本の虫の読書ノート

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2024.05.11
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カテゴリ: 小説
村山由佳さんの吉川英治文学賞受賞作「風よあらしよ」を読みました。
女性解放運動家・伊藤野枝の激しく生きた28年の生涯を描いています。


風よ あらしよ [ 村山 由佳 ]


福岡出身の伊藤野枝は、英語教師だった辻 潤と駆け落ちして、嫌な婚家を飛び出す。
暮らしに困り、平塚らいてうの主宰する「青鞜」で働くようになり、仕事に没頭する。

やがて、妻と愛人を持ち自由恋愛を理想とするアナキスト大杉栄と出会います。
二人はしだいに惹かれあい、夫と幼い子がいながら大杉と恋愛関係になります。

作品の中で野枝は身なりにあまり構わず、いつも垢じみた着物姿である、
という描写がよく出てくるから、そんな女性に男の人が惹かれるのかな?と
不思議だったし、大杉も描写が魅力的ではないし、理解できない部分でした。

野枝は、辻潤と駆け落ちする前にも結婚していて、嫌で仕方なかった気持ちを
辻潤に相談しているうちに、教師だった辻潤を好きになり、押しかけている。

写真を見ると、きりっとした彫の深い顔立ちだし、美人の部類に入ると思う。
でも、大雑把で飾らない性格が、かなり男性からも好かれていたようだ。

妻と愛人にも野枝との恋愛は認めろ、という大杉栄は随分と勝手な人間に映る。
そして「ひっひつひ~」と笑う、という大杉栄にげんなりしながらしながらも、
最後まで読むと、二人は同志愛で結ばれていたのかな~?と腑に落ちた。

3度の結婚、7人の子を産んで、最後は憲兵大尉・甘粕正彦に二人は殺されます。
名前だけしか知らなかった伊藤野枝という人の慟哭が聞こえてくるようでした。

28歳という年齢で激しくも短い生涯を終えた伊藤野枝という女性の一生の物語で、
大杉の愛人だった人は野枝の存在を嫉妬して、四角関係の果て大杉を刺してしまう。

自由恋愛のテストなどと言って随分と無責任で嫌な男という印象しかなかった。

このようなドロソロした男女関係があり、そんなことに躊躇しないで大杉との
間の子供を次々産んでいく逞しさは、圧倒されながらも見事だと思いました。

途中で読むのをやめようかと思いましたけれど、読んでいるうちにだんだんと、
どんな批判を受けても自分の生きたいように生きた野枝に魅了されていました。

歴史の教科書からは得られない明治・大正時代の日本人の生の歴史が学べます。

風よ あらしよ [ 村山 由佳 ]

村山由佳さんの作品は、以前は魅かれ随分と読みました。
でも、最近は内容についていけなくて読んでいません。


久しぶりに村山由佳さんの作品を読んで、また読んでみたくなりました。
こちらは、結婚した男女のありそうな気持ちのすれ違いが描かれています。




【中古】天使の柩 / 村山由佳





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Last updated  2024.05.11 07:04:22
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