やっぱり読書  おいのこぶみ

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2014年11月07日
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カテゴリ: 読書メモ

佐木隆三『わたしが出会った殺人者たち』(新潮文庫)

昭和・平成にわたって世の中を騒がせた
いや、世間が騒いだ18件の殺人事件を
裁判傍聴業などして、ずっと取材してきた作家が
ノンフィクションなど自身の過去の作品にからめて振り返っている

一章から一八章までわたしが記憶しているものもいくつかあり

たとえば
場所は千葉、女医の妻殺人の医師藤田正
金沢の老舗菓子舗のおかみになっていた福田和子
連続幼女誘拐殺人の宮崎勤
和歌山毒カレー事件の林真須美
オーム真理教事件の浅原彰晃
大阪池田小大量殺人事件の宅間守

などなどの18件のおぞましくやりきれない殺人事件の犯罪者の人物その後の顛末や詳細を冷静に簡潔に書いてある 

フィクション、ノンフィクションどちらが好きか
と問われればわたしは断然フィクションがいいし
それもファンタジーに走らず
ミステリに近く、ストーリーが複雑で
なお、文学性に富んでいる本が好みなのであるが

しかし、この本はノンフィクションであるのにあまりにも文学的な文学だと、とても感心してしまった次第

それは佐木さんも背中を押され、この本の解説者も指摘しているように
「文学とは人間という不可思議な生き物の正体に、どこまで迫れるかだ」
という埴谷雄高さんの言葉に表れている

それは理不尽な殺人事件を起こしてしまった
死刑や無期懲役になったおぞましい最低と言える犯罪者を普通の人間の隣人であると思うことである
「日常の陰の隣人たち」(佐木さんの言葉)

おそましい、おぞましいと読みながら
果たして自分が、自分の周りがほんとうに正常かあるいは清浄どうか
だんだんとわからなくなってくるのである

また
後期高齢者になった作者自身の自分史のようなものまで
率直に書き込んであることに好感を持った

北九州の郷里に戻られ、妻子とも別れ
海の見える高台で、畑を作りながらの一人暮らし
といいながらこのような書き物もしていらっしゃるのであるが






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最終更新日  2014年11月07日 20時57分37秒
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Re:ノンフィクションの中の自分(11/07)  
きいぼ  さん
殺人を犯したおぞましい人間が隣にいるなんて。
殺人事件なんて、どこかヨソの場所の話。
そう思えない現代なのですね。
狂気であったかといえば、ごくごく普通に生活していたり。
池田小の事件は、犯人が婚活パーティに普通に出ていたりして
衝撃でした。
佐木隆三さんは、高校生のころ読みました。
読みましたというより、読み漁ってました。
何があんなにも夢中にさせたんだろうと思い返すと
私と何が違うのか、探っていたのかも。
普通の人が犯罪を犯す、でも私も普通なんだけど、みたいな。

これはチェック。読んでみます。
(2014年11月07日 21時17分30秒)

Re:ノンフィクションの中の自分(11/07)  
ひよこ7444  さん
全部記憶に残っている事件ばかり。
しかも残酷。
さっそく図書館でチェックしてみます。

犯罪心理には興味あるので(あ、、あぶない、、、)

宮崎の事件では、私が読んでた漫画に出てきた人物の名前が使われてて、私たちのようなコミケ大好き人間が白い目で見られましたよ。。 (2014年11月08日 06時41分07秒)

Re[1]:ノンフィクションの中の自分(11/07)  
ばあチャル  さん
きいぼさん

「殺人者と他の人間との違いは程度の差であって、種類が異なるにではない」

これもこの本に引用してあるコリン・ウイルソンという人の言葉だそうですが、妙に納得してしまうのでしたよ

もちろん自分は絶対殺人はしませんし、そして精神も病みませんつもりですが
こころの曲がりくねったさきに、たどり着いてしまうこともあるものです
人間は複雑なるもの!

(2014年11月08日 12時35分41秒)

Re[1]:ノンフィクションの中の自分(11/07)  
ばあチャル  さん
ひよこ7444さん

事件が起こるたびに「なんで?」と思いますが
自分たちは普通でびくともしない、とも言い切れませんね

育った不如意な環境や運が悪いというだけでは説明できない
人間性の根源みたいなものに思いを馳せてしまいました

>宮崎の事件では、私が読んでた漫画に出てきた人物の名前が使われてて、私たちのようなコミケ大好き人間が白い目で見られましたよ。。

TVの映像で宮崎勤の部屋を見たときはショックでしたが
わたしの本棚も似たようなものだ!
といまさら気が付いた(笑
(2014年11月08日 12時46分35秒)

Re:ノンフィクションの中の自分(11/07)  
alex99  さん
佐木隆三さんの本は、はずれがありませんね

人を殺したくなること
私の場合は、かなり、ひんぱんにあります
と言っても、
政治などで、非常に憎らしい、非常に有害だと私が思う人物が、死んでくれたら・・・
と思うことが多いのです
突然、落雷で死んでくれたら・・・などとは、よく、思います(笑)
世界的にも、イランの頑迷な宗教指導者達が、いなくなれば、イランも自由化するのに・・・とか
パク・クネ三の場合は、これされればいいのに、とまでは思わないが、大統領をやめてくれれば、とは、おもいますね

殺人そのものが目的ではなく、排除が目的
(おなじことか)
いや、でも、その辺の違いも、大きいですね
ある人間を「殺したい」、と、リアルに思った事は、ありません
そういう境遇にいなかっただけかも、知れません
でも、人を殺すということは、たいへんなことですね

私、このごろ、蚊でも、叩いて殺した後
「あ~ 私は、今、一つの生命を永遠に抹殺したのだ」という深い悔恨を感じることがあります
蟻一匹、殺さないために、床を丹念に払う、と言う、インドのジャイナ教教徒たちの気持ちが、わかってきました




もちろん、実際の殺意ではありませんし、そういう機会があっても、実行はしませんが
安易な発想です(笑)
男性には、こう言うことは、多いと思います
長く、狩猟の担当でしたからね
(日本人は農耕か)

コリン・ウィルソンは、若い頃、好きで、よく読みました
その本は、多分【殺人百科】(邦題)でしょう
持っています
一部しか読んでいません(笑)

(2014年11月09日 00時55分21秒)

Re[1]:ノンフィクションの中の自分(11/07)  
ばあチャル  さん
alex99さん

>人を殺したくなること
>私の場合は、かなり、ひんぱんにあります
>と言っても、
>政治などで、非常に憎らしい、非常に有害だと私が思う人物が、死んでくれたら・・・
>と思うことが多いのです
>突然、落雷で死んでくれたら・・・などとは、よく、思います(笑)
>世界的にも、イランの頑迷な宗教指導者達が、いなくなれば、イランも自由化するのに・・・とか
>パク・クネ三の場合は、これされればいいのに、とまでは思わないが、大統領をやめてくれれば、とは、おもいますね

>殺人そのものが目的ではなく、排除が目的
>(おなじことか)
>いや、でも、その辺の違いも、大きいですね

すごい、明察!
そうですよ、憎らしくてもそれは思いだけ
殺してしまいたいとするのは排除したいからです
消してしまいたいのですね
でも絶対消せませんね、人間だったらね
精神がおかしくなっていたら感じないでしょうが

他の動物だったら、どうか
虫にも魂があるのか
ここになるとわたしは感じなくなってしまいます(笑
まだまだ修養が足りないです


(2014年11月09日 08時45分14秒)

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