Road to an Agriconsul

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2007年04月23日
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カテゴリ: 村のこと

 否、迫っているというよりは我が家はこの山の斜面に建っているといったほうが正確なのだろう。だから毎朝玄関を開けた私の目に飛び込んでくる色は、この山の斜面を覆う照葉樹の森が発する緑色である。

 4月も中旬となり、新緑の季節を迎え、森の草木が萌えている。晴れ上がったやわらかい朝日の光で輝く若葉の色も美しいが、静かな雨が降る中にぼやけて見えるその色も美しい。だからこの頃はどんな天気であっても、朝一番、玄関のノブをつかんで、グイッと扉を押し開ける瞬間がとても気持ちいいのである。
 また家族がまだ寝静まっている穏やかで少しひんやりとした室内の空気と、それとはまったく異なる屋外の空気とのギャップを体感するのも趣がある。

 確かに、夏冷房が効いた室内から真夏の空気に飛び出すとき、また逆に冬暖房の効いた建物から、冷たい外気にいきなり触れるときも空気の差を感じるものであるが、毎朝私が感じている空気の差には、明確な差があるにも関わらず、まったく不快感を感じない。

 それからその空気の差は、私に「空気には匂いがある」ということも気づかせてくれた。
 今の季節、朝の外気にはやわらかな甘い香りが絡みついている。新島へ来た当初、それが何のにおいなのかよく分からなかったが、今では一瞬で「トベラ」の花が発するにおいであることがすぐわかる。

 信州で育った私は、塩害にも強く海岸の近くに生えることができる「トベラ」という植物を知らなかった。だから倒卵形の光沢のある葉の内側に白い可憐な5弁の花をつけるのを見たときには少なからず感動した。そしてその可憐な花がこれほどに強い香りを放つとは思いもよらなかった。
 島の人の中には、このトベラの花を使って香水をつくる人もいるそうだ。私はそのつくり方を知らないが、花ごとオイルに漬け込んだりするのだろうか・・・・。

 またこの「トベラ」という植物が、魔よけの効果があることも新島へ来てから知った。
 新島では毎年1月24日に「海難法師の日」というのがある。詳しいことはここでは記さないが、「海難法師」とは伊豆七島に伝わる幽霊、妖怪の一種で、その妖怪が島内を徘徊するというその日は、みな暗くなる前に家の中にこもり、一歩も外には出ない。当然消防団による夜警もその日だけは休みとなる。
 私にとってはとても奇妙な風習と感じるのだが、そのときにはどの家でもこの「トベラ」を玄関口などに挿して、魔よけとする。

 トベラの花期が終わる頃、目の前の山の緑はその色を増し、初夏の太陽が照りはじめる季節になっているだろう。そしてまた今とは違う匂いの空気が、毎朝私を包み込んでくれるに違いない。
 自然の移り変わりを体に感じながら過ごせることも、新島暮らしの楽しみである。

トベラの花
<トベラの白い花>







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最終更新日  2007年04月24日 07時44分41秒
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