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2026.05.31
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 『手のひらの京』綿矢りさ(新潮文庫)

 京都の三姉妹の話であります。
 舞台が京都で三姉妹とくれば、谷崎潤一郎の『細雪』や川端康成の『古都』の話が頭にちらちらと浮かぶ、あでやかな古都の四季の移ろい、平安情緒絵巻の物語かなと、まー、実際は、そんな単純な話でもなかろうとも、わたくし思いながら読み始めました。

 トータルな感想としては、なるほどねーという感じですか。
 やはり京都の四季折々の行事がふんだんにその背景になっているのは間違いありません。そのあたりの「情緒」を読ませるのもまた、大きな本小説の醍醐味になっているのかなと思います。ただ、それがメインの小説では、(これも、まー、当たり前ながら)ないようであります。

 実はわたくし、本書を、参加している読書会の課題図書として読んだんですね。そして、その読書会もすでに終わりました。
 何らかの読書会に参加している方は納得していただけると思いますが、読書会のいかにも面白い所は、実に様々な意見が出るところでありましょう。
 でもこの度は、大筋、割と好意的な意見が多かったように感じました。

 ただ、そんな風になってくると、私のようなひねくれ者は、つい反対意見を言っちゃうんですね。本当はそんなには感じていない部分でも、これは問題であるかのごとく話し出してしまいます。困ったことですなー。

 で、私がどんなことを言ったかと言いますと、こうしてまとめて思い出してみるとなんと、登場人物の三姉妹すべてについて、人物造形がしっかりしていないかのような意見を、結果としては述べてしまったように思います。(うーん、少し恥ずかしい。)

 ちょっと順を追って復習してみますね。
 ところがそのあとすぐに、祇園祭で15年以上会っていなかった中学時代の同級生に出会い(男女カップルで、女性の方とは中学時代友だちであったようながら、男性の方とは中学時代一度挨拶をしたことくらいしか覚えがない人物で)、冒頭のこじらせ系らしい綾香は話ができるのだろうかと読んでいくと、何の問題もほぼなく和気あいあいの夜を過ごします。私は少し読んでいてぽかんとしました。

 その後、綾香の恋愛話となるのですが、恋愛相手の男性との関係が進むことを(本当はひたすら望んでいるのに)頑ななばかりに恐れる姿がまた、こじらせ系っぽく描かれます。
 結局のところこのこじらせ原因は元カレとの古傷のせいであることが描かれますが、ただその描かれ方は、私はいかにも弱いと思いました。もう少ししっかり記述してほしいと感じました。だから、人物造形が少し弱いんじゃないかと。

 次に次女の羽依でありますが、これまたかなりといえばかなり極端な人物造形ではないか、と。
 私は、この人物像は、そもそもリアリティはあまり求めて作られていないんじゃないかと思いました。羽依は、ストーリーの中でいえば、活劇担当、コメディ担当、ではないのか、と。実際、本小説からこの羽依の物語を外してしまうと、山も谷もない何のメリハリもないハッピーエンド物語になってしまいそうであります。(羽依には、筆者の自家薬籠中の「爆発」場面も、2度にわたって出てきます。)

 ただ、これは読書会で、この羽依の破局は、続きが予想される一文二文があるとの指摘があり、なるほどなかなか面白そうだなあと、私も思いました。

 さて、最後に三女の凛の物語ですが、彼女の物語は結局のところ、就職をめぐる両親との対立と、彼女の恋愛観の二つがポイントだと思いました。
 ただ、両親との対立について、凛は京都から出たい思いは再三文中でも記述されておりながら、それが東京志向であることの理由については、核心部が描かれていないように思いました。描かれていない理由についても、私はいくつか考えましたが、私は筆者の中に微妙な掛け違いがあったのじゃないかと感じました。

 そして凛の物語のポイントの二つ目、彼女の恋愛観についてですが、読書会で、ある女性から鋭い指摘がありました。私は、それを聞いてあっと思いました。
 少し本文を抜き出してみます。
  ここは長女綾香と話をしている場面です。結婚について、30歳を超えた綾香の言葉の端々に焦りの感情が出ているのに対し、凛は、焦る必要などないといい、それに答えて綾香が「凛はまだ若いから、今の私の気持ちは分からへんよ」と返した後の、凛の心中描写部です。


 いかがですか。
 私はこの部分、何だか納得できないんですけれどもね。「多分年齢は関係ない」と「体内時計の尺」が違うという表現は、矛盾しないんですかね。

 そんな思いがあって、ここでもそもそもの人物造形に曖昧さがある、と私は思っていたんですね。ところが、読書会である指摘があり、私は、俄然、その読み、面白い! と思ったわけです。なるほど、それだと、ぎりぎり矛盾しない、かな、と。

 えー、どんな指摘だったかわかりますか?
 うーん、別に突拍子のないものではないのかもしれません。私が気付かなかっただけで。

 というわけで、ちょっと触れるのは控えます。
 そこから導かれる結論、読書会って、だから面白い、でありました。
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Last updated  2026.05.31 12:25:30
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シマクマ君 @ Re:「バイブス」「ペニー」「キャパい」「ガンダ」(08/08)  ボクも読みました。結構素直な作品とい…
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