やっぱり読書  おいのこぶみ

やっぱり読書 おいのこぶみ

2019年01月30日
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カテゴリ: 読書メモ
​​​ テレーズ、あなたのような女がいるはずはないと多くの人がいう。

という文章で始まるこのフランスの小説、ひさびさにわたくしどぎもをぬかれましたよ。もしかして今年一番のヒットかもしれません!この衝撃的なおもしろい小説を知らなかったなんて・・・。

「免訴です」と弁護士はテレーズをふりかえり、・・・

夫毒殺の疑いで裁判にかけられたテレーズは、夫の証言で免訴になりました。ほんとうは実行犯だったのに・・・。裁判所を出て夫のいる家庭に戻るため、汽車や馬車の長い道中に「なぜこんなことになったのか?」と思いわずらいながら帰っていくテレーズの描写がなんともリアル。いや、遠藤周作氏のものすごい迫力の日本語訳に圧倒されます。(遠藤氏はこの作者モーリアックに、このヒロインに心酔された由)

テレーズは家と家のつり合いもほどよく資産があり、平凡だけど性格よくやさしい夫ベルナールと何不足ない条件の結婚をしました。けれどもテレーズは結婚後すぐに夫がうっとうしくなりました。なぜ?テレーズはさんざん考えるのです。自由だった少女時代が終わってしまった悲しみ?夫の凡庸さに辟易?「アルジュルーズ」という仏南西地の果てのようなランド地に住む寂しさ?もっと知的で会話のできる男に会いたい?

娘も生まれますがテレーズは悩み続けます。あるきっかけで毒殺のヒントを得て実行します。夫のかかりつけ医に発見され裁判にかけられますが、夫や父が体面を重んじたいため、免訴に持ち込まれまてしまいます。それでテレーズは助かったのでしょうか?幸せになったのでしょうか?

いえいえ、そこからまた苦しみが始まり結末を迎えます。

・・・ベルナールは道幅に合わせて作られた人間だった。

このパリで別れる最後の場面も鬼気迫ります。

夫との性格不一致、昔、それこそお見合い結婚がほとんどだったわたくしたちのまわりでは当たり前によく聞く話です。恋愛結婚でもそうです。結婚して一緒に暮らすということはそういうことです。でも、それだからといって夫を殺してしまおうとは、 ほとんどの人が思いませんでしょう 。テレーズは思ってしまうのです。

先に死ぬのを待っている かもしれません。そのほうがもっと怖いかもしれません。人の心はかりしれないのです。



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最終更新日  2019年02月02日 12時46分34秒
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