星の国から星の街へ(旧 ヴァン・ノアール)

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2024.03.28
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カテゴリ: 読書 原田マハ
 ​「原田マハの印象派物語」の最後を締め括るエピソード7は「ゴッホの物語」でした。


アルル市立病院
サン=ポール=ド=モーゾール療養所) )の庭          1889年        



 『サン=ポール~療養所の小路に這いつくばって、フィンセントは長い間見つめていた。やがて鞄からスケッチブックとコンテを取り出すと、紙一杯にアイリスの姿を写し取った。このアイリスを、とフィンセントは、一心に手を動かしながら思った。テオに贈ろう。結婚したばかりなんだ。何も贈ってやれないけれど、このアイリスを花束にしてこの場所から、弟のもとへ・・」

 一連のアイリスの絵はアルル近郊にあるサン=レミ療養所に翌年5月に移ってから描かれた作品だと思っていました。調べてみると確かにテオが後にゴッホの絵のために尽力したヨーと結婚式を挙げたのは1889年4月18日だそうです。療養所での生活はその年の3月頃までは絵を描く事も許されなかったようなので、やっと許可が出て結婚の準備のために忙しくしているテオからの手紙も途切れがちで孤独感を募らせていたゴッホがありったけの思いを込めて一気に描き上げたのかと想像します。

 この絵についての後日談が「近現代芸術百科事典」に下記ように説明がありました。

《アイリス》は1889年9月に開催されたアンデパンダン展に《ローヌ川の星月夜》とともに展示された。

この絵を最初に所有したのはジュリアン・フランソワ・タンギーである。彼は画材屋兼画商を営んでおり、ゴッホは彼を3度モデルにして描いたことがある。1892年にタンギーは《アイリス》を、ゴッホの最初のファンの一人であった批評家のオクターヴ・ミルボーに300フランで販売。2012年にロサンゼルスにあるJ・ポール・ゲティ美術館が所有している。


 1890年7月のゴッホの葬儀にも参列した僅かな人達の一人でゴッホを経済的にも支援し理解者であった「フランソワ・タンギー(通称タンギー爺さん)」がこの絵を所有し、そして引き継がれていった経緯には心温まる物があります。


            1890年

ところで私がメトロポリタン美術館で一目惚れしたこの花瓶に活けられたアイリスは年代から見てもかサン=レミで描かれたと思いますが、現在この美術館が所蔵する経緯は?と興味が沸きます。

 この絵と同じサイズのポスターをシンガボールの美術館ショップで見つけ15年ほど壁を飾っていました。本帰国してそろそろ新しいポスターを買って壁にと思っていますが、どちらのアイリスにしようかと思うとやっぱり私にはより静寂を感じる花瓶の方かなぁと・・。





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最終更新日  2024.04.01 09:30:30
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