やっぱり読書  おいのこぶみ

やっぱり読書 おいのこぶみ

2005年05月11日
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カテゴリ: 名作の散歩道
いまさら「細雪」されど「細雪」皆様は読まれただろうか?

先日、BSハイビジョンの 「名作平積み大作戦」 で飯星景子さんがコメンテーターをやっていた。曰く「この犬は吠えない 条件はハマっているのに...」(そうそう、その時、大森 望 さんを映像で拝見、 豊崎由美さんも出てるらしい、何しろこの番組、初めて観たので、って「文学賞メッタ斬り!」がらみの話題だが...)

なもんで、おもしろそう!!

何度も映画でリメイクされ、観たような気がするが原作をちゃんと読んでいなかった。

そうだ本棚に古い文庫本があった(昔、粗大ごみ置き場に捨ててあった本の山から拾ってあったのだ、ほんとうに!)と、気安く読み始めた。

俄然、おもしろい、うまい。ま、当たり前なんだけど。大作家谷崎潤一郎なればこその名作。

のっけから船場言葉「こいさん」だの「とうさん」だの「ふん、ふん」が頻発なのだが、そこは江戸っ子作家からみた関西なのでくみし易い。谷崎潤一郎は上方の生活文化を愛情込めて書き込んだ。

さて、あらすじ、没落はしたが船場育ち四人姉妹の三女雪子が30歳なのにお嫁にゆき遅れている。

あいまに、物見遊山、観桜、蛍狩り、年中行事、食べ歩き。そして、大洪水の恐さ、大病、などの事件、大阪神戸と東京を行ったりきたりの変化、ほんとあきさせない。

でも、観桜のきらびやかさとか着物の派手さだけでは終わらないのがこの物語。

いろいろな読み方はあるだろうが、私は物語が進むにつれ明確になる四姉妹、鶴子(長女)幸子(次女)雪子(三女)妙子(四女)のキャラクターをことさら楽しんだ。特に主人公雪子のキャラは想像力を掻きたてられる。何を聞いても自分を出さずに「ふん、ふん」といっていてとらえどころがないようだが、芯が強い性格、でなければあの行動力はなんなんだということになる。意見だってことさら言わなくても通すしぶとさを持っているのだ。

阪神の土地勘を知るのもよし、意外や(といっては悪いが)当時の第二次世界大戦前夜のきな臭い感じ、庶民のせつなさも書き込まれているのでを味わうもよし。終わりまで完璧に引っ張っていかれる。

勿論、構築がきちんとした格調高い耽美派の名作ではある。堪能した。

うーん、山崎豊子の「女系家族」[華麗なる一族」の世界はきっとここから来たのね、とちょっとひらめいた。「女系家族」[華麗なる一族」も格別おもしろかったからな~。





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最終更新日  2005年05月11日 20時00分43秒
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「細雪」読まねば。  
tuitel  さん
大谷崎は「卍」で、怖じ気づいてしまいました。
おもしろかったけど。どこへ連れて行かれるのか、怖くて。 (2005年05月11日 22時48分57秒)

tuitelさんへ Re:「細雪」読まねば。(05/11)  
ばあチャル  さん
>大谷崎は「卍」で、怖じ気づいてしまいました。
>おもしろかったけど。どこへ連れて行かれるのか、怖くて。

「細雪」はそんなことはないけれど、私も怖れをなす作品が多そうで、二の足踏んでましたね、いままでは(笑) (2005年05月11日 23時09分06秒)

Re:「細雪」谷崎潤一郎(講談社文庫)(05/11)  
谷崎は、若い頃にハマって読みまくってましたが、以来読んでないので、内容はすっかり忘れてます。(^^ゞ
独特の雰囲気に惹かれてました。「刺青」に登場する“足”が艶かしいまま記憶の中に横たわっています。
(2005年05月12日 07時50分51秒)

くりむーぶ389さんへ Re[1]:「細雪」谷崎潤一郎(講談社文庫)(05/11)  
ばあチャル  さん
>谷崎は、若い頃にハマって読みまくってました

当然なのですが、こんなに文章がうまい作家であることに、目開かれる思いを今頃しています(苦笑)
食わず嫌いでした。

>独特の雰囲気に惹かれてました。

それが若い頃わかるなんて素晴らしいです! (2005年05月12日 08時19分59秒)

Re:「細雪」谷崎潤一郎(講談社文庫)(05/11)  
パティP  さん
大好きですよ。
で、読み終わるとなぜか自分の言葉が関西弁になっているんですね(笑
私は東京での台風のシーンよりも
大水ノシーンが印象に残ってます。
女中のなんとかいう娘の大活躍、谷崎の女性へのまなざしの確かさを感じますね。
蜂一匹が紛れ込んでの大騒ぎとかも、いかにもそれらしくって目に見えるようだったのを思い出します。
ただ、こいのさんの恋人が死んだときの扱い方と、その後があまりに淡白で
逆にそれがリアルだったりも感じたり
いろいろと考えさせられもしました。
間違いない名作ですね。
しかも日本人にしかわからない意味での名作。 (2005年05月12日 09時50分14秒)

パティPさんへ Re[1]:「細雪」谷崎潤一郎(講談社文庫)(05/11)  
ばあチャル  さん
よく覚えていらっしゃいますね!

>私は東京での台風のシーンよりも
>大水ノシーンが印象に残ってます。

この時の救世主が「板倉」という写真屋。その後恋仲になる。だけどストーカーしていたから駆けつける事が出来たという皮肉。

>女中のなんとかいう娘の大活躍、谷崎の女性へのまなざしの確かさを感じますね。

そうそう、「お春」の性質もその辺に居そうな、リアルで面白い。

>蜂一匹が紛れ込んでの大騒ぎとかも、いかにもそれらしくって目に見えるようだったのを思い出します。

動作や会話がうまいです。天才的。

>ただ、こいのさんの恋人が死んだときの扱い方と、その後があまりに淡白で
>逆にそれがリアルだったりも感じたり
>いろいろと考えさせられもしました。
>間違いない名作ですね。

パティさほんとによく読み込んでいらっしゃいます。感激です。

>しかも日本人にしかわからない意味での名作。

確かに、四季とか行事は珍しいでしょうが、「お見合い」はねぇ~。 (2005年05月12日 12時39分38秒)

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