1年前にNHKスペシャル「ネクストワールド第2回 寿命はどこまで延びるか」が放送されました。
それまでの研究で病気と事故がなければ人間の寿命は120歳~140歳といわれていました。番組の中では将来の夢として、68歳の夫人が10年間意識不明の状態になり、目が覚めると同年齢の人々が若返っており、子どもを生めるようになっているという内容が流れました。
その若返りの薬の実現性がある薬物によって実現に近づいたという内容です。
その薬物はNMNと略されるニコチンアミド モノヌクレオチドです。
2015年4月1日からサプリメントとして販売が始まっています。60粒で25,380円1日良が2粒ですので、1日約800円です。
現在のところ、MNMの効果が判明しているのは、マウスの腹腔内に投与して、高脂肪食で血中NAD濃度が正常レベルになり、高脂肪食によりグルコース負荷後の高血糖とインスリンレベルの低下が正常に戻ったこと。
腹腔投与により、神経幹細胞の数が回復したこと。
糖尿病の回復にはサーチュイン遺伝子の活性化が関与したことが示唆されています。
文句はなさそうですが、 薬としての観点から見るとまだ、効果があるかどうかは不明で、ヒトで臨床試験を行うレベルではなさそうです。
理由は
1. 動物で効果があったのは腹腔内投与であるということ 経口投与だと消化管酵素で分解を受ける可能性があります。
2.人間の2型糖尿病と高脂肪食によるマウスの糖尿病の相同性 マウスの効果があったが、人間では全く効果がなかった新薬開発業務に関わったヒトなら結構あることはご存じだと思います。
3. 思わぬ副作用が発生する可能性があること。特に長期投与によって。
ナイアシン製剤にはトリグリセライドの低下作用があり、HDLコレステロールを上昇する効果があるので、脂質異常症の適応を持っています。しかし、紅潮という副作用が長期に投与するとかなりの頻度で出現します。そのまま放置しておくと黄疸を始めとする肝機能障害、視力障害、高血糖の悪化、痛風を合併している場合には痛風の悪化が出ます。
NMNはナイアシンが活性化する前段階で生産される合成中間体です。 長期投与によってナイアシン製剤の様な副作用が出る可能性がありますし、中間体が人為的に増加すると、体内では恒常性を保つためにナイアシンの吸収低下や活性化ナイアシンの消費量の増加が起こる可能性があります。
あとは、若返る薬というのは、老化というヒトの個体数調整を破綻させるので、人口爆発を起こすか、ますます高齢化(現在の高齢化とは違います)が進み、若年層の仕事がなくなり、国として破綻するかを想像しますので、あんまり欲しいものではありません。
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