と、何とも堅苦しい理詰めの作家に思われる。しかし面白みばかりが小説ではない。渾身の力を込めて二年半がかりで『人間の壁』を執筆、名も知れぬ大勢の人たちに支えられ、当時の教育問題をえぐった作品になったのであるという。
外科手術のように、人間生活のなかの幹部を切り開いて、病根を取り出そうと努力する。手術がうまく行くこともあり、何とも手ぎわの悪いこともある。
私の創作態度は人体の美を鑑賞するものではなくて、人体の患部を切開しようとする種類の仕事だ。一見残酷に見えることもある。しかし医家は鬼手仏心という。わたしの残酷さは、人間への愛情、というよりは人間への欲だ。

『青春の蹉跌』石川達三 2021年04月10日
『如何なる星の下に』高見順 2018年12月15日
No2 高見 順(昭和の作家) 2018年12月10日
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