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原田マハ著「ロマンシェ」は画家や絵画をテーマにした著書とは一味違う、ラブコメディ要素
たっぷりの小説です。
主人公の「乙女心」を持つ「美智之輔君」がパリで画学生として奮闘しながらも運命に導かれるように超人気小説の作者ハルさんや彼女の友人ムギさんと出会い、ムギさんにハルさんが匿われているリトグラフ工房「IDEM」に連れて行かれることで物語は大きく展開していきます。
リトグラフ工房は小説上の架空のものと思っていましたが、調べてみると実際に
「IDEM PARIS」が存在していて驚きました。
版画技術のリトグラフは18世紀には既に確立されていたようです。そして「IDEM PARIS」は
1881年にリトグラフのプレス機を設置するために誕生した印刷工房で、「ピカソ」「マティス」「シャガール」など名だたる芸術家や映画監督の「デイヴィッド・ローンチ」が「IDEM PARIS(70年代からは名称はムルロエ工房)」でリトグラフを制作したようです。
今まであまり意識したことがなかったリトグラフを手持ちの画集で見てみると、青色と黄色のコントラストが印象的なマティスの「イカロス」がありました。
シンガポールの紀伊国屋書店で購入した「ギリシャ神話」の中に
「太陽に近づきすぎたイカロス」というタイトルで5ページで詳細が書かれています
。
『クレタ島に君臨した「ミノス王」に仕えていた大工のダイダロス(巧みな工人)はその巧み過ぎる技術から王の座を狙っているという風評を立てられ、息子の「イカロス」と共に幽閉されてしまいます。
幽閉された場所には鳥の羽がたくさん舞い込んでいたためダイダロスは蝋を使って翼を作り、そこから逃げ出すことを考えます。無事父子の翼を作り終えイカロスに「空の中ほどを飛ぶのだよ。低すぎると霧が翼を濡らしてしまうし、高すぎると太陽の熱で蝋が溶けてしまうから」と注意を与えます。しかしその警告も空しく自由に飛べる自分に舞い上がってしまったイカロスはどんどん高く飛んで行きます・・。
ダイダロスはイカロスの遺体を落ちた近くの島に埋め、その島をイカリア(エーゲ海にある島)と名付けました。その後ダイダロスはイタリアのシチリア島に行き、そこに「アポローンの神殿」を建て、その翼を捧げました』
ギリシャ神話の時代は「プロメテウスの火」などのように火や太陽といったものを神聖なものとしてとらえていてこのような教訓話になったのかなと思います。
肝心の「ロマンシェ」は乙女心を持つ美智之輔君の「高瀬君」への思いは実らなかったものの、原田マハ氏らしい芸術の話もちりばめられ、ワインの話もあり、人間の繋がりや温かさに感動するエンディングでした。
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