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2023.08.14
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カテゴリ: カテゴリ未分類

 台湾の頼清徳副総統は8月12日にニューヨークを訪れた。パラグアイのサンティアゴ・ペーニャ次期大統領の就任式に出席するため、同国へ向かう途中に立ち寄ったということになっている。頼は台湾へ戻る際、サンフランシスコに寄る予定だという。

 頼は蔡英文総統と同じように台湾を中国から独立させるとしている政治家だが、蔡英文総統の政策が台湾で支持されているとは言えない。昨年11月に実施された地方選挙では蔡英文の民主進歩党が馬英九の国民党に大敗している。

 ドイツのアンナレーナ・ベアボック外相は昨年の8月31日から9月2日にかけてプラハで開かれた「フォーラム2000」で「ドイツの有権者がどのように考えようとも、私はウクライナの人びとを支援する」と発言した。アメリカ政府の命令に従い、「ウクライナの人びとを支援する」ということだが、蔡や頼に残された道はアメリカ政府の命令に従い、「独立を主張する」しかない。ベアボックは「ロシアと戦争している」とも語ったが、蔡や頼は「中国と戦争している」ということだ。

 台湾は日本や韓国と同様、東アジアの軍事的な緊張を高めようとしている。昨年8月2日、アメリカの下院議長だったナンシー・ペロシが台湾を訪問、1972年2月にリチャード・ニクソン大統領が中国を訪問してから続いていた「ひとつの中国」政策に挑戦したところからアメリカと中国との関係は一気に悪化した。

 しかし、その前に日本も中国との関係を悪化させている。2010年6月に発足した菅直人内閣は閣議決定した尖閣諸島に関する質問主意書の中で「解決すべき領有権の問題は存在しない」と主張、1972年9月に日中共同声明の調印を実現するために田中角栄と周恩来が合意した「棚上げ」を壊したのである。

 この合意で日中両国は日本の実効支配を認め、中国は実力で実効支配の変更を求めないことを決めていたわけで、日本にとって有利な内容。それを壊した理由は日本と中国との関係を悪化させることにあったとしか考えられない。

 そして同年9月、海上保安庁は尖閣諸島付近で操業していた中国の漁船を取り締まり、漁船の船長を逮捕した。棚上げ合意を尊重すればできない行為だ。その時に国土交通大臣だった前原誠司はその月のうちに外務大臣になり、10月には衆議院安全保障委員会で「棚上げ論について中国と合意したという事実はございません」と答えているが、これは事実に反している。

 こうした状況について総理大臣だった​ 安倍晋三は2015年6月、赤坂の「赤坂飯店」で開かれた官邸記者クラブのキャップによる懇親会で、「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」と口にしたと報道されている ​。安倍政権下、着々と対中国戦争の準備が進められていることを明らかにしたのだ。

 アメリカ軍を前面に出した軍事侵略を展開したジョージ・W・ブッシュ政権に対し、2009年1月から大統領を務めたバラク・オバマは師匠であるズビグネフ・ブレジンスキーに慣い、ムスリム同胞団やネオ・ナチのような手先を使った侵略を始めた。2011年春にはリビアやシリア、13年11月からはウクライナ、14年9月には香港といった具合だ。

 ウクライナではネオ・ナチのクーデターで2014年2月にビクトル・ヤヌコビッチ大統領が排除され、その直後からクーデター体制と反クーデター派住民との間で内戦が始まった。この内戦でクーデター軍はドンバスの住宅地を攻撃、2022年までに約1万4000名の住民がころされたと報告されている。

 クーデター体制は内務省に親衛隊を組織したが、その中核部隊であるアゾフ特殊作戦分遣隊(アゾフ大隊)が拠点にしていたマリウポリ、あるいは岩塩の採掘場があるソレダルにはソ連時代に地下施設が建設されていた。核戦争に備えてのことだったという。それらを利用し、アメリカ/NATO/ウクライナ軍は2014年から8年かけてドンバスの周辺に要塞線を築いている。2022年に入ると、その要塞線近くにキエフ政権の部隊が集結、大規模な軍事作戦が始まると言われていた。後にロシア軍が回収した文書によると、キエフ側は3月に攻撃を開始する予定だったようだ。

 その直前、2022年2月21日にロシアのウラジミル・プーチン大統領はドンバスの独立を承認、2月24日にウクライナの軍事基地や生物化学兵器の研究開発施設などを巡航ミサイル「カリブル」などで攻撃しはじめた。部隊がドンバス周辺に集まっていたこともあり、短期間にキエフ政権側は大きなダメージを受け、そして停戦交渉が始まる。

 その交渉を仲介したのはイスラエルの首相だったナフタリ・ベネットだ。​ そのベネットをインタビューした5時間近い映像が2月4日に公開された ​。話し合いで双方は妥協に応じ、停戦は実現しそうだった。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はNATOへの加盟を諦めるとしたようだ。

 2022年3月5日にベネットはモスクワでプーチンと数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけた。その足でベネットはドイツへ向かい、オラフ・シュルツ首相と会っている。​ ウクライナの治安機関SBUがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺したのはその3月5日 ​だ。

 4月に入ると西側の有力メディアはロシア軍がブチャで住民を虐殺したと宣伝し始める。マクサー・テクノロジーズなる会社から提供された写真を持ち出し、3月19日に死体が路上に存在していたと主張しているが、疑問が噴出した。

 そうした中、​ 4月9日にボリス・ジョンソン英首相はキエフへ乗り込んでロシアとの停戦交渉を止めるように命令 ​する。そして4月30日にナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めている。ペロシは台湾でもウクライナでも戦火を燃えがらせようとしている。

 安倍晋三が「赤坂飯店」で「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」と口にした翌年、自衛隊は軍事施設を与那国島に建設した。2019年には奄美大島と宮古島にも作り、2023年には石垣島でも完成させた。

 アメリカの国防総省系シンクタンク​ 「RANDコーポレーション」が昨年に発表した報告書 ​によると、アメリカ軍はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲しようとしているが、配備できそうな国は日本だけ。その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにする。そしてASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたという。

 2021年9月にオーストラリアはイギリスやアメリカと「AUKUS」を創設したと発表。それと同時にアメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられた。ジョー・バイデン米大統領はオーストラリアへ売却する3隻のバージニア級原子力潜水艦を2030年代の初めに建造するという。そして2022年1月には「日豪円滑化協定(RAA)」、23年1月12日には「日英円滑化協定(RAA)」が締結された。そして韓国の尹錫悦大統領もアメリカに従属する政策を推進いている。

 2013年11月にアメリカのネオコンが始めたウクライナ制圧作戦はすでに破綻している。ドイツなどEUの破壊には成功したが、ロシアは健在であり、しかもロシアと中国を同盟させてしまった。21世紀に入ってアメリカが繰り返してきた軍事作戦は自らの弱さを証明することになり、それまで従属していた国々の離反を招いている。バイデンを含む軍事強硬派は東アジアでの戦争に賭けようとしているのかもしれない。






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最終更新日  2023.08.14 00:00:08


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