。病院の駐車場の脇に一軒の花屋がある事に気が付いた。何時も仕事帰りなのでもう面会時間の制限時間ぎりぎりに病院に着き、走って病室へ向かうのでそんな小さな花屋なんて気が付かなかったのだ。あれ?ここに花屋なんてあったのかなって不思議に思いながら通り過ぎようとしたら店内から鮮やかな黄色の花がこちらを見ているような気がした。毎日、その花屋の前を通り過ぎながら彼女の病室へ通う日が続いた。もう・・・ そんな予感がした日は丁度仕事が半ドンだったので早めに彼女の所へ。
2013年07月29日
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ある病気にかかり6週間毎、病院に通院していました。毎回血液検査をしてその数値によっては薬を変えるかも状態でした。毎日飲む薬では無いのですが、2種類の薬を曜日ごと飲むのです。1つの薬を飲んだその3日後、その薬の効能を消す薬を飲まなくてはならず、薬自体は飲みにくく無いのですが、副作用の加減で投薬後ちょっとだるかったりなんだりで、その薬を飲む曜日は気分も身体も落ち込みやすくてちょっと難儀していました。今日、検査結果を見て主治医が採血をしながら「この薬を飲み終えて、今回の検査結果が良ければ暫く休薬しましょう。 副作用も余り無くて良かった。 強い薬だったけど病気を早く叩いて良かった」先生と私と同時にガッツポーズやったぁーーーーー「あともう少し我慢して飲んで」6週間分の薬を頂いてルンルン気分で帰宅しました。油断は禁物なので少しでも調子が悪くなったら即病院へGO~休薬して暫く様子を見ることになるなんて嬉しい!!!一生飲み続けるものと思っていたので、こんな言葉を貰えるなんて信じられない。今はまだ本決まりでは無いので用心用心。でも 嬉しい!!!!!!
2013年07月29日
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何処までも青く高い空にもくもくと入道雲が上がる昼下がり、一人の少女と出会った。屈託のない笑顔の少女は私に「わたしね、トンボを助けたの」何も面識の無い私に少女は嬉しそうに話しかけて来た「あのね、トンボがクモの巣にベタっとくっついていてね」うんうん「羽根をバタバタさせていたの」ほう「それでね、わたし、そっとトンボをクモの巣から取ってあげたの」そう「そしたらね、トンボはビュゥーーンって飛んでっちゃった」そう、良い事をしたんだね。少女は優しそうな笑顔で嬉しそうに私を見上げた。私に話すとそれじゃぁねってバイバイしながら走り去った。少女の手に持つ虫かごの中には動かないトンボが何匹も。その虫かごをグルグル回しながらスキップして走り去った遠い日の夏の少女。
2013年07月28日
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連日の酷暑で皆さんバテていませんか?私はもうバテバテ状態で何とか息をしている状態です。 ちょっと大げさ ^^;ブルーラグーンを書き始めた頃はこんな結末なるなんて思っていませんでした。それが・・・・うーーん やっぱり暑さのせいで朦朧として闇雲に書いたのがいけなかったのか・・それで 面白かったのは〇〇〇場面の時は皆さん・・ポチポチが多くてそれ以外の時はしらっと静かでした 笑考える事は皆さん一緒なんだと痛感しました 大笑予想外のラストだったのでちょっとお口直しに以前UPしたことのあるものですがどうぞ もう お仕舞いよ さ 帰って 帰ってちょうだい待てよ ちょっと まてよ 話しが話なんて無いわ もう 私達には違うだろ 話せば分かるから何を話すの 何を話せと言うのもう 何もかも 終わったのよだから 早く目の前から消えてよいや まだ まだだ 俺は諦めていないから君の気持ちはよく分かる でも 俺の立場も考えてくれよ何を言っているの どう分かれと言うのよ私の気持ちも知らないで自分のことばかりいつも そうよ私のことなんて どうでもいいんでしょ そうでしょいいのよ もう いいのよさあ お仕舞いなんだから 帰ってもう あなたの顔を見たく無いの待てよお願いだから 俺の話を聞いてくれ 頼むよだめよ もう 私だっていつまでもあなたの都合のいい女じゃないわ明日になれば また 気持ちが変るかもしれない落ち着いて話そうでも 今 俺の願いを聞いてくれ頼むから ラストオーダーの時間を少し延ばしてよ残業で遅くなってやっと夕食の社員食堂に来たのにもう お仕舞いなの?そりゃないぜ えーー 火も落としちゃったってせめて ご飯くらい無いのふりかけで構わないから ね おばちゃん いや お姉さん
2013年07月27日
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広いダブルベッドの上で嬉しそうに麻由美を抱きかかえながらゴロゴロ横転する玲人に麻由美は底知れない恐怖に落ちそうになった。「麻由美はこの家で僕を待っているんだ、僕が帰ってきたら麻由美の好きな食べ物を沢山作ってあげるからね。あっそうだ今夜から着る物は・・」麻由美を抱きかかえて別の部屋へ。部屋全体がクローゼット仕様になっていて女性物が山のように「これは」「これは麻由美に似合いそうな洋服や靴や必要な物全て僕が支度しておいたから。この中から選んで着るんだよ」ガタガタと震える麻由美を玲人がそっとまた違う部屋へ「ここがバスルーム。麻由美の身体は僕が洗ってあげる、麻由美はそこに居るだけいいんだ。いいかい、全て僕が・・・麻由美の事は全て僕が」もう言葉を失った麻由美に「この家は僕しか開け閉めが出来ないんだ。だから麻由美は一人では何処にも行くことが出来ないんだよ。窓も同じ、外の空気を吸いたいときには家の中庭に出るといい。」マンションのワンフロアなのに20坪程の中庭が有り、そこは吹き抜けになって星空が天井高く見えていた。この部屋は底知れない湖のよう「この中庭の天井は全天候型だから曇りや雨の日は自動で天板のガラス戸が閉まるんだ。何処かに遊びに行きたい時はいつでも一緒に出掛けよう、麻由美の好きな処へ連れて行ってあげるから。ただし、僕から離れるような場所はダメだよ、どうしてかなんてもう分かるよね」もう、何も考えられなくなった麻由美は薄れる意識の中で、玲人の話した藍色に光る湖に二人で沈んでいく自分を感じた。 あの藍色に輝く湖の底に二人でそっと沈んでいくそんな日を 終
2013年07月27日
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「麻由美さんは自分のスケジュールをカレンダーに書き込んでいました。僕は毎日それをチェックして、麻由美さんが外回りの日に僕も担当先に出かけるようにしていたんです。麻由美さんの出先は大体掴めていましたから声を掛けるタイミングを見計らっていたんです。」もう、どうしていいのか分からなくなった麻由美の身体は硬直してきた。「こうして今、麻由美さんは僕の腕の中にいる。麻由美さんはもう僕の麻由美」「あの ちょっと待ってください、どうやって隠しカメラなんて・・・」玲人はくくくっと笑って「簡単な事だよ、アパートの管理会社が配電盤の点検時に会社の従業員の振りをして電力会社の人たちと一緒に部屋に入りカメラを設置したんだ。麻由美の生活の全てが分かる様になり、毎日、麻由美の好きな食べ物や好きなテレビ番組をチェックした。特にドラマではどんなシーンが好きか」玲人は横抱きにしていた麻由美の身体をぐいっと回転させて背中から抱きしめた。「麻由美はこの恰好がとっても気にいっているね、この場面になると頬を染めてうっとりとしていた。こうやってそっと髪の毛を撫ぜながら耳元で囁かれるシーンにクッションを抱きしめてほぉーっとした顔を」麻由美は背後からの玲人の声にゾクゾクとした恐怖を感じた。「これからは二人きり、もう誰にも邪魔される事は無いからね。麻由美の会社には明日辞表が届く」「え?辞表?」「そう、麻由美はここで暮らすんだ、麻由美の部屋の荷物は全て処分するように業者に頼んだから」「ま 待って 待って 私の大切な物や大事な物や写真なんかが・・・」「もう 全て要らないんだ。今夜から麻由美はここで僕と一緒に暮らすんだから」麻由美は彰子の言葉を思い出した「玲人には近づかないほうがいい」
2013年07月26日
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「でも、沙希が死んだってどうやって・・・」「ある掲示板に『レイプをしたい人。されたい人』と言うのを見つけたんです。それに式場担当女性の名前で『レイプをされたい』と書き込みました。あっと言う間に応募者が集まりました。その中の何人かの男とメールのやり取りをして他言無用を押しとうすことが出来きそうな男を何人か選びました。日時は式の日取りと同じですから簡単な事です。そして彼女たちの名前でレンタカーを借り、出来るだけコンビニ店前から離れた隅の駐車場に車をエンジンを掛けたまま停めて運転手の男が店内に入る。これが目印でした。その間に男たちは彼女を拉致して、夜明前に同じコンビニに彼女を置き去りにする」麻由美はドキドキしながら聞いた「でも、それでどうして自殺するって思ったんですか?」「彼女たちはそれまで散々苦労して挙式までこぎつけました。にも関わらず彰子からあのようなビデオを職場の全員の前で流されて恥ずかしさで消え入りたいと思うのは分かると思うのですが・・・」「でも・・・」「必ず止めを刺さないと僕に頼って来てしまうと考え、女性が一番屈辱を受ける行為はレイプです。違いますか?」麻由美は言葉を探した「あんなビデオとレイプでずたずたになった彼女たちの考えの行く着く先は自殺です。レイプも彼女自身が書き込んで頼んだのです、だから・・・僕は・・・。僕もあの男たちも彼女の死に対して直接関与していません。ですから僕は犯罪者でもなければ人殺しでもありません。」玲人は出来るだけ優しく話した「麻由美さんを探し求めて見つけた時、嬉しさに大声で叫びたくなりました。それからは麻由美さんの生活の全てを知りたくなり、探偵事務所に頼んで調べてもらったり・・・」ベッドルームにある大型テレビのスイッチを入れるとそこに映し出されたのは麻由美の室内だった。録画されたビデオを流しながら嬉しそうに笑う玲人。そこには麻由美の普段の日常の様子が映し出されていた。仕事から帰宅して思いっきりバッグを投げ捨て泣き出す姿バスルームから出て、バスローブを巻きつけて部屋の中を歩き回る麻由美ペティキュアが上手くいかないと「あ”―――っ」と後ろ向きに倒れる様子アイスティを作り美味しそうに飲み干す姿玲人からの電話に顔を赤らめて嬉しそうに話す麻由美唖然とする麻由美を愛おしそうに抱きしめながら「毎日、麻由美さんを見て、麻由美さんに話しかけていたんだ」これって・・・
2013年07月26日
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麻由美の額にそっとキスをして前髪を上にかきあげながら玲人は続けた「どうしたら麻由美さんを巻き込まないで済むのか悩みました。式を取りやめにして違う式場で挙げることも考えました」麻由美は玲人の腕の中で玲人の胸の鼓動を静かに感じていた。「彰子は麻由美さんを大変に気に入った様子で余り我儘を言わないことに驚きました。以前の彰子の我儘に大抵の担当者はいい加減にして欲しいと私に泣きを入れて来ましたから。もしかしたら彰子も麻由美さんの事を思い出したのかもしれません」え?そうなの?「沙希さんに担当が代わったとたんに彰子はそれまでとはうって変わって我儘を言い始めました」くくくっと喉の奥で笑い「沙希さんが私から離れるように仕向けたんですね。ですが私も負けられませんから沙希さんに今まで以上に強引なアプローチをしました」それが沙希が毎日早く自宅に帰る理由で、玲人の部屋に毎日のように通っていたんだ。「沙希さんは麻由美さんに対してライバル心を持っていたのでそれを上手く利用させて貰いました。彼女はそこのところを何となく匂わすと僕に思いっきりのめりこんで来ました、麻由美さんに負けたくないと思ったのでしょう」麻由美は胸が張り裂けそうに痛んだ。こんな駆け引きに巻き込まれてしまった沙希に対して悲しくてやり切れない思いで玲人から身体を離そうとした。玲人は慌ててぐっと麻由美の身体を引き寄せ、「待ってください、僕から離れないで。お願いですから、やっと僕の腕の中に・・」「沙希に悪いです、こんなの、こんなことって」後はもう言葉にならなかった、しゃくり上げて泣きだす麻由美に「もう、こんな事はありません。麻由美さんが僕の腕の中にいるのだから、僕はこの日を夢見ていたんです。あの藍色に輝く湖の底に二人でそっと沈んでいくそんな日を」え?っと顔を上げる麻由美の流れる涙を玲人は指先で拭い、唇にそっとキスをして「5人の女性たちは式の後、全て行方知れずになりました。全て同じ方法で」「それって」「僕が直接手を汚したわけではありませんが関わっていないと言えば嘘になります。麻由美さんと一緒になるのには邪魔でしたからね」麻由美は玲人を凝視した。私と一緒になるために彼女たちを・・・それって犯罪でしょ・・・「そんな事をしてでも麻由美さんを・・・」異常とも思える玲人の言葉に麻由美の背筋に悪寒が走った。
2013年07月25日
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優しく啄ばむ様なキスから今度は唇をそっと噛み、少し開いた所で玲人の舌先きが麻由美の口の中に滑り込んで来た。束ねた髪の毛のシュシュをそっと抜きながら髪の毛を梳かす手と舌を絡め取るような深いキスに麻由美は胸が張り裂けそうな程高鳴った。角度を何度も変えて麻由美の唇だけで無く身体の全てを喰らい尽くそうするようなキスに麻由美は頭も身体も痺れたような感覚に落ち、沙希が言っていた「玲人は本当に愛している女性にしかキスをしない」という言葉が全身を包んだ。玲人は麻由美の身体の力が抜け落ちてしまった頃に唇を離した。何度も啄ばむようなキスをしながら「麻由美さんと初めて会ったのはあの雨の日では無いんです。もっと前に・・10年前、僕が事故を起こした夜、麻由美さんはあの時そこに居たんです。あの時は僕は気が動転してしまい訳が分からなくなって何も出来ずにいたのを麻由美さんの一言で助けられました」玲人は麻由美をぎゅっと抱きしめて髪の毛に頬ずりしながら話しを続けた「麻由美さんが僕に『大丈夫ですよ、落ち着いてください』と、そして彰子に『怖がらないで、大丈夫ですから』そう言って彼女を抱きしめて落ち着かせてくれたんです。その時は頭が真っ白でしたので麻由美さんの名前すら聞かないでそのままになってしまったのですが、後からあの時麻由美さんが声を掛けてくれなければどうなっていたのかと思い・・・」麻由美はその事故をおぼろげに思いだした。でも、自分には関係の無いことだったし、早く自宅に帰りたい一心だったのでよく覚えていなかったのだ。あの時、泣きじゃくっていたのが彰子だったんだ。助手席の女性はただ驚いて何か叫んでいたようだったけど、玲人を庇うことなどしていなかったように思えた。「僕はあれから麻由美さんを探しました、彰子の我儘に付き合いながらね。彰子は二十歳を過ぎた頃、僕と結婚したいと言いだしたので慌てました。僕の婚約者はあの後すぐに僕の元を去っていったのは話しましたよね。それから僕は麻由美さんを探していたのですから、結婚を断念させるために賭けに出ました」「それが担当者を・・・」「そうです、彰子は大変に興味を示して喜んで賭けに応じました」ふぅっと大きな息を吐いて玲人は続けた「最後の5件目の式場で麻由美さんが担当になるなんて驚いてしまいました。賭けに勝たなければ彰子の要求を飲むことになるし、勝つと言う事は麻由美さんを傷つけることになる。僕の気持ちは揺れ動きました」名簿を貰いに行った時泣いたのはその為だったと麻由美は知った。
2013年07月24日
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何日かして外回りの営業をしてそろそろ帰ろうかなと思った時、ポツリポツリと雨が降って来た。ああ あ まただーと思いながら近くのコンビニに飛び込んでビニール傘を買うためにレジに並んだ。すると後ろからくすくすと笑う声が聞こえて来た。えっと振り返ると真後ろに玲人が立って同じようなビニール傘を持っている姿があった。「あ えええっと あの」「ふふ 同じですね あの日と同じ」玲人は麻由美の傘を持つと二本分の代金を払い「もう、お仕事は終わりですか?それなら一緒に食事でも」麻由美の答えを聞かないで二本の傘を持ったまま歩き出した。「あの 困ります」「車をそこに停めてありますからさあ行きましょう」車に強引に麻由美を乗せると玲人は自分の会社に直帰の連絡を入れて,玲人のマンションへ直行した。あの玲人が家だと言った部屋へ入ると「寂しかった、麻由美さんに会いたかった、僕の事を嫌いになったのですか?嫌ならいやと言ってください」急に玲人は麻由美を抱きすくめながら耳元で囁くように「彰子とは縁が切れました。もう、僕は自由になったんです。その事はあの時分かったでしょう、これからは麻由美さんを怖がらせたり、不安にしたりすることは有りません。ですからお願いです僕の腕の中に・・・」「あの もし私が担当者のままだったら・・・」麻由美は震える声で訊ねた「その時は恐らく沙希さんは死なずに済んだでしょうね」「え??それって・・・」どうして沙希が死んだことを知っているの?この事は内緒のはずなのに。玲人は麻由美を横抱きにしてベッドルームへ入り、そっとダブルベッドの上に麻由美を横たえた。「安心してください、この家には隠しカメラなんてありませんから」「えっと そんな事じゃなくって・・・どうしてなのか・・」麻由美が続きを言おうとしたその唇は玲人の唇に塞がれて言葉は飲み込まれてしまった。
2013年07月23日
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毎日、暑ーーーいですね日本列島 南と北ではかなり天候が違うようで、大雨の被害にあう地域から私のところのように連日35度越えで息も絶え絶えだったり。こんな信じられないような天気のためか私の脳も沸騰状態となり、今までのものと全く違った世界を書き進めています。いやぁ これ程までに・・・・となるとは自分でも信じられなーーい一気に書き終えてしまったのでこの後はダカダカとUPするだけなのですが、昨晩 読み直してうーーーん こんな結末でいいのか?!?考え出したら眠れなくなってしまい漫才の「三球照代」状態に 古っ (照代さんは既にあちらの世界に・・・)それなら某国のようにドラマは視聴者の意見を聞いてシナリオを書き直すようにこの話も・・・なぁんてねいやいや あくまでも私の脳内ストーリーで!!そうだ!!結末を幾つか用意して超ハッピー。思いっきりブラック。なんだこりゃ。魑魅魍魎とした世界、等々UPしたら面白いかもいや もうこんな話は読みたくないって?!?こりゃ どうも 失礼いたしました
2013年07月23日
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次の日、心配になった麻由美が沙希の携帯に何回も電話を掛けても出ない事に不安に感じて、丁度仕事がオフだったのでケーキを買って沙希を見舞うことにした。沙希のアパートの前に黄色のテープが張られて物々しい雰囲気にちょっと気が引けたけど沙希の部屋へ行こうとして警察官に止められた。「この部屋の住人の女性の知り合いですか?」同僚だと答えると、沙希が自殺した事を告げられた。携帯が無いので連絡先が分からず困っていたらしく、色々と事情聴取されたが気が動転してしまい警察官の言葉は耳に入ってこなかった。その後、会社にも調べが入り、私達は一人ひとり事情聴取されることになった。会社のブランドにひびが入る事を警戒した上司たちは沙希が自殺したこと緘口令を敷いてそれまでと何ら変わらない業務に徹するように指示した。挙式をするカップルを何組も見届けて一週間程経った頃、昼休みに玲人から携帯に着信があった。「麻由美さん、元気ですか? 大丈夫?」玲人の言葉に思わず涙が零れ落ちそうになり、慌てて姿勢を正して「先日はどうもありがとうございました。挙式費用は全て入金して頂きましてありがとうございます」努めて平静を装い業務に徹した言葉を使った。「沙希さんがあんな事になってしまって・・・・」沙希の名前を出されると胸が一杯になり嗚咽が漏れそうになる。「大変に御心配をお掛けして申し訳ありません。もう、彼女は実家に戻りましたのでご安心ください」「そうですか、僕たちのせいですよね」「いえ・・・ 自分の立場をわきまえなかった者の至らなさですから・・」「麻由美さんは優しいんですね、僕たちを責めようとはしない」そんなことは無いと言いかけたが、もう言葉が続かなかった。「あの 宜しかったら麻由美さんのオフの前の晩に僕の部屋へ来てもらえないでしょうか?一緒に食事をどうかと思いまして」「それは・・・ 申し訳ありませんが遠慮させてください」「そうですか、 そうですよね、まだ 気持ちの整理が付かないのは分かります。こんな事を言って申し訳けありませんでした」麻由美は今すぐにでも玲人の胸に飛び込みたかった、玲人の胸で思いっきり泣きたかった。こんな気持ち沙希に悪いよ、私ってちっとも優しくないよ。涙が零れ落ちる前に震える指先で携帯を切った。
2013年07月23日
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一方、麻由美は同僚たちと挙式の後片付けをしながら「驚いちゃったねぇ。まさかね、これが噂の結婚式だったんだね」沙希に同情しながらもまるで18禁映画をライヴで観たような興奮に包まれていた。「麻由美は危機一髪だったね」「まあね 沙希は良いとこ取りをしたかったのかもね」「でも凄い映像だったね」「あれって男子たちは保存ものでしょ」などと口ぐちに同情とも嘲笑ともいえる言葉を発していた。そして麻由美に対しも同じような同情の視線を投げかけた。居たたまれない麻由美は重い足取りで会社を出て早々に自宅のアパートに向かった。車の中に連れ込まれた沙希は目隠しをされて何処かに連れて行かれたが、沙希は口の中に押し込まれた布のために助けを呼ぶ声も上げることも出来ず、ただ怯えて身体を硬直させていた。男たちは人通りが無い静かな場所に車を停めると「さあ パーティーの始まり始まりー。今日の御馳走はこの若い女性でーーす」一斉に笑い声が上がった。車内はむせ返る様な熱気と男たちの汗の匂いで充満していた。「では 一番は誰?」「くじ引きだよな」「じゃあ 始めるか」「おい、ねえちゃん、手を出してみな」沙希は言い知れぬ恐怖に怯えながら手を出した「お オレが一番ね」沙希が出した手に一番最初に触ったらしい男が嬉しそうに声を上げた「じゃあ この後は何時もの順番でってことで、いたっだきまーーすっと」沙希の着ている洋服をはがし始めた。驚いた沙希が大暴れしても男たちは笑ってそれを楽しんでいるようで、「おい そっちの手をちゃんと持ってろよ」「足をバタバタさせやがって、抑えつけろよ」「はいはい わはははは、おもしれぇ」車内で散々弄ばれた沙希は夜明に近い頃やっと先ほどのコンビニの駐車場で解放された。車から放り出された沙希はバッグを握りしめてズタボロになりながら自分のアパートにやっと辿りついた。部屋に入るなり口に入れられていた布を取り出すとゲホゲホ乾いた咳が静まり返った室内に響いた。なんで、どうして、私は何か悪い事をしたの?洗面所の鏡で自分のあちらこちら傷だらけのボロボロの姿を見て「本当にもう生きていけない」
2013年07月22日
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式を終えた彰子は玲人に婚約指輪を渡すと「私の負けね、もうこれでお終い。5人の担当者を落としたから約束通りこれで玲人との関係も終ね。楽しかったわぁ で あの担当の女性はどうするの?何時も通りなのかなぁ? ふふふ まあ 私には関係無い話だけどね それじゃ バイバイ」玲人は沙希の携帯に電話を掛けた「大丈夫かな?」まだ泣きじゃくりながら沙希は「もう私生きていけない・・・あんな映像をみんなに見られて」「そうか・・・それじゃぁ 最後にドライブでもどうですか?」「ドライブ?」「ええ 沙希さんの気のすむまで車で走らせてあげます、彰子にあんな事をされて申し訳ありませんでした。今から迎えに行きますから何処にいるんですか?」アパートに戻った沙希はその住所を教えた。程無くして玲人がレンタカーを借りてアパートの前に乗り付けた。「済みません、ありがとうございます」そう言いながら沙希は車に乗り込んだ。「あの 玲人は麻由美の事をどう思っているんですか?」「麻由美さんの事?」「ええ あ いいえ そんな事どうでもいいです。私は玲人が好き、愛してる、このまま玲人のマンションに行きたい」「そうですか、では何か飲み物でも買って来ましょうか」玲人は沙希の住むアパートの一番近いコンビニに車を停めてエンジンをかけたまま店内に入った。隣に窓ガラスを全てスモークに覆われた黒い大型のワゴン車が停まり中から2,3人の男たちが降りてきて、沙希の乗っている車の運転席と助手席のドアをいきなり開けた。驚く沙希の口にタオルのような布を詰め込むと、シートベルトを外してあっと言う間にワゴン車の中に押し込んだ。店内で買い物を済ませた玲人は車内に沙希の姿が居ない事に気が付いて近くを探したが見つからないので、もしかしたら沙希の気持ちが変わってアパートに戻ったのかもしれないと思った。これ以上沙希に辛い思いをさせてもとそこから立ち去った。
2013年07月22日
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挙式の日が近づくと沙希も麻由美もそわそわし始めた。その日は麻由美は欠席にする予定だったけど式の録画撮りのためにミキシングルームでミキシング部の人たちと一緒に過ごすことにした。挙式は予定通り延々と二人だけで3時間続いた。最後のクライマックスで彰子が「私と玲人の儀式を行います。用意しておいたビデオを流して下さい」笑いながら式が始まる直前に渡したビデオの事を言うと、玲人の部屋の様子を映したビデオの映像が流れ始めた。麻由美は息を飲んだ。以前、玲人の部屋で見せられたものが映し出されると思っていたから。しかし、次の瞬間、呼吸がとまるほど驚いた。そこに映っていたのは・・・式場の隅で呆然と立っている沙希。そこに映っていたのは沙希と玲人の絡み合うベッドシーンだった。沙希は喘ぎながら「彰子より麻由美より私 わたしを愛して、もう 玲人しかいらない・・愛して・・」沙希は顔面蒼白になり、その場に突っ伏した。「キスして お願い 唇にキスして 玲人のキスが欲しい・・」色々な体位で絡み合う二人の映像は式場の大画面に映し出され、沙希の昂揚する喘ぎ声が一段と高くなり汗が飛び散る様子まで詳細に録画されたビデオに会場にいた関係者たちは驚きのあまり固唾を飲んで観るしかなかった。麻由美もミキシングルームで言葉を失くしていた。「なぜ、どうして、沙希が?」「ふふふふ あははははは どうやら私の負けみたいね玲人。ま いいわ、で。ああ あ さあ 沙希さんどうする?」沙希は泣いて謝り、よろけるようにその場を立ち去った。麻由美は慌ててミキシングルームから出て沙希の後を追った。式場から走り出る沙希を何とか捕まえて小路に連れ込むと「どうしたの沙希?いったい何があったの?」泣きじゃくる沙希を麻由美は抱きしめながら優しく訊ねた「麻由美を騙した玲人に会って文句を言ってやろうと思ったの、そしたら・・玲人の優しい態度や言葉使いについ心と身体が・・・」「うんうん 分かるよ 分かる 沙希の気持ち分かるよ」麻由美も一緒になって泣きだしてしまった。「ごめんね ごめん 麻由美 本当にごめん。私ね麻由美に勝ちたかったの。あんなに大きな結婚式ってなかなかないでしょ、その担当になった麻由美が羨ましかった。しかも、玲人は麻由美の事を大事に思っていることが分かったから、余計に悔しくなって・・・玲人は本当に愛している女性しか唇にキスをしないの だから だから だ・・・」「うんうん 沙希 もういいよ、もう、辛かったね、ごめんね私の代わりに沙希が・・・ごめんね」「もう、私ここに勤められないから辞める」え? そんな事言わないでって言おうとしたら「あんな映像を流されて居られないよ」泣きじゃくりながら沙希は「私ねあの同業者の人たちから聞いていたの、あの二人の担当者は必ず職場を辞めるって、そして行方知れずになるって。当たり前だよね。あんな映像流されたら居たたまれないもの」「辞めてどうするの?」「分かんない、分からないけど辞めるから」沙希は麻由美の手を振りほどくと雑踏の中に走り去った。
2013年07月21日
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玲人はそれまでのDVDから一変して深い森の中を彷徨う映像を流し始めた。鳥たちの囀りや木々のこすれ合う音、風の囁き、心が和むような音と映像に麻由美の心は落ち着きを取り戻して来た。暫く、森の中を彷徨っているときらっと光り深い藍色に染まる湖面が見えてきて、今度はゆったりと流れる水音、波に身体が自然に揺れるような、抱かれるようなそんな光景が広がった。「麻由美さんを怖がらせる事はしないと言ったのに泣かせてしまって」そう言いながら玲人は静かに麻由美を後ろから抱きしめて頬を伝う涙を指先でそっと拭った。麻由美の気持ちが治まるまで玲人は麻由美の髪の毛をそっと撫ぜて「麻由美さんにはあの担当者たちのようにはさせたくない。麻由美さんを傷つけたくないと考えていたのに。恐らく彰子は貴女を脅していたのでは無いですか?」玲人は優しく耳元で囁いた。麻由美は彰子の電話の内容を話した。「やっぱりそうか。急に担当者が代わったのでもしかしたらと思っていました」ゆっくりと麻由美から身体を離すと、また新しいDVDをセットした。「これは」麻由美が絶句したのも無理はない、あの時の映像だったから。麻由美は身体から力が抜けて床に仰向けになった時の事が思い出されて胸が張り裂けそうになった。これも録画されていたんだ。ベッドルームだけでは無くてこの部屋にも隠し撮りのカメラが設置されていたんだと思うと身震いした。でも、麻由美の顔が映っていない、映っていないと言うよりも角度が今までのものと違っていて音が微かに聞こえて、玲人の背中が少し見える程度の物だった。これでは玲人の相手が一体誰なのか判別出来ない代物だった。「彰子は貴女も落ちると思い、ベッドルームだけでは無く最初から録画をしようとしていました。この部屋にも隠しカメラを設置したようです。でも、カメラの角度を僕が変えておいたのです。マイクにも細工を施しました、昼間には元通りにしておきましたけど。だけど失敗してしまいました。麻由美さんのシュシュを彰子に見つかってしまって、申し訳ない事をしてしまいました、彰子からかなり口汚く言われたでしょう」麻由美の背後からふわっと抱きしめた玲人は辛そうな顔で麻由美の髪の毛を撫ぜながら謝った。「彰子はあの時の交通事故のトラウマで夜は外に出かける事が出来なくなってしまいました。昼間は自由奔放に遊びまわるのでが、日が落ちるととたんに怯えだすんです。その為に夜だけ僕は自由になる事が出来るんですよ、何だか臆病者で恥ずかしいのですが」麻由美は玲人の胸に顔をそっと押しつけて「夜間に彰子さんから携帯に掛かってくることは無いんですか?」「それはありません、僕と彰子との携帯の電源は切ってありますから」ふふと笑って玲人は嬉しそうに話した。「あともう少しで自由になれるんです、あともう少し」「どうして私にそんなに大事な話しをしたんですか?」「麻由美さんは僕の大切な人だからです」麻由美は玲人に愛されているんじゃないかと不安になりながらもそう思うようになった。
2013年07月21日
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「なぜ こんな事を・・・ この女性たちを愛していたんですか?」やっと絞り出した声で聞いた麻由美の問いに玲人は首を横に振りながら「彰子と賭けをしたのです、僕が彰子から自由になるためにね」「自由に?」「そう自由になるためにです。10年前、交通事故を起こした僕に彰子の母親はこう言ったんです。『彰子が成人するまで援助してくださいお願いします。彰子が成人したらそれでもう結構ですから』と」「彰子さんはもう卒業されたんじゃぁ・・?」「はい 卒業しました。ですが、彰子はまだ自分は卒業出来ていないと言い張るんです」「それは単なる我儘でしょ」「そうですが、父親を返してと叫ばれると・・・」玲人の優しさが彰子の我儘を増長させているんだなと玲人に対して同情的な気持ちが湧いてきた。「でも、どうしてこんなベッドの中の事を録画したんですか?これって二人にとってとっても神聖な事だと思うんですけど。録画した事をこの女性たちは知っているんですか?」薄笑いを浮かべた玲人は「このDVDは挙式の最後に流しました」え?「式場関係者の前でです、もちろんここに映っている女性もその場に」えええ??!!「そんな事って」「彰子は僕が負けることを願っていました。自分が勝てなかった腹いせに録画しておいた映像を流していたのです」「でもどうして録画したの?」「本当に僕が勝ったがどうかを録画して確かめていたんです」「それって あんまりです。この女性たちに対して酷い仕打ちです、ひどい・・」麻由美は知らず知らず涙が零れ落ちている事に気がつかなかった。
2013年07月20日
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「ブルーラグーン」の続きをUPしようと悪戦苦闘中です新しいパソコン(セブン)で遊ぼう思い立ち上げて勢いよくさあ あの続きをーーー!!!でも でも えええええええ「クチコミテーマ」を選ぶことが出来ない ワードで書き溜めてあるのでここでUPに失敗しても文章に差し障りは無いのですが、でも えええ??なんで選べないんでしょう???あのあと、玲人は麻由美をどうするのか? 沙希は・・・・ ?? 彰子は・・・????
2013年07月20日
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「それは」麻由美は自分が同じ気持ちだから分かるとは言えなかった。「あ そうだ面白いものを見せてあげます」そう言って玲人は大型ブラインドのスイッチを入れた。何枚かのDVDを持ち「これは僕の・・・」一枚目のDVDを入れるとそこに映し出されたのは玲人と女性の絡み合うベッドシーンだった。思わず目を見開いた麻由美は「これは・・・ えっ いったい・・」苦笑いをしながら玲人は「これは一軒目の式場の担当者で、年齢は僕よりも少し上の女性です。いとも簡単に僕の誘いに乗って男女の関係になりました。もう、このことは知っていますよね、僕と彰子が賭けをして担当者と関係を持つ事が出来るかどうか」玲人が淡々と話している間も画面の女性は喘ぎながら玲人の名前を何度も何度も呼び「キスして お願い 唇にキスして 玲人のキスが欲しい・・」女性が自分の肢体を玲人の身体に巻き付け玲人と一緒に律動する姿や、乱れた髪の毛がより一層悩ましげに見えた。「あ あの あの これをどうして私に?」麻由美はその映像が恥ずかしくて俯きながら訊ねた。「次はこの女性です」そう言って二枚目のDVDを入れた。「二件目の担当者はまだ若くて高校を出たばかりでした。初々しいくてこんな女性を騙すのはちょっと気が引けましたが賭けは賭けです。あっという間に僕の虜になり、毎日会社帰りに僕のマンションに通ってくるようになりました」若くてピチピチした肌が汗に濡れ、きらきらと輝いている下半身を思いっきり玲人の前に広げ「キスして お願い 唇にキスして 玲人のキスが欲しい・・」その様子に麻由美は真っ赤になった。「あの もう結構ですから・・・」そんな麻由美の言葉が聞こえないのか「三件目の担当者は40歳を越えた既婚の女性でした。もう子供もいる母親なんです。でも女なんです」豊満な胸を揺り動かし大胆なポーズで玲人に跨り、しゃぶりついている姿にもう麻由美は言葉を失っていた。そして「キスして お願い 唇にキスして 玲人のキスが欲しい・・」そう喘ぎながら玲人の顔に被さるが、玲人はそれを払いのけていた。「これが前回の四件目の担当者で、彰子の同級生でした。彰子に物凄く罪悪感を抱き罪の意識に苛まれながら余計に僕に溺れました」彰子に悪いのは分かっているけど、だけど「キスして お願い 唇にキスして 玲人のキスが欲しい・・」私を捨てないでと泣きながらすがる様子の映像に麻由美はもはや見ていられなくなった。
2013年07月20日
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カクテルの一つに「ブルーラグーン」があります。 スカイウォッカとデカイパーブルーキュラソーとフレッシュレモンを軽くシェイクして氷の入ったロングシャンパングラスに注いで出来上がりです。チェリーやレモンを添えて、ストローを挿してどうぞ。ブルーキュラソーの青い色とフレッシュレモンの爽やかな味わいに癖になりそうな一杯です。ベースにウォッカを使用しているので思ったよりも酔うので気を付けたほうがいいかもしれません。ブルーラグーンとは青い湖のことです。
2013年07月19日
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訝しがる麻由美に玲人は何か冷たいものでもと冷蔵庫から冷えたアイスティを持って来た。「ここは唯一僕の安らげる場所です。誰にも邪魔されない空間なんです」麻由美はただ黙って玲人の顔をじっと見つめながら話しを聞くことにした。「僕は10年前の夜、婚約者とドライブをして彼女を家まで送り届けるところでした。彼女との話しが楽しくてつい余所見をした時、車の前に一組の親子連れがいたのです。慌ててブレーキを踏みましたが間に合いませんでした。父親が僕の車に当たり、そのまま即死でした。横で父親を呼びながら泣き叫んでいる中学生くらいの少女があの彰子でした」麻由美はごくりと唾を飲み込んだ。何と無く記憶の彼方にそんな出来ごとがあったような、なかったような、もしかしたらテレビで観たのかもしれない、そんな感覚で話を聞いていた。「僕は頭が真っ白になってとにかく警察と救急車に電話をしましたが、父親は帰らぬ人となり僕は殺人者となりました。幾ら交通事故とは言え人を引き殺したのですから、彰子が言う殺人者には変わりありません。それを境に婚約者とは何となく空気が悪くなり彼女は婚約指輪を置いて去って行きました。彰子は僕に父親の責任を取れと迫り、父親がしてくれるはずだったと言っては我儘を言うようになりました」麻由美は胸が痛くなった、でもそんな話しをどうして今私にするのだろう?「最初は中学生らしい可愛らしいものでしたが高校生になり、大学に進学したいから費用を出せとかそれなりの生活をしたいから生活費まで要求するようになりました」「あの それって法外なことじゃないんですか?玲人は顔を歪めて「そうかもしれません、でも彰子から殺人者なんだからとか父親を返してとか言われると彰子の言うがままにしてしまいました」話しをしている間玲人は以前のように麻由美に触れようとはしなかった。それどころか距離を置いて話す玲人にが何か物足りないと感じてしまう麻由美はちょっと恥ずかしくて、「あの 彰子さんは玲人さんの事を好きなんだと思いますけど」話しを少しずらそうとした。「あはははは 彰子は僕のお金と自分の見栄の欲求を満たされたいだけです。僕の事なんか好きでは無いんですよ。ただ 僕をシモベのようにして女王様でいたいだけなんだ」「え? あの玲人さんを見詰める瞳は好きな証拠だと思います」「どうしてそうだと分かるんですか?」
2013年07月19日
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システムの事で頭の中が沸騰中の昼下がりただでさえ 37℃超えの日々なのにこんな過酷な生活は・・・・と思っていた そんな時 一本の電話がトゥルルルル~さあ ばば様、喜んで受話器に飛び付きます「ん? 誰だいやぁ?」・・・・・「ん? なんだって??」・・・・・「ん ん ? よく聞こえんずら!」・・・・・今回、ばば様はスピーカーボタンを押しません「は?? カブ?? カブがどうしたって???」・・・・・・「ん? 買いどき?」・・・・「へ? 今ずらか???」・・・・「うーーん 今ねー ほいじゃあ 今 植えて大丈夫ずらか?」・・・・「カブはもっと後ずら」・・・・「どんなカブずら?」・・・・「ねが出るって?!? 根っこが出るのは当たり前ずら!!!!」・・・・「伸びる? 芽が伸びないカブってあるずらか?」・・・・・「必ず 儲かる?!? わしはカブは食べるずら 売らない!!!!!」・・・・「市場へ出すなんてそんな沢山植えるなんて、腰が痛くなっちまう」・・・・・・「売るって 今 植えて すぐ売るって どんなカブずら?」・・・・・・「そんなまずそうなカブなんていらんずら!!!」ガチャン ツゥーーー恐らく何処かの何とか詐欺が株をなんたらっていう電話だったんでしょうね。相手の声を聞きたかった~~
2013年07月19日
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玲人のマンジョンに着くと建屋の前に玲人が立っていた。麻由美の顔を見ると玲人は嬉しそうな顔をして「お待ちしていました。さあ こちらです」麻由美の腕をそっと掴むと迷わず建屋の裏側に行き裏壁の前に立った。そこに小さな電気メーターのような箱が有り、玲人はカギを取り出して開けボタンを幾つか押した。すると壁だと思っていた面がギィと小さな音をたてて開き、玲人は麻由美の背中に手を回しながら入った。そこには二基のエレベーターが有り、麻由美が何も言えずに俯いていると「麻由美さんを怖がらせる事は何もしません、嫌ならいやと言って下さい」一基のエレベーターに乗り込みながら玲人は何時もの階のボタンを押さずに違う階のボタンを押した。戸惑いを隠せない麻由美に玲人は「大丈夫です。怖がらなくても大丈夫です。麻由美さんには・・・」やがてエレベーターが停まりドアが開くとそこは和風の家の前のような玄関先になって一軒の家のような造りになっていた。扉を開けて玲人が麻由美をそっと家の中に誘うように招き入れた。「ここは・・」「ここは僕の家です。マンションの一つの階のワンフロアを全て家のように仕立てました。と言ってもこれは僕では無くて父が残した物ですが」「お父様が?」「この部屋の事は彰子は知りません、教えて無いのです。父はこのマンションを建てるとすぐに他界しましたので内装は僕の趣味です。最初に来てもらった部屋は彰子の趣味が殆どですけどね・・・ まあ、彰子が勝手に模様替えをしてしまったのですが・・」玲人は麻由美をゆっくりとリビングへ招き入れた。その部屋は深い藍色を基調としたインテリアで統一されていて落ち着いた雰囲気をかもし出していた。「あの、どうしてこの部屋に私を?」「僕と彰子の関係をもうご存知でしょうか?」「え?えっと、婚約者同志」「あははは まあ そうですけど、それ以外に聞いていませんか?麻由美さん達は同業者から色々な情報を収集しないのでしょうか?」「あ あの・・・」「いいんです、知っているのですね。もう何軒の式場で同じ事をしたのか、麻由美さんの所で5軒目です」苦しそうに苦笑いをしながら玲人は話しを始めた。「あの、どうして同じような結婚式を何度も挙げるんですか?何回も御姫様になりたいってことかな?」麻由美の素朴な質問に「麻由美さんって本当に素直と言うか、単純と言うか・・毒されていないってことかな?」嬉しそうに笑う玲人に麻由美は頬を赤らめた。
2013年07月19日
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それからの沙希は積極的に仕事をこなし彰子や玲人からの電話にも嬉しそうに対応するようになった。しかし、彰子の我儘は日を追うごとに酷くなり午前中に言ったことが夕方には変わる程になっていき、沙希はその為に衣装や調理やアレンジメントスタッフから大ブーイングを受けることになり、二人とスタッフの板挟みで次第に憔悴してきた。そんな沙希の秘密のお楽しみは玲人からの夕食のお誘いだった。「ねえ 沙希、今夜一緒に食事にどう?」同僚たちや麻由美の誘いに沙希は「もうね、疲れちゃってね、夜は早く寝るからごめんね」全ての誘いに断るようになった。「ごめんね沙希、私の代わりに・・・本当にごめん」「あははは いいの、いいの。私がやるって言ったんだからさ、気にしないでね」麻由美の沙希を労わる言葉に沙希は苦笑いしながら答えていた。あれから玲人は麻由美の携帯に週2,3回程掛けて来るようになった。内容は取りとも無いことで上映中の映画の話題だったり、オフィス街の他愛もない噂話だったりで決して玲人は麻由美をマンションに誘うことはしなかった。電話を切る前に必ず「では、また連絡します。おやすみなさい、良い夢を見て下さい、出来れば僕の夢を見てくれると嬉しいな」その言葉に麻由美は心が満たされる思いだった。そんなこんなで玲人と彰子の挙式があと一週間に迫って、丁度沙希がオフの日。お昼休みに玲人から会社に電話が入った。沙希がオフなので麻由美が代わりに受けることになったのだが「えっと 込み入った話なんで出来れば余り他人に聞かれたくないのですが」「沙希がお休みを頂いているので明日にでも」麻由美が言い終える前に「もし、宜しければ僕のマンションに来てもらえませんか?」「それは・・・」「僕の事を嫌いなったわけでは無いのなら今夜何時もの時間に待っています。嫌なことはしません。ですから来てくれますよね」麻由美は返事が出来なかった、こんな時沙希が居てくれれば。終業後、麻由美は熱に浮かされたように玲人のマンションに向かった。いけないって分かっているのにここで踏ん張らないといけないって分かっているのに、引き寄せられるように玲人の元に向かう自分を止める事が出来なかった。
2013年07月18日
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仕事で使っていた私の片腕のME 古っ最近起動するのが遅くなったり、起動しなかったりでやっと買い変えることにしました。先日と先先日の二日間、システム会社の人が来てパソコンや周辺機器の設置と新しいシステムの説明をしてくれました。うーーん初日は頭がガンガンして朦朧状態になりこれで覚えられるのか????昨日は前日の説明の途中から始まり、演習今度のパソコンはセブンMEから一気にセブン~ せぶん~ セブン セブンセブン ♪はーるかな星が~ ふるーさとだー ♪おおお ブラウザも一新したのでちょっと大きめパソコンの説明は全く無しでシステムオンリーの説明そのシステムを使いこなせなければ アウト!!!この歳になって新たな挑戦に何処まで脳味噌が耐えられるのか??とにかく 一日で覚えなくては!!!必死の形相の私に「まあ とにかく使ってください。慣れれば何とかなりますから」え???「あ もし、分からない事があったらお電話ください。何度でも説明しますから それと、もしぐちゃぐちゃになったらオンラインシステムで直しますから大丈夫ですよ」ああ ブラウザの真ん中にオンラインシステムのマークが張り付けてあるのはその為なのねでは 演習と参りますかおおおおおお 横で勝手に色々言ってくれますうーーん それは こうかな? いや こうかな?と冷や汗たらたら何とか説明してくれた事は覚えていたようでOKサインを貰いました。その後でマニュアル書を出してきておい 早くそれを見せてよ!!でも、それに頼らずに覚える事が出来たので案外それが彼流の愛の鞭だったのかも ♥コピー機も新しくなり始めて京セラを使うことに今まではドットプリンターだったので今度のプリンターの早さにびっくり!!音も静かで綺麗な仕上がりにおおおおおおっと大喜び今まではプリントしている間は音がやかましくてテレビも電話の音も聞こえない状態でした。外付けハードディスクも2テラを用意して (大袈裟)っっっ 汗毎日、触って覚えなければと思いつつ、遊びで使っているノートパソコンについ手が伸びてしまいます。この二日間、脳味噌が沸騰状態でしたのでばば様の相手も出来ずちょっと寂しい思いをさせてしまいました。ごめんねはぁ ファイトーー オーーーーー
2013年07月18日
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玲人の手の動きにドキッとした沙希は慌てて立ちあがり「と とにかく もう 麻由美に関わらないでください」「ですが・・・麻由美さんはもう担当者じゃないんですね」「はい 私がお世話させて頂くことになりましたから」「そうですか」玲人は口角を上げて何か思案するように沙希の顔を見た「では、これからは沙希さんに色々な事をお願いすれば良いのですね」「はい 私が承りますので宜しくお願い致します」「そうですか、分かりました。では これからの事は沙希さんにお願いします。彰子はかなり我儘ですが大丈夫ですよね。麻由美さんは彰子の我儘を良く聞いてくれて大変に助かりました」「大丈夫です」沙希は玲人の口から麻由美を誉める言葉を聞くと胸がキリキリした。「今夜は御馳走様でした。では 失礼します」玲人は沙希の後姿を見送りながら麻由美の携帯に電話を掛けた。アパートの部屋でのんびりとしていた麻由美は玲人からの電話に驚いた。もう掛かってくることは無いと思っていたから。「もしもし 玲人です」携帯から聞こえてくる玲人の声に嬉しいような、どうしようと言う困った思いが交錯して「あ あ あの・・・」「こんばんは、担当者が代わったんですね、今夜沙希さんがご挨拶に来ました」「え? 沙希が?」「はい とてもはきはきとした元気な女性で、麻由美さんとは違う性格で楽しかったですよ」「そうなんですか・・」「ええ 彰子の我儘も聞いてくれそうなのでほっと安心しています。麻由美さんにはご迷惑を掛けてしまって謝らなくてはと」「あああ もういいんです、もう・・・」「あの もし宜しければ仕事を離れてお話をしたいのですが」「いいえ それは」「担当者じゃないのですから気がねなんていらないですよね」「それは違うでしょ。だって玲人さんは彰子さんと婚約しているのですから」「あははは 硬いな、異性の幼馴染だっているし、同窓生だっているんですよ男女で話す事がいけない事なんて何も有りません」「そうですが」「ね もう仕事の事は忘れて、担当者は沙希さんなんですから」「それでも・・」「ふふ 麻由美さんのそう言うところがいいんだなぁ」「では、また連絡します。おやすみなさい、良い夢を見て下さい、出来れば僕の夢を見てくれると嬉しいな」切れた携帯を見詰めて麻由美は嬉しくてこんな気持ちをどう押さえたらいいのか分からずにいた。
2013年07月18日
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沙希は麻由美の教わった玲人の携帯に電話をして担当が自分に代わった事を告げ会う約束を取り付けた麻由美の窮地を何とか救いたい気持ちもあったけど玲人とはどんな男性か知りたい気持ちが大きかった。指定されたマンションに沙希も呼びだされた。マンションの部屋へ行くとリビングに通された沙希はお洒落で素敵なインテリアにドキドキした。ソファに座りながら「こんばんは、麻由美さんの代わりに担当者になった方ですね」玲人の柔らかい物言いに沙希は何だか気の抜けた感じがした。「私、聞いたんですけどお二人は何度も式を挙げているそうですが、どうしてなんですか?なぜ、麻由美を誘惑するような言動をするんですか?麻由美は困っているんですよ」沙希は玲人の目を直視しながら詰め寄った。「まあ、落ち着いて下さい。冷たい飲み物でもどうぞ」そう言って玲人はアイスティを用意したが「ごめんなさい 私はそれは好きじゃないんです」はっきりと断った沙希に玲人は「そうでしたか。それは大変に申し訳ありませんでした。では、アイスコーヒーはどうですか?」「それなら」改めてアイスコーヒーを持ってきた玲人は沙希の隣に座り、そっと肩に手を置きながら「沙希さんは素敵な香りがしますね。なんと言って良いのかな・・・そう男性を包み込むような・・うん 何だか抱きしめて欲しくなる・・そんな感じです」突然の玲人の言葉に沙希は気が動転してしまい「あ あの 」「僕は沙希さんのようなはっきりとした言い方の女性が・・・。でも、麻由美さんは・・・」「あの、麻由美はちょっと大人しくて優しいんです・・」「沙希さんは優しいんですね、沙希さんの胸に飛び込んだらきっと・・・」「あ いえ その」「沙希さんは仕事も出来るんだろうな、テキパキと仕事をこなす沙希さんはカッコいいんでしょうね」「そんなことはないですけど・・」肩に置いた玲人の手がすっと沙希の腰のあたりまで下がりぐっと引き寄せた。
2013年07月17日
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沙希がアパートに着くと麻由美は堰を切ったように涙がポロポロこぼれ落ちた。しゃくり上げる麻由美に沙希はそっと背中を撫ぜながら「大丈夫 大丈夫 私がいるから」その言葉と沙希の手の温もりで緊張していた心が解れて来て、やっと話しが出来るようになり沙希にこれまでの事を包み隠さず話した。「私、もう どうしていいのか分からない・・・玲人のマンションに行ったのもあんな事になったことも全部本当のことだから・・」「ねえ あの玲人からの電話に出るのは止めようよ、声を聞くと動揺するでしょ ね 」「うん うん うん そうだよね 」まだ 泣きやまない麻由美は沙希の言葉に頷くけど「でもね でも あんなに悲しそうな瞳なんだよ・・ でね 私の言葉にとっても嬉しそうに・・・」「あのさ 玲人に騙されているんだよ、そして彰子に脅されてるんだよ。しかも それだけの事をやっちゃたんだからね」「うん そうなんだけど・・・」「もう しっかりしてよ」沙希は半分呆れながら「今ならまだ間に合うよ、最後までいっちゃたんじゃないでしょ?」「うん・・」「なら 完全に不倫ってことじゃないかも、だから彰子から何だかんだ言われても白を切ればいいじゃん」「そう・・なの・・」「マリッジブルー期間で男女とも結婚することに不安定な時の一時の気まぐれにしちゃえば」返事のしない麻由美に沙希は「式の話しは殆ど決まったんでしょ、なら電話が来たら担当者は不在ですってことにして私が受けるから、だから麻由美は近づかないように、当日も私が担当するからそれなら会うことも無いしね。」沙希は麻由美を庇いながら元気付けた。沙希は同業者から聞いた話しは全部本当の事だったと改めて思い知った。真面目な麻由美をこんな目に遭わせるなんて許せないとも。
2013年07月16日
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一旦は切れた着信音だけどまた鳴りだした。恐る恐る着信履歴を見ると今度は沙希からだった。気が抜けたように電話に出た麻由美に「ああ ごめん 何か用をやっていたの?」沙希の明るい声が麻由美の心を落ち着かせた。「ううん 出るのが遅くなってごめん。今夜は折角誘ってくれたのにごめんね」「あのね また 聞いちゃったの、あのカップルの話し」「え?」「うん 麻由美が巻き込まれていないかなってそれが心配で」沙希の話しはこうだ。式場の担当者が玲人の誘いに乗ってくるのか二人でゲーム感覚で賭けをしているというのだ。玲人の誘いに乗れば玲人の勝ちで玲人が勝てば婚姻届を出さない。玲人の誘いに乗らなければ彰子の勝ちで、彰子が勝てば婚姻届を出す。今までどの式場の担当者も玲人の誘いに落ちて玲人の勝ちとなっていたようだ。そんなゲームとは知らない担当者は玲人の誘いに乗ってしまい、彰子から玲人との関係を会社にばらすと脅される羽目に。その為に担当者は式の当日まで針のむしろのような生活をしたあげく、当日式場関係者の前で土下座をして謝る。麻由美は沙希の話しを聞いて震えが止まらなくなった。やっとの思いで掠れた声で絞り出すように「沙希 助けて」「麻由美 麻由美も同じ目に」驚きの声を上げる沙希に「うん 私が軽率だった」もう声にならなかった。「分かった 今からそっちへ行くから 待ってて」沙希の声に麻由美はただ頷くだけだった。その後からも玲人からの電話は何度も鳴り響いた。電源を切っていまえばいいのかもしれないけど、沙希がこの部屋に着くまでは電源は切れないと麻由美は耳をふさいで携帯を見つめていた。普段なら1時間も掛からずに着く距離に今夜はその1時間がとても長く感じた。沙希が来る前にシャワーを浴びてルームウェアーに着替えて待つことにした。そうでもしないともしかしたら玲人の電話に出てしまうかもしれないかも、そんな弱気な自分に少しでも携帯を遠ざけようとした。あの時の彰子の勝ち誇ったような笑い声が耳に張り付いて、ゾクゾクと悪寒が走った。確かに婚約者のいる男性とあんな事をしたら不倫って思われても仕方が無いよね。謝らなくっちゃいけないよね、私から彰子さんに謝れば少しは収まる?会社になんて言い訳しよう?言い訳? 違うよ、言い訳じゃない、始末書かな?まさか自主退社? どうしよう?
2013年07月15日
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あれからきちんと玲人から予約金が入金されていてちょっとほっとした。あれだけの式だもの相当な金額だからちょっと冷や冷やした部分もあった。疑っている訳では無いけど沙希の話しを聞いたので大丈夫かなと心配していたのだ。入金のお礼の電話を彰子にすると「ああ そうなの、それじゃあ残りは式が終わった後ってことね」「はい どうもありがとうございました。当日までお健やかにお過ごし下さい」彰子は何か嬉しそうに嫌味っぽい言い方で「ふふ ふふふ 麻由美さん 貴女、玲人のマンションに何か忘れ物しなかった?」え?一瞬、何を言っているのか分からなかったがそう言えばあの時、玲人が私の髪の毛を束ねていたシュシュを外した事を思い出した。「思い出したかなぁ・・・」何と答えて良いのか分からずに押し黙っていると「ねえ 玲人って上手でしよ。玲人のあの指先でなぞられるとゾクゾクしてこない?分かるわぁ、ふふふ 良いのよ。 ふふ でもね 玲人と私は婚約しているの、それってどういう事が分かるわよね」麻由美は真っ青になり電話を持つ手が震えて来た。「さあ どうしましょうねぇ?会社にばれたら困るんじゃないの?どう?」「あ あの えっと あの・・・」麻由美は言葉を失っていた。「いいのよ 大丈夫、きちんと挙式できればいいの。婚姻届用紙を絶対に忘れないでね ふふふふ あはははは・・」彰子は上機嫌で電話を切り、麻由美は顔面蒼白になりもう頭の中は打ち上げ花火が連打のように上がっていた。どうしよう?どうしたら?麻由美は後悔先に立たずなんて諺って本当の事なんだ、一体、私はどうすれば・・・・お昼休みに沙希からメッセで今夜一緒に食事をしないかと誘われたがそんな気にもなれずに断わってしまった。退社後重たい気持ちで麻由美がアパートに着く頃、携帯の着信メロディが鳴った。ポケットから取り出して見るとそれは玲人からだった。麻由美は携帯を握りしめたまま鳴り続ける携帯を見ていた。
2013年07月15日
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夜遅くまで二人で色々な事を話しているうちに二人とも寝込んでしまったようだ。ふと気が付くともう空は白々と明けて、明るい日差しが差し込んでいた。沙希を起こさない様にそっとシャワーを借りようとバスルームに入った。シャワーのコックを捻ると勢いよく出てくる水を頭から被り顔をパンパン叩いた。昨夜、玲人の指先が触れた首筋や鎖骨の辺りをそっと撫ぜててみる。玲人は彰子の言いなりなんだ、だから 全ての事に対して「君の好きなようにすればいいよ」と言っていたんだ。でも、玲人は彰子を愛しているんだろうか?彰子も玲人を愛しているんだろうか?そんな疑問が頭をもたげて来た。玲人が私にしたことはいったいどんな意味があるんだろうか?ただの浮気心なの?だとしたら悲しい・・・はあとため息をついて玲人から離れたほうがいいよねと自分に言い聞かせてみるけどあの悲しそうな瞳を思い出すと胸が痛くなる。彰子は玲人に近づくなと言っていたし、沙希もあの二人には気を付けたほうが良いって言っているし、私はどうしたらいいの?何度もため息をついてバスルームから出た。髪の毛を乱暴に拭いてきゅっと後ろに束ねてみる。恋は初めてじゃないんだよね、でも、初めてのようなそんな胸の苦しさに心が騒ぎだし、もしかしたら引くに引けない恋になるのかもそんな予感がした。
2013年07月14日
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少し言い淀んでから「早く分かったほうがいいから、でもね、驚かないでよ」「うんうん 分かった」「あの玲人っていう男性は彰子のお父さんを車ではねて引き殺しちゃったんだって。それ以来、玲人は彰子の言いなりになったみたい。今回の結婚式も初めてじゃないんだよね」「え?初めてじゃない?」「そう 式場を転々として挙げているみたい、それも出席者名簿は100人なのに当日は0人。たった二人だけの結婚式を延々3時間も続けるんだって」麻由美は声を失くしていた。あの時、玲人が泣いていたのはそれなの?いやまだ何かありそうかも?「それってかなり有名な話なの?」「うん たまたまね書店でブライダル雑誌をペラペラめくっていたら隣にその同業者らしき女子達が 『また 今度はあそこで挙げるんだってね、まあ 大変なことだね、でもさ お金はちゃんと支払ってくれるからいいけどね』って」「でもそれだけじゃあのカップルって分からないじゃん」「だからさ私も気になって聞いたのよ、それってもしかして高橋、林さんですかって」「うんうん」「その人たちはちょっと驚いたみたいだけど『もしかして同業者?』」って「それで」「はっきりそうだって答えたらその人たちは含み笑いをしながら『彼女の我儘って凄いでしょ。あれだけお金を使わせてそれでも足りないって顔でね。私達にとってはお客様だからいいんだけど、気の毒なのはあの男性。それと、担当者。でも、凄いよねあれだけ僕の御姫君って彼女を持ち上げていちゃつかせてね。見ていて耐えられなくなったのと、彼女の我儘に振り回されて担当者が挙式の後熱出して休んだもの』って」「そう・・・」「うん 相当 彼女は我儘なの?」「うんまあね、我儘を聞くのも私の仕事だと思っていたから聞き流している部分もあったけど・・・・」「気を付けたほうがいいよ。振り回されない様にね」「ありがとう 沙希」彰子が言っていた殺人者だって、人殺しって事はこの事だったのね。交通事故は何処にでもあることだから特別に玲人が人殺しってわけじゃない。自分にそう言い聞かせる麻由美がいた。
2013年07月14日
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はっと現実に戻った麻由美は慌てて玲人を腕で押しのけ携帯の着信履歴を見た。「誰からですか?」不安そうに玲人は訊ねて来た同僚の沙希からだ、時計を見たらもう22時を回っている。「あの 済みません 私もう帰らなくっちゃ」ブラウスのボタンを慌てふためいて掛けてスカートにブラウスを突っ込み、髪の毛はそのままでバッグとジャケットを持って玲人の部屋を飛び出した。マンションを出ながら沙希に電話した。「あ 沙希? ごめんね どうかしたの?」「麻由美 遅くにごめんね ちょとね気になる事があって」「うん なぁに」「麻由美の顧客の高橋、林カップルってねちょっと危ないかも」「え?危ないって?なに?」「うん 電話じゃちょっと話せないから・・今からじゃ遅いよね」「えっと 明日は私はオフだけど沙希は?」「あ ラッキー 私もオフ、それじゃぁ私のアパートに来てくれる?」「うん あっとちょっともう少し遅くなるけどいいかな?」「いいよ 待ってるからね」麻由美は一旦アパートに戻り着替えや簡単なスナックなどをコンビニで買いこんで沙希のアパートに向かった。沙希のアパートに着き部屋に入るとちょっとほっとした。「ごめんね遅くなって」「あれ 麻由美 今夜はどうしたの?」「ん?何が?」「髪型」「え?髪型?」「うん いつもはきちんと後ろで留めているでしょ」「ああ ごめん 慌てたから」「そう なんだかちょっと何時もと雰囲気が違う感じ」麻由美は先ほどの玲人との事を思い出して冷や汗をかいた。沙希に悟られない様にしないと。「で どうしたの あのカップルって何かおかしい事でもあるの?」「うん それがね・・・・」
2013年07月13日
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うーん R15・R18指定にしましょうか?悩みどころです。ここはその規制がどのあたりまでなのか、どこまで書き込んで良いのやら・・・以前 ちょっと書き込んだ時、使ってはいけない(?)漢字と語句を使って思いっきり却下された経験があります ^^;この続きは・・・・・はぁ ~ ~ ~
2013年07月13日
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玲人の脇を会釈をしながらすり抜けようとした時「お願いです、怖いことはしませんから嫌ならいやと言ってください」玲人が先ほどと同じように後ろから抱きすくめた。玲人の吐息がうなじを這い唇が触れるか触れないかの感触に身体が震えた。「嫌ならいやと」そう何回も言いながら玲人の唇はうなじから耳たぶにそっと少しずつゆっくりと身体と心をほぐす様に這い、麻由美は硬直していた身体の力が少しずつ抜けていった。玲人の長い指先は麻由美のきちんと閉められていたブラウスのボタンを上から一つずつ外して、下着のラインが見えるまでになった。「麻由美さんらしいね、きちんとボタンを閉めて・・綺麗だよ ・」玲人の指の動きと唇と言葉に麻由美はもう何も考えられなくなり、甘い吐息が漏れるようになった。押さえようとしても押さえられない感覚に足の力も抜け始めてガクンと膝が折れそうになった。そんな麻由美を玲人は片手で支えて背中のラインをつーっと唇を這わせた。力の抜けた麻由美の身体をそっと床に仰向けに押し倒し玲人は自分の体重を少し麻由美に掛けた。もう麻由美のブラウスは殆どがボタンを外されてブラとキャミソールが辛うじて麻由美の身体を包んでいるだけだった。麻由美の鎖骨のラインを指でなぞりながら「綺麗だ、僕が思っていた通りだよ、あの時、雨のあの日、貴女の後ろに立った時、綺麗なうなじだと思って見たんだ。そして雨に濡れた髪の毛が何とも言えない微かな香りを漂わせて・・・そのきちんと縛られた髪の毛の束を外したらきっと僕の・・・・」そう言いながら麻由美の髪の毛を束ねていたシュシュをゆっくりと抜き取り「ああ やっぱり綺麗だ」麻由美の流れる黒髪に顔を埋めた。玲人は麻由美の胸をキャミソールの上からそっとゆっくりと揉みながら、うなじから顎に頬に唇を這わせた。玲人の甘い囁きと手の動きが麻由美の感覚を麻痺させていくのが怖いくらいな喜びになりそうになったその時、麻由美の携帯の着信音が鳴り響いた。ジャケットのポケットに入っていた携帯の着信音が床に響いてより一層大きな音を鳴らしたてた。
2013年07月13日
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部屋に入ると玲人は嬉しそうにキッチンへ来るように麻由美をエスコートした。キッチンテーブルの上にはランチョンマットが二枚並べて敷かれ、少し大きめのお皿が置かれてサイドにはフォークとスプーンが並べられていた。「ちょっと待っていて下さい」そう言うと玲人はサイドカウンターの中に入り支度を始めた。麻由美が少しドギマギしながら椅子に座ると、玲人は嬉々とした様子で冷たく冷やされたパスタとほんのり温かなスープを並べ始めた。「あの・・・」「ええ 今日は暑かったから冷やしパスタにしてみました。トマトソースは嫌いですか?」「いえ 嫌いじゃありませんが、でも これは」「一人暮らしが長いので料理の腕前はそこそこ・・なんてね そんな事は無いのですが作るのは嫌いじゃないんです。麻由美さんの好みに合うと良いんですけど」よく冷やされた少し大切りのトマトがソースにマッチしていて一口食べたら、さっきまでの出来事が嘘のように消えて無くなってしまい、「わぁ 美味しい! お腹が空いていたんですよ、幸せー」柔らかな笑顔で頷きながら玲人は「嬉しいなぁ そんなに喜んで貰えるなら毎日でも作りたいな」お茶くらいのつもりが玲人の勧めるままに手作りドルチェまで食べた麻由美はアイスティを飲みながら「もう 沢山頂きました、何だか日頃の疲れが全て無くなった気分です。ありがとうございました」「麻由美さんにそう言ってもらえると嬉しいです。時々、遊びに来てくれませんか?時々では無くて毎日でも」横に座って食事をしていた玲人はそっと麻由美の肩に手を置いた。急に先ほどのエレベーターの中での出来事を思い出し、慌てて椅子から立ち上がると「あの今日は本当にありがとうございました。とても美味しかったです。もう、時間が遅いのでこれで・・」「今夜は僕が送っていきますから心配しないで」「ありがとうございます、何だか食べ逃げみたいで申し訳ないけどこれで」バッグとジャケットを取りにリビングへ行くと部屋の出入り口を塞ぐように立った玲人が「もう 帰ってしまうんですか」心臓がだんだんと動きが早くなるのが見透かされそうで、俯きながら「申し訳ありません」と消え入りそうな声で答えた。
2013年07月12日
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仕事帰りに玲人のマンションの前に居る自分が許せない気持ちと会いたいと言う気持ちの狭間で揺れ動いていた。婚約者もいる男性にこんな気持ちを抱いていいのかしら。しかも、もう式の日取りまで決まっているのに。会って何を話したらいいのかそれすらも分からない麻由美のインターフォンを押す指が震えた。ドアの前で悩んでいるとガラス越しに玲人がこちらに向かっているのが見えた。麻由美の姿を見つけると嬉しそうに小走りに来て、ドアの開閉ボタンを押した。「あんまり遅いので心配になっちゃいました、仕事で大変だったんですか?僕が無理を言ってしまって・・・」済まなそうに話す玲人に「いいえ・・・そうでは無いんですけど・・」「ならいいのですが・・・さあ、ここで立ち話はなんですから部屋へ」玲人に促されるようにエレベーターに乗り込むと、麻由美の後ろに立った玲人がそっと麻由美を抱きしめた。え? 麻由美が驚いて身体を身じろぎさせると「何も怖い事はしませんから嫌ならいやと言ってください」ま 待って、何をやってるの?玲人の手を振り解こうと玲人の手を持とうとしたとたんに反対に両手を身体の前で掴まれてしまった。「このままで お願いですから、このままで・・・」玲人の吐息がうなじにかかり、心臓が早鐘のように鳴り響きエレベーターの静かな音と動きに異次元の世界に二人で入り込んでしまったような気がした。程無くチンと微かな音が部屋の階に着いた事を知らせた。麻由美はほっとしながら玲人の手が緩んだ拍子にエレベーターから飛び出した。「あの、やっぱりここで失礼します。可笑しいです、婚約者がいる男性の部屋に行くなんて」玲人がエレベーターを降りた脇をすり抜けてエレベーターに乗り込もうとした。エレベーターのドアを手で押さえた玲人は悲しそうな瞳で「駄目ですか、一緒に食事をしたいと思ったのに・・・」「何処かのダイニングやレストランでのならまだ良いかもしれませんが、お部屋でのはちょっと・・・」「そうですか・・・でも、お茶くらいなら・・駄目ですか・・・」麻由美は玲人の苦しそうな笑顔に今の置かれている立場や彰子の存在のことが少しずつ崩れ始めていた。「あの もう遅いので少しなら・・・」
2013年07月12日
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いったい誰を?本当の話しなの?彰子は私に嘘をついているんじゃないの?頭の中にどれ程の言葉が浮かんでは消え、消えてはまた違う言葉が浮かび、私はどう返事をすれば良いのか分からなくなっていた。そんな様子の私を見ながら「まあ 玲人には近づかない方がいいわよ、と言っても挙式が済めば顔を合わせることも無くなるけど。玲人は私のものなの。麻由美さんは挙式当日までこのウエディングが無事に終わらせるように気を使ってね。それだけの話し。あっと 当日には必ず婚姻届を用意してね、必ずお願いね」麻由美が言葉を無くしてただ彰子の顔を見ている間に彰子は自分の言いたい事だけを言って席を立った。暫く呆然としていた麻由美はアイスティの氷がカランと立てた音に我を戻した。あの日、玲人が私を抱きしめて泣いた夜、玲人は何を思って泣いたんだろう?入り込んではいけない領域に麻由美は足を踏み入れてしまいそうな自分を抑える事が出来ずにいた。彰子と別れてから迷わず玲人の名刺を見ながら携帯番号を押していた。あ いけないと思った時に玲人の声が「はい 高橋ですが・・」「あ あの あ・・」「あっ 麻由美さん 麻由美さんですね」 玲人の弾んだ声が耳に届いた。「あの えっと お仕事中ですよね ごめんなさい」「いいえ いいですよ、嬉しいなあ、麻由美さんの声が聞きたいと思っていたところですから」「えええと あの・・」「今日仕事が終わったら一緒に食事をしませんか?」「いえ それは・・・」「ああ 彰子の事を心配しているんですか?大丈夫です、彰子は夜は家から出る事が出来ませんから」「え?」「そうと決まれば、早く仕事を片づけちゃいますから、あの、また先日と同じ時間に僕の部屋へ来てくれませんか?いいですよね」「いえ それは・・」「大丈夫ですから、麻由美さんの嫌がる事はしませんから、お約束します。では、お待ちしています」麻由美は携帯を握りしめたままその場から動けなかった。
2013年07月11日
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玲人の事が気になりながら2週間程経った時、彰子から会いたいと会社に電話があった。指定されたホテルのラウンジへ行くと、既に彰子が窓際の席に座り中庭を眺めている姿があった。何時ものようにお嬢様風のワンピースに縦ロールの長い髪を揺らし、私を見つけると嬉しそうに「ここ ここよ」と可愛らしく手を振った。目の前のコーラフロートのアイスを突きながら「貴女も何かお願いして」私は迷わず「アイスティを」とフロアの店員に頼むと「え? アイスティ?」彰子は目を大きく開けて私を睨むように見た。どうしたんだろう?私何かいけない飲み物を頼んだのかな?って思う間もなく「どうしてアイスティなの? 玲人の事が好きになったから? 玲人のマンションに行ったわよね」は? 「あの 私はアイスティが好きなんですけど、自分でも部屋で作って飲みますから」「ふーーん あっそ。玲人ねアイスティが好きなの、でも、私は嫌いだから私の前では絶対に飲まないの。玲人は私の言う事は何でも聞いてくれるの」少し舌足らずのような言い方で甘え口調の彰子は玲人は自分の僕とでも言うように上から目線で話した。「麻由美さんが玲人の事を好きになっても駄目よ」いえ、私はそのような事はと言いかけたら「麻由美さんって素直なのね、顔に出ているわよ、玲人の事が気にかかるって。そうよね、玲人は身長は高いし、スタイルはいいし、顔だってね。玲人のマンションに行ったでしょ、名簿を取りに」「はい」「あの通りお金持ちだし、何でも女の子が欲しい物は何でも持っているもの。でもね、玲人が優しくするのは私だけ、どうしてか分かる?」「いえ」「うふふ、玲人から聞かなかったの?そう、まあ 他人に言えた話じゃないかも。玲人はね人を殺したのよ、殺人者なの」私の頭は殴られたような衝撃が走り、彰子が勝ち誇ったように笑う姿を何も言えず呆然と見ていた。
2013年07月11日
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ひとしきり涙を流した玲人は顔を麻由美に見せない様に下を向きながら身体を離した。「すみません、驚かせてしまって」「い いえ」麻由美は何か深い訳があるような気がして何も聞かないで、「では、書類をお預かりしていきます。後日、最終的なご予算の計算書をお渡ししますので予約金のご入金をお願い致します」なるべく平静を保ちながら仕事口調で言葉を繋げた。玲人は顔を両手で覆ったまま黙って何度も頷いた。ドアを開けて部屋を出る時にほんのちょっと振り向いて玲人の様子を伺ったが、彼はまだ顔を手で覆ったままうなだれていた。エレベーターに乗り込み先ほどの玲人に抱きしめられた身体を両手で抱きしめて玲人の身体の温もりを確かめている自分にドキッとした。爽やかなソープの香りと筋肉質の身体、長い腕と綺麗な指が私を抱きしめたんだ。その感覚が私の意識をいやが上にも玲人を一人の男性として近づけることになった。いったい何があるんだろう?顧客のプライバシーには首を突っ込まないのが会社の規則。でも、最初から何となく感じていた違和感が玲人の涙に繋がっているんじゃないかと考えてしまう。アパートに戻ってからもベッドに入ってからも玲人の事ばかり考えてしまい、「あああ これじゃあ 寝不足で明日の化粧のりが悪くなりそう」枕を抱きかかえてため息をついた。次の日、何となくぼーっと仕事をこなし、上司には玲人の出席者の件は玲人の言葉通りに伝えた。誰もそれぞれの事情があるので深くは詮索しない事がこの仕事をスムースに終わらせることが出来る手段なので上司も「ああそうか」頷いて書類を事務に回した。
2013年07月11日
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名簿の入った封筒を渡されると「確認をさせて頂きますね」と封筒の中の名簿を取り出して、広げて思わず目を見開いてしまった。出席者は100名で食事も一番豪華なものを希望しているのに、一人の名前も書き込まれていない。いったいこれはどうしてなの??私は何と言って良いのか一瞬戸惑った。まさかこれまでの契約は全て破棄ってことなの?何なの?私は名簿と玲人の顔を交互に見てしまった。玲人は私の驚く様子を眉一つ動かさずに見ていた。そして、すこし自嘲するような笑いを浮かべて「出席者はゼロ人です。でも食事はお願いします。テーブルにはネームプレートは置かないでください。しかし、食事は前菜からきちんと並べて下さい。乾杯もしますからブライダルシャンパンは用意して下さい」麻由美は何も言えずに呆然と玲人の顔を見ていた。暫く言葉を失い黙り込んでしまった麻由美「えっと 今日はエイプリールフールだったかな?」沈黙に耐えかねた麻由美のこんな間抜けな言葉に玲人はプッと噴き出して、笑いに耐えないという表情をしたかと思うとお腹を抱えて笑いだした。笑いが治まると「いやぁ 久しぶりに大笑いしました。ありがとう」え?「うんうん やっぱり僕が思っていた以上の人だ」そう言いながら急に私を抱きしめた。えええ いや ちょっと待ってくださいと言おうとしたら「お願いです、少しの間でいいんです、このままでいて下さい」玲人は私を抱きしめて首筋に顔を擦り寄せて少し小刻みに肩を揺らした。あ 泣いているんだ。首筋に玲人の流す涙が伝わり私は成すすべも無く抱きすくめられていた。
2013年07月10日
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出席者の名簿を渡したいからと玲人から会社に電話が入った。こちらに持って来てくれる事になっていたのに玲人のマンションまで来て欲しいと言う。こんなお客は良くあることなので指定された時間に出かけることにした。「僕の部屋はあの名刺に、だから、分かるよね?」玲人のマンションは閑静な住宅街に建つ知る人ぞ知る高級マンションだった。この辺りは夜も8時を越えると人通りがまばらになり、お洒落な街灯が麻由美の影を長くした。オートロックのマンションで部屋の番号を押すと、玲人が「どうぞ」と言うが早いかマンションの入り口のドアが開いた。偶数階と奇数階ではエレベーターが違うので名刺で部屋番号を確認してボタンを押しながら、こんなマンションに住んでいるんだもの彼女の我儘なお願いなんて簡単なことなんだろうなと考えていた。部屋の前に立ったとたんにドアが開き「さあ どうぞ お待ちしていました」玲人が嬉しそうな顔で私を部屋に招き入れた。通された部屋は南に面した大きな窓がある12畳ほどのリビングで洗練された短毛のラグの上にソファとガラス天板のテーブルが置かれていた。玲人に促されるままにソファに座り、書類を待つと「麻由美さんはアイスティは御好きですか? 丁度、今飲もうかなって思って作っていたんですけど宜しかったら一緒に」そう言って玲人はフロートスタイルのロンググラスに角氷を程良く入れてよく冷えたアイスティを持って来た。甘味は余りにも私好みだったので「わぁ美味しい!!生き返るわぁぁ!!!」玲人の前だということも忘れて思わず大きな声を上げてしまった。あっと気が付いて真っ赤な顔になりながら口元を押さえたけどもう遅かった。くすくす笑いながら玲人が「うんうん そういうところがいいね。仕事を離れたら麻由美さんはきっととても愛らしくて目が離せない女性だろうな」え?そんな言葉を投げかけられたら勘違いをしてしまいそうになる。目の前の人には婚約者がいて私の顧客様。頭の中が真っ白になりそうになりがら、仕事仕事と仕事をしなくっちゃと気持ちを整えた。
2013年07月10日
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色々な細かな段取りをするために暫く時が経って二人が式場に顔を見せた。相変わらず彰子は玲人にべったりと寄り添い、片時も離れたくないといった風で玲人を見上げる瞳は何時ものように潤んでいた。そんな二人を見ながら二人に気付かれないようにほんの少しため息をついて、ファイルを見ながら話しを進めた。彰子はこの色では無くてこっち、この花は嫌い、照明はこうして等、自分をよりお姫様のように仕立てるのに夢中になった。私が話しを聞いている間、玲人はにこやかな笑顔で終始頷いて「きっと そのほうが君に似合うよ」「僕の姫君は何を身につけても素晴らしくてみんなが言葉を失うよ」よくもまあそんな浮ついた言葉が並べられるものだと感心してしまい、聞いている私の方が顔が赤くなってしまいそうになる。彰子は上機嫌で玲人の胸に顔を押し付け「私ね、玲人の・・・ 玲人だけのお姫様でいたいの」ああ 分かっているよと玲人が彰子の肩を抱きながら片方の手で髪の毛をそっと撫ぜる姿に私は早くこのカップルの仕事を終わらせたいと真剣に思った。大体のプランが決まり後は出席者の名簿を頂き、席順を決めるまでになりちょっとほっとした。それは後から届けてくれることになりやれやれと肩の荷が下りた気がした。帰り際、玲人が私に彰子には内緒でそっと「これを」と名刺を差し出した。最初に会った時に頂いているのでと断ろうとしたら「いえ これは・・・」言い淀んだ手に持つ名刺の裏には玲人の個人のメールアドレスや電話番号や住所が手書きで書きこまれていた。え? 聞き返そうとした時、彰子が早く早くと玲人を急かして駐車場へ向かったので私は手渡された名刺を持って二人を見送ることになった。どうしてなの? 仕事での関係でしか無いのになぜ私にこんな名刺を?
2013年07月10日
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迷惑じゃないかと言おうとした私の言葉を遮って、私を助手席に乗せると「いやあ 彰子は悪気は無いのですがちょっと我儘で申し訳ありません」え? 「そこが可愛いところでもあるんですけど・・・」はぁ 何だノロケを聞かせるために車に乗せたの??「こんな事を女性にお聞きするのは如何なものですが、麻由美さんは御幾つですか?」「え えっと はい 28歳です」「えええ? もっとお若いかと思っていました」「いえ そんな」「説明を伺っている時はとてもしっかりとした方だと思っていましたが、普通に話してみると愛らしい」「え?? 愛らしい?」ふふと笑って玲人は車をスタートさせた。車内では何気ない会話が途切れそうになることがちょっと怖くて、冷や汗を沢山かきながら話しのネタを探した。ドギマギする心臓を見透かされそうでうつむき加減になった私に「何だか以外ですね、そんなに緊張しなくても大丈夫ですから」そんな事を言っても無理だって、緊張するよ、仕事なら幾らでも話しが出来るのにとそんな事を考えているうちにアパートに近くまで来た。慌てて角でと車を止めてもらい、車から降りてお礼を言って頭を下げると「楽しかったですよ、また こうしてお話をしたいと思いますけど・・・駄目でしょうか?」え??どうして?婚約者がいるのに?私が答えに詰まっていると「また、連絡させてもらいます。その時はどうぞ宜しくお願いします」走り去った車のテールランプを見ながら暫く立ち尽くしていた。いったいなんなの?私をからかっているの?いやぁ あんまり暑いのでダラUPです ^^;
2013年07月09日
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猛暑、酷暑に続いて高温注意報30℃超えの日々が続き少々バテ気味な鈴さんち昨日も36℃ 今日も36℃かつてない暑さに温度計が壊れたんじゃないかと心配するばば様「おい あんた なんでこんなに暑いずら?」うーーん お日さまに聞いてみるしかないかも?「おい もしかしたら あれかも?」ん? あれって?「うん 富士山が世界遺産に登録されて沢山の人が押し寄せたからかも?」へ???「うん 富士山が怒っているずら!!!」いやぁ そんなことは無いと思うけど・・・「いや 絶対にそうずら!!! わしは静岡県民だけど頂上まで行ったことが無いずら!」そうだね 今度 ドライブに行こうね「いや 今は富士山と話す事はないから行かないずら」は?? 話す事はない???「うん まだ あっちへは行かんずら!!!」いや あのね 富士山は霊山って言うけど魂が抜かれる事は無いから「こんなに暑いのは富士山が怒っているから、だから今行ったら連れてかれるずら!!!」まあね お盆には登らないほうがいいけど「おい あんた 富士山が大人しくなったら5合目まで行く」はいはい 暑さが少し和らいだら行こうね昨年は30℃を越える日なんて殆ど無かったのに、二日連続で36℃の暑さ水分補給をかなり気を付けてやらないと大変な事に今日は余りの暑さに仕事にならず、PCで遊んでいます。お陰で「ブルーラグーン」をかなり書き込むことが出来ました。何だか話しがまとまらない・・・大丈夫なのか????暑さのせいでハチャメチャな展開になりそう・・・ガンバ!!!
2013年07月09日
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化粧室から戻って来た彰子が私達の様子を訝しげに見て、「なんのお話なの?」「いやね ネームプレートの話だよ。スタッフ全員が名前だろ、どうしてかなってね」「ふーーん で どうしてなの?」「スタッフと我々との距離を近づけるためなんだよ、僕の御姫君が望む事でも何でも言う事が出来るようにね」「そうなの? 私 思いっきり我儘言っちゃうかもね ふふ」彰子は玲人の手と自分の手を絡めて振りながら勝ち誇ったような顔で私を見た。私はにこやかな笑顔でなんなりとお申し付けくださいと言いながら頭を下げた。内心では何と表現してよいのか分からない憤りのようなものが渦巻き始めていた。イベントも盛況のうちに終わり、それなりの成果を出せたので私としては満足な一日だった。ほっとしながら帰路につくと車が私の横で急停車した。「麻由美さん」車の窓が開き運転席から身体を乗り出して玲人が私に声を掛けた。「あ 高橋様」「あれ?違うでしょう。玲人です」「あの その・・」「先ほどの話しをもうお忘れになったんですか?」「申し訳ありません、えっと 玲人様」「いやだな 様はやめて下さい」「すみません、…れ 玲人さん。 あの どうかしたのですか?」「いや 今 お帰りですか?」「はい そうですが」「私が送っていきましょう」「え? いいえ 結構ですから。あの そう遠くないので」「彰子はもう送り届けましたから気になさらないで、 さあ 乗って」玲人は車から降りて助手席のドアを開けて麻由美を促した。
2013年07月09日
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週末のイベントは社員総出で接待にあたり、一人或は一組でも確実に成約することを目標に動き回っていた。私は何組かのカップルの仮契約までいっていたので後はそれを確実にすることで、余り焦ることも無く会場のあちらこちらを巡回するのに留まっていた。先日のあの玲人と彰子の二人も早々に会場に姿を現していた。彰子は常に玲人の腕を取り肩に頭をもたげるようにコンサートの音楽に身を委ね、バイキングでは玲人に自分で取りよそった果物やケーキなどを口元に運んでいた。私は見て見ぬ振りをしながら会場を後にした。何組かのカップルとプランニングルームで本契約を済ませてちょっとほっとしていた時だった。玲人が「あの 宜しいですか?」と声を掛けて来た。私はにこやかに今日のお礼を言いながらさりげなく化粧室へ行っているという彰子の様子を尋ねた。「このようなパーティーに出席することが出来て彼女は大変に喜んでいます。実際に模擬ウエディングやライブ演奏などを見たり、食事を食べたりすることが出来て、こちらは流石だと感心しました」「お誉めにあずかりましてありがとうございます」「それで ちょっと気になったのですが、どうしてスタッフの皆さんはネームプレートに名前だけなんですか?名字は?」「それはここに来て下さる皆さんに私どもが名前で接することでより身近に感じて欲しいからです。そのほうが色々と相談出来たり、我儘を言ったりすることができるでしょう。お式までは不安な事があったり、当日になってああすれば良かったとかこんなはずじゃなかったとかそのような事が出来るだけ無いようにです」「そうだったんですか、いやぁ うんうん いいなぁ。それでは僕の事も名前で呼んでください。苗字に様を付けて呼ばれるよりもぐっと親近感が湧きますからね」「え?」「麻由美さん、宜しく。さあ 呼んでください 玲人って」「は?」「さあ 早く 玲人って、麻由美さんの声は何度聞いても良いんですよ。なんて言うのかな、耳に心地よいのですよ」「あ あの」「いやだな さあ 早く」「れ・・ 玲人さん・・」「うんうん そうそう いいなぁ」
2013年07月08日
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