沈思黙考中

2007/06/29
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カテゴリ: 私の源氏物語
では、昨日に続いて、賈宝玉のやさしさについて書きます。

賈宝玉の優しさはもっと具体的で純粋であり、痒いところに手が届くような優しさです。
たとえば、自分が飲む栄養たっぷりのスープをなんとかして身分の低い侍女の女の子にも一口飲ませてあげようとしたり、スープがこぼれて自分の手にかかったのに、一生懸命侍女の女の子にやけどしてないか、大丈夫かと聞いたりする。

一事が万事で、とにかく周りの女の子たち(従姉妹と侍女たち)のことを何よりも大事にしていた。自分を顧みないぐらい献身的な愛だったといってもよい。それも、年が10代も前半と考えると、本当にかわいいものです。だから、周りの女の子たちもみんな彼のことが大好きだったのです。

そのため自然に、女の子たちの間では、互いに焼餅を焼きあったり、賈宝玉の前でちょっとしたけんかになったり、すねてみたりしてしまいます。ほとんど10代の子たちですから無理もありません。そのようなときは賈宝玉はいつもあの手この手を使ってなだめようとします。懸命になだめても女の子たちの機嫌がなおらない場合がありますが、途方にくれる彼は「僕さえ死んでしまえばいいんだろ」という必殺技のせりふを吐き出したりします。

賈宝玉と周りの女の子たちとの間に、性的関係は一人とだけ、しかも一回だけだったのを除いてまったくありません。そのたったの一回も、彼が子供から大人になりつつあるシンボルのようなものです。ですから、賈宝玉と女の子たちとの間の愛はまさに純粋無垢な愛だったのです。

そして、個性があってしっかりと自分の考えを持った子ほど、彼は気にかけていくのです。自分の理想的な結婚相手として、あえて自己主張も自己顕示もほとんどしないで、八方美人のように振舞い、みんなからいい子だと評判の薛宝釵(せつ ほうさ)ではなく、孤高の才女であり、人一倍敏感で、プライドが高いがゆえに、時々とげのある話し方をしたり、周りから気難しくてひねくれているとさえ思われている病弱な林黛玉が賈宝玉の本命となったのも、まず彼女と価値観が同じだということもありますが、やはり、彼女のそのような個性的なところが彼の心を引いたということもできるでしょう。

林黛玉は、主人公の最愛ということで、よく紫の上と比較されますが、彼女の性格は、むしろ限りなく六条御息所に近いといっていいと思います。気位が高く、教養豊かで、詩の才能と来れば並ぶものがない。両親に先立たれた彼女は賈宝玉をもっとも自分を理解してくれている人としてひそかに認めていながらも、やはりプライドなどから素直に自分の気持ちを表現することができない。そして、常に自分の嫉妬心に悩まされ、身よりなさからくる寂しい思いのなか、涙に暮れる日々が重なるうち、病気がどんどん重くなっていきました。

賈宝玉もまた彼女の嫉妬心と過敏な性格に苦しんだりしますが、しかし、彼はそんな林黛玉を性格が悪くて付き合うのが面倒だとか疲れるとかといって突き放すのではなく、なおいっそうの愛情を注いでいったのです。



明日は、続いて賈宝玉の純愛の行方について書きます。乞うご期待!





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最終更新日  2007/06/29 12:04:25 AM
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