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母の死の謎を探るため、北フランスの片田舎ラボリの旧家ゴラーズ家に
当主の二度目の妻として嫁いだ「私」。
夫は恐るべき快楽殺人者なのだろうか。
屋敷の中空にそそり立つ螺旋階段の底に封印された秘密とは。
田園風景の中の「館もの」、館に君臨する不気味な女中頭と
いわく有りげな召使の存在、前妻の不審死、と
「レベッカ」の本歌取りであることをわざと読み手に知らせるお膳立て。
探偵役の「私」視点と、犯人らしきその夫の「ぼく」視点の
交互のストーリーテリングで物語は進行する。
倒叙物のサイコサスペンスと思いきや結末にはどんでん返しが待っている
に、違いないと思って読んだが、どんでん返しの絡繰そのものは見抜けなかった。
ゴシックホラー風な作品なら舞台はアングロサクソンの地が常套のところを
フランスに持ってきたのも筆者のある意図、伏線の裡である。
さらに深読みすれば、少年を次々に殺害する「ぼく」の人物像に
ジル・ド・レエの影を重ねているのかもしれない。
ずばり言えば、ミステリーとしては欠点の多い仕上がり。
要となるどんでん返しが起きた後に絡繰りの解明がすっきりなされない。
再読してみてそこかしこにフェアに伏線が張られていることに気付きはするが
伏線回収の手際が鮮やかさに欠け、叙述トリックの中心である
時間錯誤と人物錯誤の記述が読み手には解り難い描写である。
最終章の偽装自殺の殺害方法の物理トリックは、作者が法医学の知識を駆使したのであろうか
さすがと手を打つものがあったが、殺害動機に今一つ必然性が感じられず・・・・
そこまでするか? はらせぬ恨みを何とする、必殺ナントカじゃあるまいし
私刑でなくて司直の手に委ねろよって、こういうところがフランスを舞台にしても
日本人の描き方なんだなと、余計な感想まで抱いてしまい・・・・おっとネタバレ
とまれ、ある種後味の悪い読後感となった。
それでも、個人の趣味にあっているため
エンターティメントとしてはそこそこ及第点を付けたい。
快楽殺人者の愛好するクラシック音楽の薀蓄だの
被害者の少年がアンリ・ナヴァールだのジャック・マルソーだの
聞いたふうな名前なのに( ̄ー ̄)ニヤリとしたり
そこへもって、ナチス占領下のラボリにやって来た
ドイツ兵の名前が「ディートリッヒ」なのは作者の茶目っ気?
さらに個人的な嗜好を言わせて頂けば、装幀について気になること。
表紙デザインの螺旋階段とアンドロギュヌスの天使像の取り合わせは大変結構なのだがタイトルと作者名のロゴが美意識の欠片も感じられない字体で悪目立ちしすぎ雰囲気ぶち壊しなのが残念。
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