やっぱり読書  おいのこぶみ

やっぱり読書 おいのこぶみ

2008年10月06日
XML
カテゴリ: 名作の散歩道

 『伸子』の続編。 

『伸子』

『二つの庭』 はようやく離婚して経済的に自立生活出来て自由になっても、それが目的とはならないという発見。人間として、何を目的にして生きるのかと悩む伸子が道を開くまで。

 伸子の悩みは、大正末から昭和にかかる、まだまだ個人の自由、女性の自由がない時代の苦しみとは思うけれど、経済自立もさほど難しくなく、結婚もしてもしなくても自由、というはずの現代でも、目的を持って生きているとさまざまな障害がある。人間社会の常だ。だから普遍的な苦悶として共感してしまう。

 どっぷり宮本百合子の文学世界に浸って堪能できた。この続編も『伸子』同様迫力があっておもしろい。むしろこの続編があるから『伸子』が活きる気がする。

 主人公伸子は作家宮本百合子自身をモデルにしている。後に共産党に入党して戦前は投獄され苦しみ、戦後は婦人運動に尽くされたけれど、作家としての作品が素晴らしい。(なにをいまさらといわれそうだけれど)

 『二つの庭』で作家となった伸子が志賀直哉の『暗夜航路』やトルストイの『アンナ・カレーニナ』のような小説を書きたかった、と述べさせているのを見てもわかる。とにかく今でも十分読みごたえがある。やはり名作と思う。

 『伸子』は岩波文庫で再版されたのを、『二つの庭』は新日本文庫を古本で見つけた。 






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2008年10月06日 20時02分27秒
コメント(4) | コメントを書く
[名作の散歩道] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ

利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


Re:『二つの庭』宮本百合子(10/06)  
薔薇豪城  さん
 高校の時に先生が「宮本百合子は、今の社会では不当に無視され、別の勢力からは、あまりに持ち上げられて、両方ともが彼女の不幸だ」って言っていたのを思い出しました。その頃「伸子」を読んだ記憶があります。「二つの庭」は読んでないので読みたいです。 (2008年10月06日 20時32分27秒)

薔薇豪城さん  
ばあチャル  さん
なるほど。高校の時に先生はいいことおっしゃいましたね。

文学好きとしては現代でももっと読まれてもいいのではないかと思っています。リアリズム文学の過程としても、思索の道順としても。小林多喜二の『蟹工船』が現代と繋がっているからブームになったのはいい文学であったからです、ように。
(2008年10月07日 07時32分32秒)

Re:『二つの庭』宮本百合子(10/06)  
きいぼ  さん
私は女子高だったのですが、そのときの先生が女性の自立にものすごく力を入れてる先生で、その先生がこの本を紹介してた気が・・・。
でも、その先生とはそりが合わず、この本も読まずじまい。これから挑戦します。
(2008年10月07日 08時57分32秒)

きいぼさん  
ばあチャル  さん
この小説の時代背景は確かに古いです。しかし繰り返して云いますが、「経済的自立はどうにか果たした、でも、それだけでは人間として完成された生きかたに向かっているのではない!」ということを切々と感じさせる文学(しかも平明に)でした。
(2008年10月08日 07時16分03秒)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

プロフィール

ばあチャル

ばあチャル

コメント新着

ばあチャル @ Re[3]:白内障手術(06/11) todo23さんへ メガネの話題でもりあがる…
todo23@ Re[2]:白内障手術(06/11) ばあチャルさんへ 会社にいる頃は遠近両用…
ばあチャル @ Re[1]:白内障手術(06/11) todo23さんへ 「近く」を選択すると読書…
todo23@ Re:白内障手術(06/11) ばあチャルさんは「近く」を選択したので…
ばあチャル @ Re[1]:年賀状じまい(01/07) オーキリさんへ お互い元気で何よりです…

お気に入りブログ

10/7:二部谷コタン… New! 天地 はるなさん

土井裕泰「平場の月… New! シマクマ君さん

中国とドイツの関係… New! tckyn3707さん

ブルーオーシャン New! 七詩さん

不思議な類似に驚い… New! analog純文さん

小田原に行ってきま… New! ひよこ7444さん

フリーページ

耽溺作家の作品群


山本周五郎の世界


清張ワールド


クリスティの手のひら


時代物の神様正太郎


宝石箱


子供の頃の読書


作家別読了記録【あ】行


【あ】 日本文学


【ア】 外国文学


【い】 日本文学


【イ】 外国文学


【う】 日本文学


【ウ】 外国文学


【え】 日本文学


【エ】 外国文学


【お】 日本文学


【オ】 外国文学


作家別読了記録【か】行


【か】 日本文学


【カ】 外国文学


【き】 日本文学


【キ】 外国文学


【く】 日本文学


【ク】 外国文学


【け】 日本文学


【ケ】 外国文学


【こ】 日本文学


【コ】 外国文学


作家別読了記録【さ】行


【さ】 日本文学


【サ】 外国文学


【し】 日本文学


【シ】 外国文学


【す】 日本文学


【ス】 外国文学


【せ】 日本文学


【セ】 外国文学


【そ】 日本文学


【ソ】 外国文学


【た】行


【た】 日本文学


【タ】 外国文学


【ち】 日本文学


【チ】 外国文学


【つ】 日本文学


【ツ】 外国文学


【て】 日本文学


【テ】 外国文学


【と】 日本文学


【ト】 外国文学


【な】行


【な】 日本文学


【に】 日本文学


【ぬ】 日本文学


【の】 日本文学


【ノ】 外国文学


【は】行


【は】 日本文学


【ハ】 外国文学


【ひ】 日本文学


【ヒ】 外国文学


【ふ】 日本文学


【フ】 外国文学


【へ】 外国文学


【ほ】 日本文学


【ホ】 外国文学


【ま】行


【ま】 日本文学


【マ】 外国文学


【み】 日本文学


【ミ】 外国文学


【む】 日本文学


【メ】 外国文学


【も】 日本文学


【モ】 外国文学


【や】行


【や】 日本文学


【ゆ】 日本文学


【ユ】 外国文学


【よ】 日本文学


【ら】行 【わ】行


【ラ】 外国文学


【り】 日本文学


【リ】 外国文学


【ル】【レ】【ロ】 外国文学


【わ】 日本文学


【ワ】 外国文学


【共著】【マンガ・コミック】


「読みたい本・注目の本」記事録


『世界の「今」に迫る10冊』


吉屋信子『私の見た人』の昭和の作家


ウェヴスター『あしながおじさん』に出てくる本


日本の作家(ちくま日本の文学全集収録)


昭和の作家(1962年 朝日新聞記事より)


映画鑑賞会


2024年


2025年


カレンダー

キーワードサーチ

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: