やっぱり読書  おいのこぶみ

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2020年11月29日
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カテゴリ: 読書メモ
​​​ 『イエスの生涯』 ​読了後、続巻のこれを読まないと、と思いつつなかなか進まなかったのに、読めば読んだで、早く読めばキリスト教のことがもっとよくわかったのにさ、という思い。ほんと、この2書はセットで読むべし。

西欧の文学作品を読むにつけ、神の存在が日本人と全く違って意識され来るのだが、その多くを占めるキリスト教とは何か?の知識は、新書版などの解説書を少々読んでもなかなかわからない。それだから遠藤周作氏が小説家の目で解き明かしてくれたキリスト教の成り立ちに目を開かされる思いがする。

前に読んだ 『イエスの生涯』 には、元大工でユダヤ教徒だったイエスという名のひとが、律法に縛られたユダヤ教ではしっくりしないと悩み続けているうちに、ある時啓示を受け「寄り添う愛」にたどり着いた。しかし弟子は多くつどえど、弟子たちは本当のイエスを理解せず、裏切り、挙句の果てイエスは処刑され無駄に死んでしまう。その犬死のような死に意味があったのだった。

『キリストの誕生』 では聖書(使徒行伝、マタイ、ルカの福音書・・・)などの文献から作者は、その後の弟子たちの動きを追う。原始キリスト教団の歩みというような語り口で、だんだん「なぜイエスの死」がキリスト教の普及に繋がったのかがわかってくる。一口に言えば裏切った弟子たちの猛烈な反省と後悔なんだけど、イエスと言う人の卓越した温かみがじわじわと「裏切り弟子たち」の胸に沁みとおってくるのを遠藤氏は切々と描くのだ。

西暦というのはイエスが生れたときから始まったと思っていたが、生まれたのは紀元前4年というのが通説らしい。ともかく紀元0年~紀元30年にイエスが生き、その後紀元50年、紀元60年までにエルサレムから地中海沿岸を通ってローマ、スペインまで伝播してしまった原始キリスト教の発信力はものすごいと思うし、それから現代までいろいろに歴史を重ねて(宗教戦争など酸鼻をきわめることがあるし)いるのだから、なんとも怖ろしい勢いと持続。ユダヤ教しかり、イスラム教しかり。いえ、一神教のみならず、主義主張にてこの世を動かす権力争いも宗教のようである。

根本的なことは「人間は誰かに、何かに」寄り添ってもらわないと生きられない」というのは真理だと思うから、それが何であれ続くものならば、互いに認め合っていってほしいものだ。







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最終更新日  2020年11月29日 16時05分55秒
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Re:『キリストの誕生』遠藤周作(11/29)  
七詩  さん
日本にはキリスト教作家といわれる人たちがいますけど、自らその信仰を選んだ三浦綾子や加賀乙彦のような人と、親の代からクリスチャンだった遠藤周作とは違うような気がします。すごく逆説的で違っているかもしれませんが、遠藤周作の宗教をテーマとした小説は、キリスト教に対する違和感があるように思えます。強烈で進行するものに峻厳な義務を課す宗教、異端審問や宗教戦争の歴史を持つキリスト教は日本人には合わないのではないか、そうしたところから日本人である自分なりのキリスト教徒はなんなのだ…という問いかけです。その思索の結実がこの一連の小説なのでしょうけど、奇跡も復活もないキリスト像というのは、もはやキリスト教とは違うような気がします。これらの小説は読みましたが、どうもよくわかりませんでした。 (2020年11月29日 17時28分08秒)

Re[1]:『キリストの誕生』遠藤周作(11/29)  
ばあチャル  さん
七詩さんへ

わたくしなどは西欧の文学に親しむとき、必要な知識要素としての軽い気持ちで知りたいと思う不真面目なものです。

曾野綾子さんや犬養道子さんの作品ではクリスチャンというのがなかなかわかりにくかったりしました。三浦綾子さんでは人間の複雑さな心理から象徴的で、なんとなく理解できた気がしましたが、直接キリスト教を説明していらっしゃらなかったような。

それに比べてわかりやすかったのはこの遠藤周作さんの作品でした。
(2020年11月30日 09時26分47秒)

Re:『キリストの誕生』遠藤周作(11/29)  
alex99  さん
私は遠藤周作の宗教的な作品を読んだ経験は無いのですが
それにもかかわらず、敢えて書かせていただきますが

遠藤周作のクリスチャン作家としてのスタンスについては
七詩さんのご意見にまったく同意見です
彼は曽野綾子さんのような一般的なクリスチャン作家より
よほど正直に苦悩してキリスト教に向きあって
その結果、彼独自の解決を作品にしたのでしょう

ただし、私は、キリスト教を含めた宗教および神の存在と言うものは
ユヴァル・ノア・ハラリ (Yuval Noah Harari)が
「サピエンス全史」で主張している様に
「現生人類の作り出したフィクション」のひとつだ考えています

遠藤周作原作の映画化「沈黙」を前半のみ観たのですが
私自身の宗教に対する立ち位置がそういうものですから
死の危険を顧みず伝道のためキリスト教がすでに禁教となった江戸時代の日本に密入国するイエスズ会の若い伝道師たちの純粋な情熱と過酷な運命が、何とも哀れに見えてしまいました

(2020年12月01日 04時37分32秒)

Re[1]:『キリストの誕生』遠藤周作(11/29)  
ばあチャル  さん
alex99さんへ

>一般的なクリスチャン作家より
よほど正直に苦悩してキリスト教に向きあって
その結果、彼独自の解決を作品にしたのでしょう


そうだと思います
それでも棄教なさらなかった
そこにわたしは注目してしまいました

わたくしも奇跡や降臨は創造だとは思います

でも、神でなくとも何かが人間の心に寄り添ってくれる
その何かがわかるようになりました
というか元からそうしていたような

ですからキリスト教がわかったのではなく
この本を読んで自分の思いを知らされたのでしょう
(2020年12月01日 10時19分05秒)

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