アラ還の独り言

アラ還の独り言

2020年09月14日
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カテゴリ: 制がん剤
TAS-118はS-1にロイコボリンを配合した薬剤です。S-1はフトラフール(5-FUのプロドラッグ)に5-FUの分解阻害剤、5-FUの消化管における活性化阻害剤を併用したものです。ロイコボリンは5-FUが殺細胞効果を発する際に必要な化合物ですから、5-FUが制癌作用を発揮するために必要な化合物を全て配合した薬剤と言えます。ちなみに5-FUの消化管における活性化阻害剤は腸管や口内で5-FUが殺細胞効果を示して、下痢や口内炎の発現を抑制する化合物です。もともとはアロプリノールが5-FUの口内炎を抑制することから発想して化合物を最適化したものです。

今はまだ発売されていませんが、胃癌に対する第Ⅲ相試験は終了しています。結果は全生存率の中央値のS-1よりも統計学的に有意な延長が見られていますが、副作用は下痢と口内炎が増えていると言うことです(SOLAR試験)。

こうなると5-FUの消化管における活性化阻害剤の量がS-1と同じでいいのかという問題が発生します。5-FUの消化管における活性化阻害剤の作用がロイコボリンを配合することによって不足していると読めるからです。配合比を最適化するのは、現在検討されているような2剤併用を単剤にするだけの併用剤とは異なり、配合する成分が一つ増えるごとに最適化が必要になるという証拠の一つかと思います。

実際問題としては、臨床的に配合比を決めることは第一相試験で行うことになります。主要評価項目を下痢、口内炎において、5-FUの消化管における活性化阻害剤の量を変化させて見ると言うことになりますが、これは発生率の絶対値を考えるとかなりの例数が必要になると思われます。実現性は低そうですね。

これはやはり、5-FUと5-FUの分解阻害剤を一つの化合物として、5-FUの消化管における活性化阻害剤とロイコボリンを配合する事によって、配合比の検討数を減らすことがいいのかもしれません。

参考
Abstract LBA-003
A phase III study of TAS-118 plus Oxaliplatin versus S-1 plus Cisplatin as first-line chemotherapy in patients with advanced gastric cancer (SOLAR study). / Yoon-Koo Kang, et al.
https://www.oncotribune.com/report/esmo-gi2019/lba003.html(日本語の学会速報)





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最終更新日  2020年09月14日 12時52分31秒
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