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最近、チェットベーカーの晩年の演奏が面白く思えるようになってきた。正直、あまり上手い演奏ではない。しかし、テクニックを超えた「ジャズ魂」のようなものが晩年のチェットには後光のように浮かび上がる事がある。失った前歯の替わりに魂を授けるなんて、ジャズの神様も酷いことをするもんだと思う。今回のディスクは1986年のピアノ入りカルテットでの演奏。一度聴いた限りでは、リズム隊は可もなく不可もなく、というところ。安心してチェットが聴ける点では良いかもしれない。当のチェット大先生は、全体的にやや酩酊気味で前後不覚の直前であり、演奏はかなりヒドイ。チェット信者用のディスクだったのかもしれないが、まぁ仕方が無いなー。このディスクを褒めるとすれば選曲とジャケ写真だろう。タイトル曲の"When The Sunny Gets Blue"はさりげなく泣ける曲。他の曲も、ほとんどが私の大好きな曲ばかり。でも、4曲目の"I Should Care"はメロディーが壊れすぎで何の曲か良く分らない。吹いている本人もテーマを忘れていたんじゃないか、と思う。猫麻呂ポイント:★★★(3.0)Chet Baker / When Sunny Gets Blue (SteepleChase)
2005年01月15日
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今日のCD"Outward Bound"はドルフィーの初リーダー作だが、当時ドルフィーは31歳であり、ハード・バッパー達と比較すると相当遅い。いかに満を持してレコーディングに臨んだか、内容の安定度からも推測される。この作品でのドルフィーの音楽はフリージャズではなくメインストリームの範疇だ。この作品に限らず、一部のフリー作品を除けば、基本的にはドルフィーはメインストリームの人だと思う。ドルフィーがフリーならビル・エバンスもマイルスもフリージャズとされるべきでは・・・。いずれにせよ、この作品のドルフィーであれば、フリージャズ嫌いの人でも美味しく食べられるのではないか、と思う。私は、この作品を、名盤"Eric Dolphy at The Five Spot"への続くドルフィー音楽の軌跡として聴いている。ドルフィーはファイブ・スポットで繰り広げる壮絶なソロの原型が既に現われているが、衝き上げる何かが不足している感じだ。ひとつはフレディー・ハバードの能天気な演奏だ。ドルフィーのような生真面目系ジャズマンにハッタリ度の高いトランペッターはミスマッチなのだ。地を這うバスクラにキラキラ輝くトランペットでは可愛そうだ。ここはドロドロ系のブッカー・リトルやテッド・カーソンがお似合いなのである。もうひとつはリズムセクションである。ジャッキ・バイアードのピアノとロイ・ヘインズのドラムはかなり良い人選だったのだが、それ以上に衝き上げ度が高いのがファイブスポットでのマル・ウォルドロン&エド・ブラックウェルというドロドロ度の高いリズムセクションだったのだろう。ファイブスポットでの切羽詰まったギリギリ感はこの作品ではあまり感じられない。この作品も良い演奏ばかりだが、特に感動的なのが"Gad to Be Unhappy"でのドルフィーのフルート演奏だ。ただテーマを吹いているだけでも胸にグッと来る。猫麻呂ポイント:★★★★☆(4.5)Eric Dolphy / Outward Bound (New Jazz)
2005年05月28日
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ニッパー君のCDショップ(英国系大手)のネットショップでNORMAのCD/LP半額セールをやっているので、この機会にオトナのピアノ・トリオ作品を1枚ゲットした。ローランド・ハナはサイドマンとして聴く機会はあったが、ピアノ・トリオ作品を腰を据えて聴いたのは初めてだ。まさに職人派のピアノで、派手さはないが仕事キッチリ。タッチも綺麗だし、スイング感もバッチリ。しかも、録音もかなり良いので(NORMAの作品は音がいい)、安心して聴ける。それがアダとなって、今ひとつ特徴のない作品になっているという感はあるが、生演奏を聴いているつもりで目を閉じて聴くとゴージャス感が楽しめるだろう。1曲目"I Love You"はコール・ポーターではない方のキュートな曲。オスピーが登場しそうなスインギーな演奏だが、そこはオトナのハナ、上品に仕上げている。2曲目"Lover Come Back To Me"も1曲目と同様に小粋なスイングが魅力。ハナのピアノは中庸の美というか、オトナなんですね。3曲目"Body and Soul"はピアノソロでの演奏。ジャズピアノの伝統を感じさせる、ありがたい演奏。4曲目は何故かコルトレーンの"Impressions"。3曲目とのコントラストはエビゾリもの。さすがは職人派だけあって、どんな注文でも「仕事キッチリ!」である。5曲目"The Lonely One"は再びソロピアノとなる。ブルース・フィーリングもバッチリ。ホントに職人芸の世界。6曲目"What A Difference A Day Made"はテンポのよいスインギーな味付け。ガツガツしていないところがいい。7曲目"Drinkin' Wine Slowly"はボサノヴァ調のマイナー曲。こんな曲も1つ入っているといいなー、と思ったところに、ドラえもんのように出してくるところがニクイ。8曲目はマイルス曲で"All Blues"。おもいっきりブルースまっしぐらな演奏。9曲目はメンバーが変って"Isn't A Pity"。急にリリカル路線に走っちゃってビックリ!このCD、聴けば聴くほど良さが解かってくるようだ。これはいい買い物だった。猫麻呂ポイント:★★★★☆(4.5)Roland Hanna / Lover Come Back To Me (Black and Blue)リンク先は輸入盤で、タイトルは"Impressions"となりますが、内容は同じです。こちらがNORMA盤のジャケット 渋いですねーこちらが輸入盤のジャケット
2005年11月22日
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アイドリース・シュリーマンにリーダー作があったこと自体、実は猫麻呂も最近まで知らなかった。「いつでも・どこでも・誰とでも」のポリシーでセッションからセッションへと渡り歩く「セッション系渡り鳥」のシュリーマンが、自らリーダーとなって、選曲にメンバー選定にギャラの配分まで考えるなんて、とても想像できないのである。シュリーマンといえば、セッションでリーダーから「ハイ、ここの2コーラスで景気良く頼んますネ」と言われて、与えられたスペースでバップフレーズをブチまけるための専門職だったはず。しかも、いつでも全力投球のハイテンションでブリブリ吹きまくるから、良くも悪くも大味で単調な感じとなる。この大味さがツボにはまった時の感じが猫麻呂は大好きだったのだが、ワン・ホーン作品となるとそうは行かない。あのテこのテで聴かせどころを作らなきゃならないし、微妙な陰影やら色気やらも出さなきゃいけない。そうだ、シュリーマンの演奏でこれまで感じなかったのは「色気」なのだ。さて、そんな「色気」とは対極にあるようなシュリーマンにワン・ホーン作品ができるのだろうか、という点が本作品の聴きどころである。毎度の話となるが、トランペットでワン・ホーンというのはとにかく大変なのだ。ブリブリ吹けばうるさいし、マッタリ吹けば退屈となる。だから、ラッパのワン・ホーンは選曲の良さで勝負するのだ。その点、この作品ではよく考えられている1曲目にアップテンポのブルースを持ってくるが、リハモされて小洒落た感じに仕上げてあるので、オープニングとしては心地よい。2曲目はデューク・ジョーダンの美しいバラードだ。でだしがストレイホーンの"Chelsea Bridge"に似た曲だが、こういった手垢のついていない曲を持ってきたところが巧い。3曲目はレコードのB面の名曲と呼びたくなるようなミディアムテンポの美味しいオリジナル曲だ。4曲目はホレス・パーランの"A Theme for Ahmad"という曲。ラテン・フレーヴァーでとにかく美しい曲だ。これもB面の名曲系だろう。本物のB面の1曲目はアルバムタイトルの"Now's The Time"となる。B面2曲目がシュリーマンの作曲したスタンダード風のバラード。ラストもシュリーマン作曲でミディアム・テンポ。絵に描いたようなB面ラスト曲だ。選曲面で言えば、B面系の渋かっこいい曲で固めたマニア好みの作りとなっている。こんな考え抜いた選曲をシュリーマンがしたとは到底思えないくらいの出来過ぎぶりなのである。しかい、よく考えると、レコーディングの選曲はプロデューサーが決めたりするわけで、シュリーマンが考えたとは限らない。そもそも、この作品を作りたかったのはシュリーマン自身ではなく、スティープルチェイスのオーナーであるニルス・ウィンターがシュリーマンンでワン・ホーン作品を作ろうと考えたのがことの発端らしい。サイドマンの選定も、たまたま欧州ツアーをしていたジョージ・コールマン・カルテットのリズムセクションをニルス・ウィンターが借り受けたもので、シュリーマンが自ら集めたものではない。そうなると、選曲もニルス・ウィンターによるものと考えたほうが自然かもしれない。やっぱりシュリーマンには選曲やメンバー集めは無理だったのかな・・・。(こうして決め付けてはいけませんね。)選曲は良いとして、演奏はどうかというと、これが普通すぎて驚いてしまう。シュリーマンにしては随分とおとなしい演奏で、猫麻呂的にはやや期待ハズレではあるが、ダスコ・ゴイコビッチが吹いているのと大差ないのだ。ということは、一般的は良くできているということになるのか・・・。一応、トランペットとフリューゲルの両方を吹き分けているらしいのだが、猫麻呂には全部トランペットに聞こえる。シュリーマンがフリューゲルを吹くような軟弱なジャズはいけない、という過激な思想を持つ猫麻呂としては、ちょっと安心だったりする。全体を通して評価すると、この作品はかなり出来が良い部類だと思う。シュリーマンの作品と知らずに聴けば、通好みの渋かっこいい作品と言っているだろう。録音も良いしサイドのシダー・ウォルトン、サム・ジョーンズ、ビリー・ヒギンスのサポートも素晴らしい。しかし、何かが足りないような気がするのだ。それは、50年代のシュリーマンの持っていた大胆さや勢いなのだろう。何か、型にはまってしまった感じがするのだ。どっちが良いとか悪いという話ではないが、シュリーマンは50年代の方がシュリーマンらしかったのかもしれない。猫麻呂ポイント:★★★★(4.0)Idrees Sulieman / Now Is The Time (SteepleChase)
2008年05月25日
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