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今年もまたマックの〝月見シリーズ〟の季節がやって来た!チーズ月見セットは、私の定番注文メニューで大好物♡いつもなら飲み物にカフェラテを選ぶところだが、今回はシェイクにしてみた。それも秋限定のシェイク。『月見マックシェイク長野県産シャインマスカット』は、口の中に残るような甘さはなく、スッキリとした味わいで、ほんのりと芳醇な香りがする上品なシェイクである。ぜひとも当ブログの筆頭管理人にも味わってもらいたい逸品なのだ。※「天高く吟遊肥ゆる秋」ってなことにならないようご注意を! おせっかいな筆頭管理人よりそんなわけで、食べることがますます楽しくなりそうな秋は、読書をするのにも適した季節。秋の夜長、お気に入りの一冊を手に取り、ゆっくりページをめくってみるのも一興かと。今回は特にテーマはなく、単にた行で始まる作家のおすすめ小説だ。例によって3冊ご紹介しよう。①高村薫『レディ・ジョーカー』この小説を読んだのは、もうずいぶんと昔のことになるが、とにかく衝撃的だったのは覚えている。単なるミステリー小説ではなく、いわゆる〝社会派〟という冠が付くジャンルのものだ。あらすじや感想などの詳細は、【読書案内】のページでも記述しているので、良ければ参考にご覧いただきたい。ちなみに『レディ・ジョーカー』は、1999年版(国内編)『このミステリーがすごい!』において、堂々の第1位を獲得している。②武田邦彦『フェイクニュースを見破る武器としての理系思考』この御仁を有名にしたのは、フジテレビで放送していた『ホンマでっか⁈TV』や、読売テレビの『たかじんのそこまで言って委員会』あたりの番組で人気を博したのだと思われる。最初の頃は胡散臭く見ていた私だが、ある時、「むやみにテレビに出ている〝専門家〟と呼ばれる人たちを信用しない方がいい」と武田氏が発言したことから、私の見る目が変わった。武田邦彦という人物の、主義・主張をもう少し知りたいと思った瞬間である。武田邦彦は、東大の教養学部基礎科学科を卒業。東大の工学博士の学位を取得している。耐震性を考慮した原子力発電の推進と、兵器にならない原子力発電所を開発。そもそも〝地球温暖化騒ぎ〟の発端は、朝日新聞の記事にあると糾弾した第一人者である。平成31年には、当時の首相(安倍総理)が主催した〝桜を見る会〟に出席。現在は保守派政党である参政党(2020年設立)のアドバイザーを務めている。※Wikipediaと著者プロフィールを参照さて『フェイクニュースを見破る武器としての理系思考』についてだが、この著者がスゴいのは、現代の日本人の知的レベルを実によく理解しているという点である。本来なら、学術的な内容かと読むのがためらわれるところ、蓋を開けてみると、高校卒業レベルなら誰でも理解できるように、噛み砕いてわかり易く解説しているのだ。そこから導かれる答えーー本書のテーマはーー必ずデータを見て、自分で考えることの大切さ、だと思う。とにかく、人の言うことに流されるな、鵜呑みにするな、という警鐘であると私は捉えたのである。③谷崎潤一郎『細雪』私の大好きな作家ベスト3には入るので、こちらは絶対にはずせない。谷崎作品の中で、圧倒的な完成度と優雅さと、さらには格調高さを誇るものである。長編なので、1日や2日で読了できるものではないけれど、ワンシーズン使って、少しずつ読み進めていくのも楽しいかもしれない。谷崎潤一郎の描く女性は、とにかく〝個〟がある。世俗の荒波に負けない強さがあり、しかも気高い。上方を舞台にした旧家の美しい四姉妹が織りなす人間模様は、さながら王朝文学である。谷崎作品の中で、代表作と言ったら間違いなくこの『細雪』しかあり得ない。人生に一度は読んでおくべき必読書と言っても過言ではないだろう。以上の3作品が、私のおすすめするた行で始まる作家の作品である。一方、当ブログの筆頭管理人はどんな作品をエントリーしてくれるのだろう?それでは最後に、筆頭管理人のおすすめするた行で始まる作家の作品をご紹介願おう! 呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン! ってことで筆頭管理人です。「た行」といえばこの人しかありません。山頭火の詩人の心に触れたくて、彼を追い四国を歩き遍路しました。室戸では、山頭火の後ろに立って大海を眺めている気になりました。誠に、なんぼ眺めても飽かないものでした。座右本の山頭火日記と句集は手製のブックカバーをこしらえました。山頭火湯飲みはペンケースに使っています。なお、山頭火を世に出したと言っても過言ではない大山澄太氏の「山頭火の道」は近年古本で手にして以来、私の宝物です。季節もよくなりましたので、また山頭火を追って四国に行こうかと、画策中の私目でありました。~~~~~~~~ご参考まで(^o^)/はコチラです。はコチラです。はコチラです。そして!当ブログでは200冊以上の読書案内を投稿しております。ご覧いただけましたら幸いです。★吟遊映人『読書案内』 第1弾(1~99)はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第2弾(100~199)はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第3弾(200~ )はコチラから
2023.09.30
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最近は何でもオブラートに包んだような甘い言葉の羅列が多過ぎる。心地良過ぎるのは返って信憑性に欠けるし、共鳴できない。世の中「フェイク」に溢れていて、物事がハッキリとせず、曖昧でぼんやりしている。それはそれで良いのかもしれないけれど、できれば「リアリティ」に触れたい。せめて、小説の中だけでもーーそう言う気持ちで読書と向き合っていると、不思議に小説の方から私に近づいてくれるのだ。本当の意味で「リアリティ」を追求したい人、そう言う方々におすすめしたいのが次の3冊である。それでは、さ行で始まる作家の作品を紹介しよう。①島尾敏雄『死の棘』これはほとんど著者本人の私小説に近いものである。ざっくり言ってしまえば、著者の浮気により、妻が激しく憤り、嫉妬し、最終的に精神に異常を来たすまでになる内容となっている。とにかく夫の行為が許せず、朝から晩までネチネチとその不貞を責め続ける妻。夫は我慢に我慢を重ね、己の不貞の赦しを乞い、半狂乱に陥る妻を何とか「こちら側」に繋ぎ止めようとする。これを究極の愛と言ってしまうのは簡単だが、実際に読んでみると、そんなに生やさしいものではないことが理解できる。とにかく一つ一つの出来事が詳細で緻密に描かれているので、疑いようもなく生々しい。恐怖さえ感じる世界観となっている。読売文学賞受賞作品である。②城山三郎『男子の本懐』城山文学は、何を取ってもハズレがない。男性読者から支持が高いのも特徴的だが、おそらく近代日本の政治や経済史に登場する人物を生き生きと清々しいまでに描いている作家だからであろう。女性の読者の中には、完璧な男社会の構図に批判めいた感想を持つ人もいそうな気がするが、そこは黙って最後まで読んで欲しい。この小説の意味とか意義は、現代のLGBTとは対極にあるものだし、何より、近代日本の政治経済を動かした男たちのドラマーー人物伝として楽しんでもらいたい。③瀬戸内晴美『美は乱調にあり』あくまで私の個人的な意見だが、私は瀬戸内寂聴が出家・得度する前の作風の方が好きだ。もっと言ってしまうと、文学としても優れているような気がするからだ。こちらの『美は乱調にあり』も初期の作品だが、見事な伝記小説に仕上げられていて、圧巻である。最近の高校では、近代の社会主義運動のことなんかを授業で教えたりするのだろうか?ざっくりで構わないので、伊藤野枝と社会主義者・大杉栄との出会い、平塚らいちょうとの交流などを授業で扱ってくれたら嬉しい。それがムリなら、やはり瀬戸内晴美の『美は乱調にあり』を読んで、28歳という若さで生涯を終えることになる伊藤野枝の、アナキズム運動に没入していく半生を知るべきだろう。「過渡期を生きた女性の記録」として大変素晴らしい作品なので、リベラルな女性について知りたい人は、ぜひとも一読をおすすめする。さて、今回は「リアリティ」を追求したいと思った時に読む3冊を紹介した。さ行で始まる作家に限定してしまったことで、上記の3冊にしぼったわけだけど、本来ならもっともっと紹介したい作品がある。また今後も折を見て「リアリティ」に溢れた作品を紹介していきたいと思う。では、恒例の筆頭管理人による「リアリティ」を感じる、さ行で始まる作家の作品をご紹介いただこう!(参考までに、筆頭管理人の人となりをシンプルに言うと、「嫌いな作家の小説でもきちんと読了する」真摯なオジさんですヨ)~~~~~~~~なんだか吟遊さんの手のひらで転がされている気がしますが・・・(-_-;)それに、私は決して真摯でもありませんけどね。ということで、吟遊さんのカテゴリーに沿うのはこれしかないでしょう!司馬遼太郎/二十一世紀に生きる君たちへ帯にある通りです。『あなたの大切な人と一緒に読んでください。』それが初老の域に入った私のお願いです。『私の人生は、すでに持ち時間が少ない』司馬さんの綴った一文を、私はかつてぼんやり眺めたものですが、この年になり司馬さんの思いがよく理解できた気がしています。そして願わくは・・・これを読んで、次に司馬さんの白眉である〈竜馬がゆく〉に手をのばしていただければ私は本望です。あと一つ。司馬さんは大の落語通であった。私も落語好きだから、作品で落語の話題を見つけると嬉々として読んだものです。その中で、桂米朝師の『米朝ばなし』のあとがきにある司馬さんの『米朝さんを得た幸福』を目にした時は、無常の喜びを感じ、それこそ狂喜乱舞したものです。しかもその天分は、明治・大正の春団治のそれではない。春団治は、いわば私小説の世の名手のようなもので、自分という素材を芸術化したといえる。司馬さんの作品に触れ、米朝師の噺を傾聴すれば、膝の一つもポンとたたき『そうだ、その通り!』とごちることは間違いでしょう。期待してます(^_−)−☆~~~~~~~~ご参考まで(^o^)/はコチラです。はコチラです。そして!当ブログでは200冊以上の読書案内を投稿しております。ご覧いただけましたら幸いです。★吟遊映人『読書案内』 第1弾(1~99)はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第2弾(100~199)はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第3弾(200~ )はコチラから
2023.08.05
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最近、本棚の整理を始めた。以前は、この先読まないであろう書籍を、近所のブックオフへ持ち込んでいたのだが、ろくな収入にもならないし、むしろ持って行く労力の方が大変なので、やめた。本棚の整理とは、文字通りのもので、新しく買った組み立て式の本棚に、キレイに収納するものである。作家ごとにあいうえお順に並べているのだが、これが意外と楽しい。一冊一冊、使い古しの歯ブラシでホコリを払いつつ、しまっていく作業である。これでは遅々として整理整頓が進まない。今ちょうど「か行」で始まる作家の文庫本を収納し終えたところだ。とても有意義な時間だった。息子が、そんな私の本棚を覗きながら、「再読したいやつとかある?」と聞いて来た。私はいろいろと悩んだ末、「か行」で始まる作家の再読したいぐらい好きな3冊を選んでみたので、今回はそれらをご紹介しようと思う。①川上弘美・著『神様』短編が9つ収められているのだが、どれも短い。短編と言うより、むしろショートショートのような作品である。ラノベ感覚で楽しめるが、れっきとした純文学である。とくに好きなのは表題作だが、何とも言えない優しい気持ちになり、生きとし生けるもの全てに愛しさを感じるものである。ドゥマゴ文学者、紫式部文学賞を受賞している。②川端康成・著『伊豆の踊子』川端康成だけは外せない。どうしても。日本初のノーベル文学賞を受賞しているからと言うだけでなく、一つ一つの作品が神秘的で美しいからだ。今回、『伊豆の踊子』を選んだのは、私も息子も伊豆の生まれで、この作品だけは親子共通の「座右の書」にしておきたいと言う願望ゆえだ。川端康成の生い立ちは、ある意味、孤独と悲哀に彩られている。文庫本の巻末にある年譜を、何となく見ていると、幼い頃に両親を亡くし、次に祖母、さらには姉、祖父と、次々に身近な人を失っている。しかも、15歳になるまでの間にだ。そんな川端康成の背景を心に留めながら『伊豆の踊子』を読むと、切なくてもの悲しい。伊豆と言う自然美に溢れた土地で、偶然出会った踊子との刹那的な恋。人生のほんの一瞬の出来事を、迸(ほとばし)るような瑞々しさに加え、静謐に描いた作品なのだ。③車谷長吉・著『赤目四十八瀧心中未遂』もともと私小説が大好きな私は、大きな声では言えないが、芸能人の暴露本も含めてゴシップを扱った作品が大好きだ。車谷長吉は、晩年こそ大胆な私小説から一線を引き、何やら紀行文とか随筆のような、つらつらと日常を描く流儀に変更してしまったが、初期の作品は本当に素晴らしいものだった。とくに、『赤目四十八瀧心中未遂』は直木賞も受賞していて、車谷の得意とする暗い闇の部分を這うような文体である。巷にはそれこそ吐いて捨てるほどの小説が量産されているけれど、そのうちどれほどの作品が後世に残るものだろうか?再読したいと思うだろうか?私は車谷が、それこそ命を削って書いたのではと思われるこの『赤目四十八瀧心中未遂』を読んだとき、必ず再読したいと思った。人間の「業」と向き合うとき、この作品のことが必ず思い出されるのだ。さて、ここまでは私の再読したい好きな3冊を紹介したけれど、筆頭管理人にもきっとあるはず(笑)何しろ文学部卒の文学青年(壮年?)ですから‼︎それでは筆頭管理人の、「か行」で始まる作家の、再読したいぐらい好きな作品をご紹介いただこう!!筆頭管理人です。あたしゃ、青年とか言われても踊りゃしませんよ(-_-)でも呼ばれりゃノコノコ出てきます。ということで「か行」と言ったらこの御仁にしてこの一冊でしょう!当方、あと少しで前期高齢者の末席に座す身となりましたが、人生九十年として後半の人生を、小林秀雄とこの一冊のおかげで、どれほど豊かにしてくれたことでしょう。これを読んで目から鱗が落ち、難解からずっと積ん読となっていた小林の著書を読み進めることができ、かつ面白い様に頭の中に入ってきました。小林の本質って〈感情〉なんですよね。だから理論を読むのでなく、小林の感情を読み取る。すると、「なんだ、小林はゴッホや宣長やモーツァルトが大好きなんだ。つまりどれほど好きか、その好きさ加減をツラツラと綴っているようなもんだ!」と思え、小林をとても愛しく感じ、小林が大好きになりました(^_-)ということで老婆心まで(^o^)/小林秀雄をはじめてお読みになる方は、小林がどれほどその対象が好きなのか、それをお感じいただきながら、楽しんで読み進めていただければと思います。なお当方、該当書物を読んで以来、小林の大好きなゴッホを私もこよなく愛するようになりました。好きな人が好きなものは好きになるもんでしょ(*^_^*)今ではiPadの待ち受け画面はゴッホの糸杉です。~~~~~~~~なおご参考まで。当ブログでは200冊以上の読書案内を投稿しております。ご覧いただけましたら幸いです。★吟遊映人『読書案内』 第1弾(1~99)はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第2弾(100~199)はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第3弾(200~ )はコチラから
2023.07.22
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今回、筆頭管理人がノリノリで提案してくれた企画は、〝無人島へ持って行きたい本〟を紹介するというもの。ここで言う〝無人島〟というのは、その名のイメージ通りで、未開の土地であり娯楽はなく、話す相手もいない。漂流物や自生の樹木で作ったほっ建て小屋に、孤独と闘いながら日々自給自足の生活を送るーーという過酷な環境の中、たまたま自分が所持していたバッグの中に、3冊だけ本が入っている。さて、あなたにとってその3冊とは何か? どんな本が思い描かれただろうか?まぁそんな状況下でのんびり本なんか読んでいられないというのが現実だろうが、仮に、娯楽のない孤独な世界をイメージして欲しい。果たして私はどんな3冊を思い浮かべるのだろう?50を過ぎた今、もう恥も外聞も捨てたわけじゃないが、無人島には純文学モノとか哲学、思想系の小説なんか絶対に持っていかない。どうせそんな過酷な環境の中、長生きは望めないだろう。つかの間のひと時を癒してくれたり、現実から逃避させてくれるようなお話を繰り返し読みたい。そんな私が選ぶ本は、ラノベ(ライトノベルの略)である。私が学生時代の頃は、〝少女小説〟と呼ばれていたジャンルに相当すると思われるが、現在では若干違うかもしれない。それでは私が無人島へ持って行くだろう3冊をご紹介したい。①『楽園の略奪者』荷鴣・著 ソーニャ文庫外界と全く接点を作らないように、生まれたときから閉ざされた世界で生きている16歳のミースが、好奇心から居室をこっそり出てしまうところからストーリーは展開する。ミースはやんごとなき血統の少女だが、ワケがあって外界とは遮断した暮らしを送っていたため、汚れを知らず純粋無垢。そんなミースが一歩外に出てしまったことで、ヨナシュという異国の冷たい目をした男に攫われてしまう。それは人違いの誘拐だったが、純粋無垢のミースには、初めての未知なる冒険だった。一方、ミースの人懐っこさと純粋さで、すっかり毒気を抜かれるヨナシュは、人違いと知った後もミースを殺さず、何かと世話を焼きつつ共に旅をする。お互い、いつの間にか惹かれ合い、心を通わせ合うが、そんな2人の旅は決して許されるものではなかったのだ。この作品はラノベとは思えないほど完成度が高く、ラストが素晴らしい! 物語の背景は重く、グロテスクなシーンもあるが、そんなことも気にならないぐらい物語は魅力的だ。16歳の小柄で細身の少女が、高身長でイケメンでめっぽう強い男性と繋がる閨のシーンは、そのギャップもさることながら官能的だし妖艶だしクセになる(?)そして何よりイラスト(挿し絵)が最高に素晴らしい‼︎無人島に持って行きたくなる筆頭書なのだ。②『黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい』ふじさわさほ・著 ベリーズ文庫荒くれ者達から襲われていた美しいフェリシティを助けた、一騎当千の強者騎士であるギルバート。しかしフェリシティは敵国の王女だった。フェリシティには様々な困難がまとわりつき、可憐で儚げでギルバートは放っておけない。しかもフェリシティにはすでに婚約者がいたが、政略的なもので、決して望んだものではなかった。フェリシティは徐々にギルバートに惹かれていくが、ギルバートも同様で、フェリシティを愛さずにはいられなかったのだ。この本の残念なのは、まず表紙のイラスト。内容と全く合っていないなぁと思うのは、私だけだろうか? さらにはタイトルも。まるで2時間ドラマの長いサブタイトルみたいだ。だがそれらを差し引いても内容は感動的である。『アーサー王と円卓の騎士』を彷彿とさせるものだし、まるで英国文学を翻訳したような文体となっている。乙女心を鷲掴みするような、愛と感動の作品なのだ。③『獣人隊長の(仮)婚約事情 突然ですが、狼隊長の仮婚約者になりました』百門一新・著 一迅社文庫アイリス男の子のようにわんぱくで活発的な少女カティは、すでに両親を亡くしていることから、伯爵貴族である伯父のもとで伸び伸びと暮らしている。ある時、獣人貴族のレオルドは、成長変化のため理性を失ってカティに発情してしまい噛みついてしまう。結果としてそれは獣人にとって求婚を示す痣を残してしまったので、慣例としてその痣が消えてなくなるまで仮婚約者になることが決まった。成長変化の時期を終了し、冷静さを取り戻したレオルドは、カティのことを男の子だと勘違いし、自分が同性に求婚してしまったような形になったのを最初こそ後悔するが、なぜかカティのことが可愛く見えて仕方がない。一方、カティは、狼獣人のレオルドの体格が大きく、いつも怒ったような表情をしているため、半ば恐怖感を隠せない。ところがしだいにレオルドがカティにお菓子をくれたりスキンシップを求めてくるため、少しずつ心を許していくようになる。この作品は〝ザ・ファンタジー〟と言った方が伝わりやすいと思う。まず獣人という種族が存在しないリアルな今を生きる私にとって、とにかく面白かったとしか言いようがない。獣人族と人族が種族の垣根を超えて愛し合うストーリーは、LGBT問題に揺れる今の時代にピッタリなテキストかもしれない。(著者はあえてそんなことは考えもせず、素直に、ユニークで心がほっこりするような作品を届けたいとペンを取ったに違いない)様々な動物や生き物に遭遇する無人島に持って行ったら、きっとつかの間の癒しになるのではと、この本を選んでみた。さて、私の選んだ3冊は上記の通りだけど、言い出しっぺの筆頭管理人が持って行く3冊はどんなものだろうか?ここからは筆頭管理人が選んだ〝無人島へ持って行きたい本〟である。では、どうぞ〜◆筆頭管理人記すでも、無人島に三冊を持って行っても読むかどうかは別問題ですよねぇ・・・(^_^;)きっと、そも、この課題は吟遊さんがあまりに暇そうで、『小人閑居して不善を為す』となりそうだったもので、「つまらないことをする前にひとつ助言をしてやろう!」と提案したわけで、まさかこちらに飛び火するとは思ってもみなかった(-_-;)まあ、私も聞かれればお答えしますが、そうは言っても当方すでに前期高齢者の仲間入りを控えて、吟遊さんより先が少ないぶん、無人島に行っても三冊は必要はないわけですよ。ということで私は一冊で十分(^_-)vそして(^o^)/その一冊と言えばこれしかありません!!中村元著 ブッダのことば(スッタニパータ)仏教をこれほど明確に定義した言葉は他にはあるでしょうか。「どのように生きたらいいのか」それを追求したら無人島でもきっと人間らしく充実した時を過ごせることでしょう。余談まで、私はこの座右本を書籍とkindleの両方で所有するものです。無人島でも使えるようにダウンロードしてあるので、その折は両方持参したいと思います(*^_^*)でも・・・問題は充電か(>_<)★吟遊映人『読書案内』 第1弾(1~99)はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第2弾(100~199)はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第3弾(200~ )はコチラから
2023.07.01
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今さら何でこんなテーマを思いついたのかと言えば、二十代の息子から「何か、オレでも読めるヤツある?」と聞かれたのがきっかけだ。息子は現代っ子らしく、活字は仕事で仕方なく読んだり書いたりする程度で、好んで本なんか読むタイプではない。そんな読書初心者でも読みやすく、かつ文学への入口に近付ければと思い、企画してみた。昭和生まれの私の本棚から選んだ小説は、どれも最近のトレンドとはかけ離れている。だが息子は「それでいいよ、むしろそれがいい」と言ってくれた。ならばと思い、まずは〝あ行〟で始まる作家から3作品を選んでみた。参考になれば幸いだ。短篇が7作収められている。カテゴリとしてはいわゆる大衆小説というものだが、さすが直木賞作家の書く世界観はどれもドラマチックで花がある。代表作に『鉄道員(ぽっぽや)』『壬生義士伝』等があるけれど、我が息子のような初心者には、まず読み切りサイズの短篇から活字を追う訓練をさせたいところだ。なのでまずは『月のしずく』をすすめておく。※余談だが、我が子がもし息子ではなく娘だったら、赤川次郎の『ヴァージン・ロード』をすすめたかもしれない。赤川次郎と言えばミステリー作家の代表格のような気もするが、実はこの婚活小説(?)こそ赤川次郎の白眉と言っても差し支えない。アラサーのOLが友人の結婚、弟の結婚、そして自分自身の結婚について、真摯に向き合うストーリーである。これから夏に向けて、身の毛もよだつような物語が涼しくて良いだろうと思った(笑)いわゆるホラー小説というカテゴリに入るものだ。とは言え、山本周五郎賞を受賞した完成度の高い怪奇文学である。文庫本には表題作ほか3作が収められている。岡山地方の方言で語られる作風となっているが、これがまた恐怖感を煽るから不思議だ。この小説を読んで『雨月物語』みたいな古典文学に目覚めてくれたら、、、という期待も込めておすすめしたい。作品のテーマを探るのは難しくても、この小説の世界観に浸って欲しい、、、そういう類の内容である。私も二十代でこの小説と出合い深い感銘を受けたので、息子にもぜひ読んでもらいたいと思う。純文学へ一歩を踏み出す際、まずはこの小説をおすすめしたい。芥川賞作家の紡ぐ〝文学とは何ぞや〟を知るのに最適な小説なのだ。映画化もされているが、私としてはだんぜん小説で読む方がいいと思う。繰り返し繰り返し読みたくなる1冊である。さて、ここまでざっくり紹介させてもらったけれど、これはあくまで母親的立場から考える読書案内である。当ブログの筆頭管理人は文学部卒で、また違った視点から本の紹介をしてくれるに違いない、、、と思ったところで最後は筆頭管理人の本棚より、読書初心者におすすめする〝あ行〟から始まる作家の作品をいくつかご紹介いただこう!筆頭管理人です。「あ行」の作家ときたらまず挙げられるのは氏で、紹介するのはやはりこれでしょう!「なんにも用事がないけれど、汽車に乗つて大阪へ行つて来ようと思ふ」冒頭のこの一文に魅せられ、阿房列車の読者になったという同輩が数多おります。そして敬愛する新聞記者の乾正人氏もその口ですが、氏は小学6年生の時に阿房列車を読み『それ以降魂を揺さぶられるような作品に出会っていない』といい切ります。なお、阿房列車は全三巻になりますが、軽妙な文体もあり読了する事は容易です。吟遊さんのご子息にもご一読いただき、百閒先生を倣い大阪に行ってもらいたいものです。次にこちら。小生、出家得度の折に再読し、僧〈業行〉に大変感銘を受けました。誠に厄介な小説ですが、あえて若者におススメしたい一冊です。願わくは、一言半句を噛みしめるように読み進められますことを。以下〈天平の甍〉の白眉を書き写します。~~~~~~~~普照にも、鑒真の渡日と、業行が一字一句もゆるがせにせず写したあの大経典の山と、果して故国にとってどちらが価値のあるものであるかは、正確には判断がつかなかった。一つは一人の人間の生涯から全く人間らしい生活を取り上げることに依って生み出されたものであり、一つは二人の人間の死と何人かの人間の多年に流離の生活の果てに初めて齎(もたら)されたものであった。それだけが判っていた。普照はふと、この老僧は日本へ帰って何をするのであろうかと思った。僧侶としての特殊な資格も持っていなければ、一つの経典に対する特殊な知識も、恐らく持っていないであろうと思われた。帰国の上に約束されているものは何もなかった。 すると、そうしたことを考えていた普照の心の内部を恰(あたか)も見抜きでもしたかの如く、「私の写したあの経典は日本の土を踏むと、自分で歩き出しますよ。私を棄ててどんどん方々へ歩いて行きますよ。多勢の僧侶があれを読み、あれを写し、あれを学ぶ。 仏陀の心が、仏陀の教えが正しく弘まって行く。仏殿は建てられ、あらゆる行事は盛んになる。寺々の荘厳は様式を変え、供物の置き方一つも違って来る」~~~~~~~~なおご参考まで。当ブログでは200冊以上の読書案内を投稿しております。ご覧いただけましたら幸いです。★吟遊映人『読書案内』 第1弾(1~99)はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第2弾(100~199)はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第3弾(200~ )はコチラから
2023.06.10
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