ダイジェスト版の効用

2007年02月14日

カテゴリ：本の話題

作家が別々の作品でふたたび登場人物を出してくることは多々ある。シリーズならもちろん、書き足りなかったのでということもあろう。けれど作家１人の頭の中で多人数の履歴書を作ってしまう物語を書いたというのは、バルザックぐらいじゃないか。

バルザックの短編「赤い宿屋」と中篇「コプセック」を読んだ。

登場人物が「ゴリオ爺さん」に出てくる人たちでもあり旧知に会った気がして懐かしく、単独の物語としてもおもしろかった。

時間経過は「ゴリオ」の「その後」という趣向、しかしバルザックが書き上げたのは、「ゴリオ」を世に出す前という。しかも両方とも物語が入れ子になっていてその物語は「ゴリオ」より前の時間になっているからややこしい。

長編を書きながら短編「赤い宿屋」は箸休めみたいにして１日で書き上げたとか。

そんな芸当が出来るバルザック、作家の頭の中で登場人物の一生や歴史がいつも沸騰していたのだろう。すごい構想力、構築力にあらためて感心した。でも、晩年はそのいっぱいつまった頭の中のため頭痛や目の障害、と健康を害して死に到ってしまった。

90篇の「人間喜劇」を全部知りたい気がするが、それほどでもない作品もあるだろうし、時間もかかりそうで意欲がない。調べたら「人間喜劇」のダイジェスト版などあるから、そちらのほうでも読もうかな。読みすぎて私が健康を害すると困るから。

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