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2022.07.02
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テーマ: 読書(8449)

本のタイトル・作者



無理ゲー社会 (小学館新書) [ 橘 玲 ]

本の目次・あらすじ


はじめに 「苦しまずに自殺する権利」を求める若者たち

1 「自分らしく生きる」という呪い
『君の名は。』と特攻
「自分さがし」という新たな世界宗教

2 知能格差社会
メリトクラシーのディストピア
遺伝ガチャで人生が決まるのか?


絶望から陰謀が生まれるとき
「神」になった「非モテ」のテロリスト

4 ユートピアを探して
「資本主義」は夢を実現するシステム
「よりよい世界」をつくる方法

エピローグ 「評判格差社会」という無理ゲー

あとがき 才能ある者にとってはユートピア、それ以外にとってはディストピア

引用


知能による選別を否定すると、その空白を、性格(頑張っているか、いないか)による選別が埋めることになる。テストの点数で序列化されるのと、性格(人間性)を否定されることの、どちらがより残酷だろうか。


感想


2022年165冊目
★★★

冒頭から暗澹とする気持ちになる本。
さまざまなことに言及し、そして最後まで救われる気がしない本。

「はじめに」で紹介されているのは、消極的な自死を選択する人々の声。
夢も希望も持てず、日々の暮らしに精いっぱいで、自分の死を自分で決めたいと望む人たち。

この世界の理不尽。
それに無理やり参加させられて生きていかなければいけない苦しみ。

絶望のなかにあって、トランプ大統領は「下級国民の王」だったのだ、という指摘に、なぜ彼があそこまで支持されたのか分かった。
白人至上主義、というと上から下を見ているような気がするけど、違う。
それは「黒人よりも虐げられ、最底辺にいる自分たち」。


公正であるべき世界が公正ではない。
だから正す。無秩序に正義を。
世界は変えられないから―――自分の認知を。
それこそが世界を歪めていることになっても。

なんとなく、世界は「冨のベルカーブ」(中間層が一番厚くなっている形、正規分布)なのだと思っていた。
平均の人々がもっとも多く、そしてその付近にひとが集まっているのだと。
でも、世界は年を経るごとに「ロングテール」(ベキ分布)になっていくのだという。
後期近代では、中流が崩壊し、GAFAのような極端な金持ちである「上級国民」と、底辺に集まる「下級国民」に二分される。
だから今、富裕税を課すように言ってるんだな。なるほど。

著者が紹介しているアメリカの歴史学者(ウォルター・シャイデル)は、平和が続くと不平等が拡大する一貫した傾向があり、平等な世界をもたらすのは「戦争」「革命」「統治の崩壊」「疫病」なのだという。
世界をめちゃくちゃに破壊するようなことがないと、リセットは起きないのか。
そんなことでもないと、スクラップ&ビルドができないなんて。
進化してきたようで、進歩してきたようで―――何も変わらないのか。

今、ウクライナ侵攻とコロナにより、世界は変わりつつあるのかもしれない。
著者はコロナは世界を変えるには弱すぎたという。
不平等は広がり、絶望が蔓延する。

私はいつも、村上龍『希望の国のエクソダス』の一文を思い出す。

この国には何でもあります。ただ、希望だけがない。




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最終更新日  2022.12.04 00:01:31
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