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2008/05/31
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20.jpg

愛の地獄門をくぐった二人

互いが互いを、こんなにも大切に

こんなにも深く愛し合っているのに

思いやれば思いやる程、哀しくなる

だからと言って愛が消えた訳でも

終わった訳でもない

ただただどうしようもなく

仕方のない現実が目の前にある

初めて本当の愛を知り

初めて愛する苦しさを知る

命ある限り終わらないであろう

愛と苦しみを背負ってしまう

こんな二人は可哀相なのか

それともやっと・・・

真実の愛に巡り逢えた幸せな二人なのか

今の私にはわからない

ただ暗く長いトンネルでも

いつかは明かりに辿り着けるはず

いつかは答えを見出すはず

今は、そう信じたい


・・・・・・・・・


「ロダンとクローデルと地獄門」

国立西洋美術館には、彫刻家オーギスト・ロダンの、

「地獄門」「カレーと市民」そして有名な「考える人」が展示されています。

ロダンは、40歳から製作をはじめ37年のも半生を費やして、

自分自身の罪や苦悩を、この門に刻み込んだとされています。

「地獄門」の制作に入った頃、ロダンは一人の女性と出会います。

その女性は、19歳の若く美しいカミーユ・クローデルといい彫刻家を志していました。

そして、彼女にロダンは「地獄門」の制作の助手としたのです。

ロダンには長年連れ添った内縁の妻がいましたが、

親子ほど離れたクローデルに強く惹かれたロダンは、

二人で過ごす為のアトリエを借り新生活を始めるのです。

しかし、ロダンと暮らす中でクローデルは自分の愛は叶わぬものだと気がつくのです。

なぜならば、ロダンはクローデルと暮らしながらも、

一方では内縁の妻に「愛する本当の友はあなただけ」と手紙に綴っていたのです。

恋人の心が自分にないことを知ったクローデルは、

「熟年」という作品で捨てられた哀れな自分を突き放して見つめ、

過去の自分と決別するためにロダンに別れを告げます。

別れた後もクローデルは、こんな手紙を書いています。

「私は裸で寝ています。あなたが隣にいると、自分に思いこませようとして。

でも、目が覚めると、やっぱりあなたはいません」

そして、ロダンのもとを去ったクローデルは、

その後精神病を患い二度と社会復帰することなく、寂しくこの世を去ってしまいます。

「熟年」という作品では、老女に腕を引かれて去る男に、女が絶望的に手を伸ばしている。

習作(93年ごろ)で男とつながっていた手が、完成作(98年)で離れた。

この作品の一部「嘆願する女」を見て、ロダンは動けなくなり、

ブロンズをなでながら泣いていたそうです。

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「熟年」

そんな心の痛みを振り払うかのように、ロダンは「地獄門」の制作に没頭していったそうですが、

製作期間がかかり過ぎ完成しない作品に依頼主はキャンセルをするのです。

行き場のなくなった「地獄門」をロダンは、自らの人生の日記として彫り続け、

1917年77歳の生涯を閉じます。

それは奇しくも「地獄門」を彫り上げた直後のことだったそうです。

200px-National_museum_of_western_art02_1024.jpg
「地獄門」

200px-Hoellentor_Detail_gr.jpg
「地獄門アップ」


話を戻しますが・・・・・・

ロダンは、新しく建築されるパリの装飾美術館の

入り口の門扉の制作を政府から依頼されたのですが、

ダンテの熱烈な愛読者だったロダンは、「神曲」を表わし、

またフィレンツェ洗礼堂の「天国の門」にならい制作に取り掛かったそうです。

paradiso.jpg
「天国の門」

しかし、長い制作過程において、ダンテの神学的なものから、

ボードレールの「悪の華」に表現された人間自身の地獄の世界に入り込んでいったようです。

思いきり作品とロダンの私生活に関する逸話になってしまいましたが、

ある日心の中の「地獄門」に迷い込む・・・

それはロダン、クローデルも私たちも同じなのでしょう。

今日アップした「独り言」は、ある二人の愛の物語ではありますが、

真実の愛を知っても結ばれることのない二人の愛もまた

愛の地獄門の入り口をくぐってしまったのでしょう。


Micco






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最終更新日  2008/05/31 02:28:03 PM
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