アラ還の独り言

アラ還の独り言

2021年01月16日
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カテゴリ: 妄想
現役の頃は 一塩基多型 と言えば薬物の分解能で非常に注目されていました。酵素の設計図であるDNAあるいは細胞に働きかけるRNAの一塩基が異なるだけで、薬物分解酵素の活性が変わり、きちんと働かない、全然働かないというのが一塩基だけを測定すれば分かるということで、副作用の発生や効果が出るかどうかの一つの指標として注目されていました。




現在ではその多型の集まりを polygenic risk score として複数集めて、 疾患のリスクファクター として扱おうとしています。当初は疾患と遺伝の関係を検討するために研究を行っていたようですが、一塩基多型の中には遺伝と関係のないものもあることがわかり、遺伝性よりも 早期にリスクを明らかにして、予防に役立てる ようになっています。

しかし、この polygenic risk scoreと疾患の関係 に関しては、個々の一塩基多型がなにを生んでいるかに対しては検討が行われていません。現在では個々の一塩基多型ではリスク評価に使えるほど高い関係性を持つわけではありませんが、複数の一塩基多型を持つ人を疾患リスク群として取り上げる形になっています。その状態でも、社会的な要因や身体的な要因を凌駕するようなリスク検出因子にはなっていません。

これは身体的な要因が一つの代謝異常では説明できないことと関係があるのかもしれません。一塩基多型では何らかの酵素活性が変化しているはずです。しかし、polygenic risk scoreに含まれる一塩基多型で実際に何が起こっているかに関しては明らかになっているものは薬物代謝酵素関連を除けばほとんどありません。



polygenic risk scoreは他のリスク因子と重なっているのではないかという疑問です。

睡眠時間はいろいろな病気のリスクファクターとして取り上げられています。今日目にした 「コロナ禍ウシ年の睡眠“ニューノーマル”」 という記事でもCOVID-19感染と睡眠時間が取り上げられています。この中にこんな文章がありました。
睡眠習慣にも変化があったと言われているんだよ。例えば、ロックダウン(都市封鎖)や自粛生活が人々の睡眠にどのような影響を及ぼしたのか、日本も含む40カ国、1万人以上を対象にオンライン調査が行われたんだけど、コロナ感染拡大前に比べて、睡眠のタイミング(寝つき時刻と覚醒時刻の中点)は平日には50分、休日には22分遅くなったそうです。つまりかなり夜型生活になったんだね。


さて、睡眠のタイミングが平日では50分、休日では22分遅くなったという所に引っ掛かります。
50分が(感染後の睡眠タイミングの平均)ー(感染前の睡眠タイミングの平均)なのか、個々の人々の睡眠タイミングの変化の平均値なのかで意味が大きく変わるからです。

オリジナルの文献を読めばいいのでしょうが、そこまで興味がないので、当たっていません。文献のアブストラクトを書くのとこのような記事を書くのでは、データの扱いが違うという意見は重々承知のうえで書きます。アブストラクトや解説記事にする際に、いろいろなものが捨てられていくのはわかりますが、その取捨選択の際には結論に関する方法論に関しては捨ててはいけないと言う事です。この記事では対象や方法が記載してあります。代表値(睡眠のタイミング)に関する解説もあります。しかし、差が何を表しているかに関して私のように疑問を抱いた場合に答えてくれません。夜型にシフトしているという結論が信じられないのです。 へんかな?

最後は、 細胞内の脂質交通を追跡できる実験手法を開発~ミトコンドリア内膜における脂質のフロップを計測することに成功~ という山形大学の研究です。




脂質二重膜の存在は私が現役の時でも常識でしたが、実際にどのような働きをしているのかについては仮説があたかも事実のように語られる、物理学で言えば理論物理と実験物理の区別がついていない状態でした。

今回の研究は脂質二重膜の動きを追うことができるという研究です。

実験物理学で理論物理学の仮説で始めて立証されるように、あるいはその仮説が間違っていることが分かるように生物学でも測定法が進化することによって今まで、事実のように語られてきた仮説が間違いであったことが証明される可能性もあります。

これから期待ができるツール を我々は手に入れました。





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最終更新日  2021年01月16日 13時56分36秒
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