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3.3 日本産果物の対中輸出の機会3.3.1 中国経済の高成長と富裕層の出現1978年から実施された改革開放の政策により、中国の経済は目覚しい発展を成し遂げた。2003年史上初めて1人当たりGDPが1000ドルを超えた。2004年中国のGDPは13兆6515億元で、前年比9.5%の成長を遂げ、イタリアを抜いて世界第6位にランクされている。特に2001年11月10日にWTO閣僚会議で中国のWTO加盟が正式承認され、以後、徐々に中国もグローバリズムの中での競争に晒されてきた。表3.2 中国の国内総生産額と成長率の推移(略)中国では最も経済成長が進んでいる地域が三つある。一つは香港と隣接している広東省の珠江デルタ地域、二つ目は上海と上海市の周辺地域、つまり長江デルタ地域、三つ目は渤海湾地域、つまり北京、天津、青島、大連の四つの都市とその周辺地域である。2003年時点で人口100万人以上、1人当りGDP3,000ドルを超える大都会は24あり、そのうち21はこの三大成長エリアに集中している。この三大成長エリアが最も豊かな地域で、巨大市場そのものである。この三つの地域の総人口は約3億人にのぼる。中国国家統計局によると、2004年の長江デルタ地域の一人当たりGDPは3万5147元に達し、現在の為替レートで換算すると4247米ドルになった。世界銀行の発展報告によると、一人当たりGDP3000米ドル前後は近代化の境界とされている。統計専門家は、長江デルタ地域は中進国水準に達したと考えている。統計によると、2004年、長江デルタ地域のGDPは2万8775億元で、全国シェアは前年の20.4%から21.1%に上昇した。長江デルタ経済の成長平均は15.6%に達し、全国平均水準より6.1ポイント上回っている。長江デルタは既に全国経済成長の重要貢献地域となっている。長江デルタ地域は、上海、江蘇省の8市、浙江省の7市から成る。2004年、上海のGDPは7000億元を突破し、蘇州、杭州、無錫、寧波のGDPは2000億元を超え、南京のGDPは2000億元に近づいている。上海では年収10万元以上の富裕層が、既に100万人を超えた。北京では、100万元以上の家庭財産を持っている人も100万人を超えた。2004年の中国人の海外旅行者は、前年比40%増で2850万人と爆発的に増えている。中国の新車販売台数であるが、2004年は439万台で前年に比べ114万台増加した。この114万台の増加は世界でも例のない数字である。ドイツのBMW最高級車がドイツ以外で最も売れているのが中国であり、その背景にも富裕層の存在がある。全国で何千万人の富裕層の出現は、ビジネスの観点からは非常に大きな意味をもっている。大きな潜在能力があり、新たな可能性が広がっている。3.3.2 中国の消費者の健康・環境意識の高まり消費者の健康・環境意識の高まりの中で、より環境や安全性に配慮した果物の生産・供給が求められている。中国の大都市は食が豊かである。全国各地、世界各国から豊富で多彩な食材と加工食品が集まってくる。消費者としては買物が楽しいはずなのだが、農薬の残留や添加剤・防腐剤の使用が基準値を超えていたり、さらには賞味期限切れや変質、劣悪な品質の食品が出回ったり、内容物はニセモノで売れ筋商品の包装箱を使いまわしたりと、さまざまな問題が発生している昨今、自らの健康に直結するだけに食品の安全が気になるはずである。実際のところ消費者が安全についてどういう意識をもっているのか、2004年「中国食品報」紙が北京、上海、広州、深セン、武漢、重慶、成都の7つの大都市で2,415名の市民を対象に聞き取り調査を行い、興味深い結果を発表している。食品の品質と安全について、「非常に重視」が40.3%、「比較的重視」が35.4%、合計で75.7%の人が「重視する」と回答しており、関心は相当に高かった。市場で販売されている食品を安全だと思うかについて、「とても安心」が23.3%、「比較的安心」が21.3%、合計で44.6%が「安心している」と回答し、「普通」の31.6%と合わせると76.2%の人が市場での買物にそれほど抵抗を感じていないという結果が出た。一方、「少し不安」が21.3%、「とても不安」が2.5%、合計で23.8%の人が「不安」を感じていた。食品を購入するときに最も関心があることは、1位が品質で42.4%。2位が新鮮さと安全でともに36.5%であった。それから価格が25.4%、信頼できる生産者かどうかが11.2%と続いている。どうすれば安全な食品を購入できるかについては、1位が正規店で購入することで31.4%、2位が知名度のある食品を買うことで23.8%、3位がよく見て慎重に選ぶことで17.9%、4位が天然で栽培・成長した食材を選ぶことが14.3%となっている。このほかに国家の検査・認証の有無を基準にする人が5.4%、知人からの推薦が4.3%であった。こうした調査結果から見ると、消費者は食の安全に対して強い関心をもっているため、買い物をする際にはできるだけ安心できる生産者及び正規の流通ルートをもつ販売者を選んでいることが分かる。生産の面では、同じ食品品目において数多くの銘柄が激しい競争を繰り広げているが、知られていない銘柄よりも知名度がある方を安全だと考えている。また、販売の面ではデパートやスーパーは確かに食品の品揃えがよいし、果物や野菜などもトレイに載せ、パック包装を施しているので、見た目に美しく、新鮮さがアピールされている。品質検査も定期的に行われ、売り場には検査済の標示が置いてあり、衛生的で安全であるという印象を与えるのに効果的である。注目したいのは、比率は低いが、安全な食品を購入するために国家の検査・認証を基準にしている消費者がいることである。これは農業部や国家環境保護総局などの行政が取り組んできた食品認証制度が生活の中に浸透してきたことを意味している。生産者である農場や企業が「有機食品」「緑色食品」「無公害農産品」という各種認証を受けるものだが、生産プロセスで使用する農薬、肥料、飼料添加剤、食品添加剤、栽培技術などに関する数々の条件をクリアして初めて認められるものである。この調査の結果から見ると、日本産果物は中国大都市の消費者のほぼすべての関心や要求を満たすことができる。3.3.3 WTO加盟とFTA(自由貿易協定)2001年11月に中国はWTOに加盟して、関税が大幅に下がってきた。2000年、中国の農産物輸入関税率は平均21.3%であったが、中国政府は、2004年1月1日から、中国の農産物関税を17.5%に引き下げ、2005年には15.6%に引き下げた。果物の関税率はもっと低く、2004 年までにかんきつ類の関税率を 11~12%まで、バナナの関税率を 10%まで、ブドウの関税を 13%まで、干ブドウの関税を 10%まで、リンゴ、ナシ、サクランボなどの主要な温帯果物の関税率を 10~12%まで下げた。さらに、中国政府は2010までに農産物の関税率を8.9%まで引き下げることを約束している。その上、WTOの規定によれば、WTO加盟後、中国は農産物の輸入量を制限することができない。また、お互いに対外経済関係に占める重要な位置にかんがみ、中日間の経済相互依存関係を展望するプロセスの中で、経済連携強化の方途について自由貿易協定(FTA)と経済連携協定(EPA)の可能性も排除することなく検討していくと思われる。3.3.4 人民元の為替制度改革中国の通貨・人民元の為替レートは、国家管理の外国為替市場で決まり、1ドル=8.277元前後でほぼ固定している。中国政府が外貨交換を厳しく管理しているためで、日米欧のように金融機関が値動きを見て売り買いするようなことは、中国ではできない。輸出入などに伴い、ドルの売買が必要になるときだけ許される。中国は輸出超過で、外資の進出も多く、国内でドルが余っている。中国政府はレートの変動幅を前日の平均値から上下0.3%以内と決めており、中国人民銀行がドル買いをすることで、実質的な固定相場を維持している。高成長を続けた中国の経済実力からすれば、2~4割は割安との見方が強い。しかし一方で、中国側からすれば、これは世界の人民元に対する過剰評価であり、この切り上げ要求に応じられない内部事情を抱えている。高度成長を支える輸出産業へのダメージ、不良債権問題などの脆弱な金融システム、深刻な失業率、農村経済の貧弱さなど、人民元の切り上げはこれら爆弾の導火線に火をつけるほどの危険性もはらんでいる。だから、中国はできるだけ切り上げ実施の引き伸ばしにかかると予測される中、各国の微妙な駆け引きは続くだろう。しかし、人民元の切り上がりがタイミングの問題でしかないという考えは広がっている。長い目で見れば、元高円安が日本産果物の対中輸出を大きく推進していく。
2005年07月30日
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3.2 日本産果物の対中輸出の弱み日本産果物は大きなハンデを負っていると言わざるを得ない。3.2.1 同種、同季節のため市場が重なっている 日本は中国と大体同じ緯度に位置して、日本の果樹種類は中国にも全部あるし(但し、品種が違うことがある)、果物の成熟期も大体同じなので、両国の果物市場はある程度重なっている。中国と違う緯度に位置する他の国家に比べて、これは日本産果物のハンディキャップである。 中国の経済発展と国際交流に従って、日本の新しい果樹品種と栽培技術もどんどん中国に導入され、日本産果物の品種優位がだんだん弱くなっていくと思われる。3.2.2 高いコストと価格 日本は国土が急峻、狭隘であることや、地価、人件費、エネルギー価格が割高であること等を背景として、農産物の生産・流通コストが割高にならざるを得ない。 日本の果樹は中山間傾斜地での栽培が多く、特に温州みかんでは、約半数が15度以上の傾斜園地で栽培されている。また、りんご等の落葉果樹では相対的に平坦地が多いものの、地域によっては傾斜地も多く、園地の整備が遅れ、機械化・省力化が進みにくい状況にある。さらに、園地が小規模でしかも分散しており、経営規模の大きな農家ほど分散化の傾向は大きくなっている。例えば、栽培面積2ha以上の農家では6箇所以上に分散している割合が多くなって、園地整備が進めにくいことや作業効率が悪いことから経営の効率化・規模拡大が進まない原因の一つとなっている。 10a当たりの労働時間を見ると、水稲やキャベツ、ダイコン等の他作物が機械化や省力化技術の導入を通じて削減を図っている中で、果樹については依然として横這いないしは増加傾向にある。例えば温州みかんについては、昭和55年頃までは、防除や農道整備の促進と生産物の搬出の機械化等により労働時間の一定の減少が図られたが、その後は、園地整備や収穫作業等の機械化の遅れにより停滞する傾向がある。特に近年は、高品質化への取り組みの中で、摘果等結実管理に要する時間が増加し、これに伴って全体の労働時間もやや増加ないし横這い傾向にある。りんごについても、わい化栽培の導入等による栽培管理の省力化が図られる一方、着色管理等に要する作業時間が増加し、全体としては横ばいないし増加傾向にある。 果実の10a当たり生産費についてみると、温州みかんでは昭和40年代以降ほぼ一貫して増加を示しており、りんご(矮化「富士」)では昭和60年代前半にやや低下した後、再び増加している。その内訳について項目別にみてみると、機械化・省力化の遅れを反映して、労働費のウェートが極めて高く、温州みかんで67%、わい化ふじで68%を占めており、労働費の上昇が生産費全体の動向に反映されている。 図3.1 みかんの10a当たりの生産コストと投下労働時間の変化(略) 表3.1 みかん農家の栽培規模と所得の変化(略) 高いコストの一つの原因は生産構造にある。果樹の一戸当たり平均栽培面積は近年60a台で推移して、生産農家の規模拡大意欲が低いことから、農家数の減少にもかかわらず経営規模の拡大はなかなか進んでいない状況にある。この原因としては、省力化が立ち遅れていること、永年性作物であることから売買・賃貸借の契約に際して園地の評価が難しいこと、園地整備がなされていない園地では借り手のメリットが少ないこと等から園地の流動化が進みにくいことがあげられる。だから、大規模栽培農家層の生産シェアは徐々に拡大しているが、依然として小規模層の生産シェアが大きい。 だから、日本産果物の価格は高い。中国で日本産果物の販売価格は、関税も加わって日本国内より30%高、中国産の10倍になってしまう。上海では熊本県の「新高」梨の小売価格が1個88元(約1200円)である。 表3.2 日本四大市場国産果物卸売価格(1999年―2003年) (略)
2005年07月29日
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第3章 日本産果物の対中輸出SWOT分析3.1 日本産果物の対中輸出の強みアメリカと比べれば、確かに日本農業の経営規模は小さい。だが労働力1人当たりで中国と比べれば、日本が3倍以上である。水資源も豊かである。技術、品種開発力も世界的な水準に達する。金融、流通インフラ、機械化など各種の制度も充実し、助成や優遇税制など支援策もある。その上、中日両国の消費者は果物に対する味嗜好も近く、皆甘いのが好きで、欧米の酸っぱい好きの傾向と違う。これも日本産果物の対中輸出の有利点の一つだと考えられる。具体的に日本産果物の強みを分析すると、少なくとも次の六つが挙げられる。3.1.1 豊富な品種日本は国土が37.7万平方キロしかないが、3,000キロ以上にわたって南北に伸びる島国である。日本列島は南北に細長いため、北海道は冷帯、南西諸島は亜熱帯に属する。だから、いろいろ種類の果樹が栽培できる。その上、日本は世界一流の果樹育種技術を持ち、果樹研究機関の品種開発力が強く、果樹の品種改良が進んでいる。例えば、温州みかんは最初中国から日本に輸入した。しかし、日本ではたくさんの新しいみかん品種を育成し、逆に中国へ輸出した。今中国で栽培されているみかんは殆ど日本の品種である。日本の独立行政法人果樹研究所の「果樹品種情報検索システム」で提供された日本国内において育成された果樹品種は23樹種約760品種となっている。3.1.2 高い品質果物だけでなく、日本産農産物の高い品質は世界各地で評価されている。高い品質の果物を生産するには、もちろん技術が必要である。しかし、日本の素晴らしいところは先進的な技術を持つだけではなく、もっと重要なのは、技術の普及システムなのである。何か良い技術があれば、すぐ技術基準や施行モデルなどをつくり、きちんと各産地で普及できる。中国はこの点でずっと遅れている。これは農民の教育レベルにも関係があると思われる。日本の農民の約3分の1は短大以上の学歴を持ち、他は普通高校を卒業している。しかし、中国の農民の平均教育年数は7年未満(つまり、中学校二年生の教育しか受けていない)、中国農業部2004年の調査によると、3分の2の中国農民は農薬の使用方法がよく分からない。だから、中国の農業生産レベルと農産物の品質を高めるには、かなり時間が掛かると思われる。3.1.3 高い安全性経済と社会の発展にしたがって、食品の安全性は大きな社会問題になっている。日本は食品の安全性について、完備な制度が設けられている。JAS規格(日本農林規格)はJAS法に基づいて定められた飲食料品や林産物などの製品の基準である。JAS規格を満たしていることが確認(格付)された製品にはJASマークを付けることができる。JASマークが付いていれば、その製品が一定の安全性と品質をもっていることが分かる。JASマークを基準に、消費者が製品を選んだり、事業者が製品の取引を行ったりすることができる。JAS法の正式名称は「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」。この法律はJAS規格(日本農林規格)と食品表示(品質表示基準)の2つのことを定めており、この法律で定められたルールにしたがって市場の食品などには、JASマークや原産地などの表示が付いている。JAS法では、全ての食品を生鮮食品と加工食品に分けて、それぞれに一定の表示を義務づけている。生鮮食品とは、果物や野菜などの農産物、肉や卵などの畜産物、魚や貝などの水産物で加工していないものである。生鮮食品には「名称」と「原産地」の表示が義務づけられている。 今「有機果物」などが特に人気がある。有機農産物のJAS規格や生産情報公表のJAS規格は特定JASの一つである。果樹のような多年生作物は最初の収穫前3年以上、稲や野菜等は播種又は植付け前2年以上にわたって、化学合成物質(化学合成農薬、化学肥料、化学合成土壌改良材)を使用せずに堆肥等(有機質肥料)による土作りを行ったほ場(畑などの農地)において収穫された農産物を有機農産物という。なお、収穫前1年以上基準を満たす生産方法を継続している場合には、特に「転換期間中有機農産物」と表示できることになっているが、JAS有機認定マークの貼付はできない。近年日本農林水産省は毎年「食の安全・安心のための政策大網」をつくっている。日本の果物産地は農林水産省のガイドラインに基づく減農薬・減化学肥料、安全性や品質の向上に配慮した生産方式への転換を促進してきた。例えば、日本の柑橘類はポストハーベスト農薬を使用していない。「トレーサビリティーシステム」(栽培履歴管理)も「食の安全・安心」問題の解決策の一つである。全国農業協同組合中央会(全中)は農協を通して各農家に、穀類や野菜、果実、肉、乳製品など全農産物の生産履歴を記録できる体制を整えるよう指示した。農家は生産者名や農地の所在地、使った農藥や肥料名、収穫や出荷の日時などを記録する。出荷時にこの情報を農協などに報告する。農協は情報を集め、生産・流通履歴照会データベースとして管理する。3.1.4 周年供給日本人は季節感が強い。果物にも季節感があり、ウメ、モモ、ブドウ、ナシ、カキ、リンゴなどは季節感あふれる果物といえる。このように、季節と野菜や果物の関係は「旬」と呼ばれる。しかし、現代の園芸技術の発展は、「周年生産」「周年供給」を可能にし、いわゆる「旬」の感覚を希薄にしてきた。日本では果物の周年供給の技術も進んでいる。周年供給により中国産果物と出荷時期や出荷先を変えれば、過度な競合を避けることができる。周年供給の方法として、年間を通じて作型や品種を変えて周年生産を行う、施設生産、「リレー栽培」、また貯蔵技術の向上により安定供給する、などがある。周年生産を行うためには作型や品種を変えて行う必要がある。すなわち夏は日射量が多いが高温であり、冬は日射量が少ない。したがって、冬に栽培を行う場合には低日射量でも生育ができる(光合成効率の高い)品種を選択する必要がある。このように、作型に応じた品種の開発が行われ、例えばスイカでは200品種が存在するといわれている。施設生産は施設を用いて年間同一環境を維持して周年生産を行う。これは周年生産を行うためには必要不可欠な栽培技術であり、日本の園芸施設面積はオランダを抜いて世界一である。1996年総面積は113,055haで、その中、果樹は11,600haであった。近年、水耕栽培技術が進歩し、大規模に用いられることにより施設栽培も一層盛んになってきた。殊にいちごの水耕栽培が日本各地で広がっている。「リレー栽培」は南北に長い日本の地理的特徴を活用し、季節に応じて適地で生産し、消費地に供給する。緯度のかなり違う場所で同じ品種の生産を行い、同じブランド名で周年供給ができる。貯蔵による周年出荷はリンゴに代表される。11月に収穫されたフジは8ヶ月のCA貯蔵が可能となり、極早生品種の収穫が始まる7月まで出荷される。3.1.5 地理的優位性日本と中国は一衣帯水の隣国である。両国間の貿易は地理的優位性に恵まれている。例えば、博多から上海までの海上距離は580マイル、27時間しかない。日本通運、商船三井、上組、住友商事4社の合弁会社SSE(上海スーパーエクスプレス株式会社)は博多~中国・上海間の高速海上輸送サービスを2003年11月に開始した。日中間の高速RORO船による定期輸送サービスが提供されている。SSEは上海・外高橋港と福岡県の博多港を直結し、26.5時間という従来の半分の所要時間を実現した高速RORO船である。航空便よりコストが安く、荷役もごく短時間で済む。しかも、博多港において日本国内を運航する内航船やトラック、また鉄道とのシームレスな接続も容易である。東京から中国の華東地区に向けてのコンテナは通常8日かかるが、SSEであれば4日の所要となる。それに、日本通運と商船三井フェリーは2004年1月、東京-博多航路の共同運航で、新造RORO船全4隻が就航した、東京~博多間の運航時間を約4時間短縮することができ、さらに、近年激増している日中間の物流も視野に入れ、「上海―博多間高速RORO船、上海スーパーエクスプレス」のサービスとも連携し、東京~博多・博多~上海が高速RORO船で結ばれることとなり、関東経済圏と上海近郊地区との間により利便性の高いシームレスなサービスの提供が可能となった。また、高速RORO船を使用することにより、トレーラー輸送、コンテナ輸送はもとより、重量物・車両輸送、冷凍・冷蔵コンテナ輸送、JRコンテナ利用輸送等が可能となり顧客の多様なニーズにも応えることができる。3.1.6 国の助成と支援策日本政府は「攻めの農政」を象徴する農林水産物の輸出を促進している。2005年4月27日に農林水産物等輸出促進全国協議会が設立され、農業関係団体、食品業界、関係省庁などが官民一体で輸出拡大の実現を目指している。目標は、2009年に現状の2倍に当たる6000億円の達成である。2004年に農林水産省が、農林水産物や食品の輸出を促進するために「輸出促進室」を発足させた。同室に輸出相談窓口を開き、個別事業者等からの相談受付から、外務省を通じて外国政府への申入れまで、総合的に対応している。また、「農林水産ニッポンブランド輸出促進都道府県協議会」が全国23道県により設立された。2004年度の農林水産物輸出促進関連予算も2003年度比17倍(8億400万円)として、積極的に支援する体制を整えつつある。具体的な促進・支援範囲は:輸出機会の拡大策として、相手国の貿易制度調査と海外市場開拓チームの派遣、PR活動;生産者団体が行う展示・商談会への支援;海外で消費拡大運動;国内外のニーズに対応した生産体制の強化;ブランド・ニッポン農産物の販路拡大を支援など。果物の生産経営について、日本農林水産省は「果樹農業振興基本方針」「果実等生産出荷安定対策実施要綱」などをつくって、果樹農家の生産経営に対して具体的な支援策を実施している。
2005年07月28日
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2.3 中国果物市場の特徴中国果物市場の特徴は中国経済の高成長と激しい地域格差と深い関係があると思われる。1978年の改革開放から2004年までの26年間に、中国の経済成長率は平均9.4%である。ちなみに、2004年中国のGDPは13兆6,515億元で、前年比9.5%の成長、イタリアを抜き、世界第6位にランクされていた。しかし、日本の均衡発展と違って、日本の10倍の人口と26倍の国土を持つ中国の発展は不均衡発展と言える。珠江デルタ地域、長江デルタ地域、渤海湾地域では、1人当りGDPはすでに3,000ドルを超える。しかし、中国全体的な平均収入はまだ高くない。2004年の中国全土都市部就業者平均年間給与は1万6024元(03年は1万4040元)に過ぎない。これは単純に月給に直せば、1カ月あたり1335元程度(約17600円)であり、日本の就業者の平均月収の20分の1にも足りない。特に内陸と農村の発展が大分遅れており、沿岸部と内陸部、都市部と農村部の経済的格差は顕著なものとなっている。収入の格差によって地域によって市場消費のレベルがぜんぜん違う。こうした経済環境の中で、中国の果物市場は6つの特徴を示す。2.3.1 転換中の果物市場中国の経済は1980年代から徐々に計画経済から市場経済へ転換してきた。1992年には市場経済体制の確立を中国経済改革の目標にすることが明らかになって、経済改革が加速した。経済改革、特に市場経済の推進に従い、中国の様々な市場の有様が変わってきた。その中でも、外資系企業の参入により小売市場の変貌が特に注目される。一方、中国における果物市場は、食品小売市場の中で大きなセクターであると同時にまだ新しい小売形態の開発による影響は少ないと言える。これは、売上の大部分が産地直送販売によって占められているためと思われる。しかしながら、近年ライフスタイルが変化し収入が増加するにつれ、消費者が食品に新鮮さとバラエティを求める傾向が高まってきた。また同時に、流通インフラの発展により流通範囲も拡大し、確たるマーケットリーダーやブランドの存在しなかった中国果物市場にも大きな変化が訪れるようになった。スーパーでの果物販売や高級果物専門店などがどんどん増えていき、いろいろ果物のブランドがつくられ、たくさんの果物主産地は「ブランド戦略」を出すようになった。都市では従来の農産物自由市場を新しい小売形態のスーパーに変えることを推進している。2.3.2 果物市場の多様化中国では経済発展の格差が激しく、また果物市場が転換中なので、各地の果物市場の立地、規模、経営主体、経営システム、商品価格などがそれぞれかなり違っている。同じ品種の果物でも、品質、包装、販売店、所在地域などの違いにより、何倍乃至何十倍以上の価格の差が出てくる。小売価格が1キロ1元(13円くらい)未満の果物がある一方、日本の高級果物専門店よりもっと高価な高級品も中国で売れる。沿岸部と内陸部、都市部と農村部の果物の消費状況はぜんぜん違っている。また、同じところでも、格段に異なる市場が共存している。つまり、収入水準のかなり違う人々にそれぞれ対応し、差別化するわけである。すなわち、どんなレベルの果物でも、多種多様である中国市場でターゲットを探すことが出来る。2.3.3 総消費量は次第に増加生活水準の高まりと生活習慣の変化にともない、果物消費が全ての食物消費のなかで占める割合が大きくなり、全体の需要はますます増えている。1980年代から1990年代、中国果物市場消費の増加は大変速かった。1980年中国の一人当たりの果物消費量はただ3.7キロであったが、2000年は42キロまで、20年間で11倍増加した。都市の一人当たりの果物消費量はすでに100キロを超えて、日本よりずっと多い。近年は増大幅が相対的に緩やかであるが引き続き上昇の趨勢を維持している。都市の人の食品消費支出の中、果物消費支出の割合は1994年の6.27%から2001年の6.52%に上った。これから、農村は巨大な果物消費の潜在市場として急速に成長していくだろうが、しかし、予測できる将来にはまだ低価なものしか売れないと考えられる。2.3.4 消費構造に新しい変化が現れる都市市民の健康と安全意識が一層強まるにつれ、中国果物市場の優良果物、無公害果物、有機果物と果汁の消費需要がさらに増加し、特に果汁消費の増加が急激になっている。オレンジジュースの輸入量は1998年の0.54万トンから2001年1.9万トンまで3年間で3倍に近く増えた。現在中国の一人あたりが消費する果汁の割合はわずか0.1リットルで、先進国では40リットル以上、発展途上国の一人あたりの平均消費量でも10リットル前後となっており、これによると中国国内の増加余地は非常に大きい。品種別では、りんご、かんきつ、梨のいわゆる「三大果物」の消費割合が低くなり、竜眼、ライチー、マンゴーなど地方特色のある果物の消費割合が高くなった。このほか、高級特産品、高品質の品目などが日増しに消費者の注目を集めている。2.3.5 普通果物価格の持続安定低走と高級果物のマーケット·シェア拡大中国果樹園面積は引き続き拡大し、生産量は引き続き増加し、市場供給は充分にあり、また生食がメインであり、出荷が集中し、その上生鮮果実の品質は全体的に低く、貯蔵加工の能力不足で、1990年代の末から中国普通果物価格の全体水準は安定低迷を維持し、果物市場は構造的、地域的、季節的な供給過剰情況を現している。例えば、2002年全国の果物卸売価格は前年と比べ14.4%安くなり、2003年はみかんが値上がりした以外は殆どの果物の卸売価格が下がった。2004年全体的な価格水準は2003年とほぼ同じで、特に北方の果物価格は安定していたが、南方の価格変動が激しかった。しかしながら、品質がよく、安全性が高いブランド果物は価格が高くても人気があり、市場需要量がだんだん増加している。2.3.6 果物の国際貿易は引き続き増加これからの中国果物輸出入貿易はここ数年の継続増加をベースに、輸出市場は更に一歩拡大し、製品の種類は増加を続け、次第に低級市場から高級市場へと移行し、生鮮果物輸出主流から生鮮果物と加工製品の二本柱の輸出に転向すると見られる。一方、外国からの果物輸入も増加傾向が見られる。ただし、外国からの輸入品にもかなりの格差がある。日本やアメリカ産の果物は高級品の代名詞のようであるが、タイからの輸入品の中には中国産果物よりもっと安いものもある。
2005年07月12日
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第2章 中国の果物の生産と貿易現状2.1 中国の果物の生産・消費現状中国では果物の生産が急速に伸びており、特に1990年代は高成長を遂げた。1994年から中国の果物の生産量は世界一となった。2003年、中国の果樹園面積は943.7万ヘクタールで、生産総量は7,600万トンに達している。中国の果樹園面積は大体世界の果樹園面積の5分の1を占めている。果物生産量は世界一で、世界生産総量の14%を占めている。そのうち、リンゴと梨の生産量は世界各国を大きくリードしている。柑橘類の生産量はブラジルとアメリカに次いで、世界第3位である。中国の果物産業の生産額は1000億元余りで、中国の栽培業で食糧と野菜に次ぐ第3番目の産業となっている。図2.1 中国の果物生産量が増加(1990年-2003年) 略代表的な果物で2003年と1993年の生産量を比較すると、温帯果物であるリンゴ2110.2万トン(1993年比2.3倍。主産地は山東、陝西、河南、河北、山西)、柑橘類が1345.4万トン(2.1倍。主産地は福建、四川、浙江、湖南、広西、広東)、梨が979.8万トン(3.0倍。主産地は河北、山東、安徽)、ブドウが517.6万トン(3.8倍。主産地は新疆、河北、山東、遼寧)。熱帯果物であるバナナが590.3万トン(2.2倍。主産地は広東、広西、海南、福建、雲南)と10年間で軒並み倍増以上を記録している。その他の熱帯果物、例えばレイシ(112.3万トン。主産地は広東、広西、福建)、パイナップル(82.1万トン。主産地は広東、海南)、龍眼(94.1万トン。主産地は広東、広西、福建)、マンゴー(2000年63.9万トン。主産地は広東、広西、海南、雲南)等も大きく生産量が伸びている。農家がここまで生産を増やしている背景には、消費者の生活水準が向上しているのに伴い、果物消費が拡大していることがある。果物の用途は、生食だけでなく、ジュース、缶詰、ジャム、菓子、酒等の加工食品へと広がっており、加工技術が進歩したことで、消費者は多様でおいしい果物関連製品を口にすることができるようになった。熱帯果物の加工品は、従来は缶詰が多かったが、近年はジュースの需要が著しく伸び、特に椰子ジュースとパイナップルジュースは全国的に有名になっている。ブドウはワイン消費の伸びに後押しされて生産増を果たしている。また、果物に対する鮮度保持や貯蔵技術の発達並びに流通ルートの改善により、市場が全国に拡大したことも見逃せない。かつて北方では温帯果物を好み、南方では熱帯果物を好むといわれていたが、これは互いに遠いため産地からの供給が少なく、価格も高いために食べられなかったからであり、最近はこうした地方差はなくなっている。収穫期の関係で季節によって供給量や品質に波があったが、それも緩和された。消費者は好きなときに好きな果物を食べることができるようになってきた。2.2 中国の果物の貿易現状2.2.1 果物の輸出近年、中国政府が対外交渉に力を入れたこと、そして、企業が積極的に参与したことと、検査検疫部門が合理的にWTO規則を利用したことによって、中国のリンゴや梨などはアメリカ、カナダ、オーストラリア等の検疫要求が非常に厳しい国まで輸出することに成功した。現在のところ、中国は20数カ国へ果物を輸出している。2004年中国の果物輸出量(加工品含め)312.59万トン、2003年比17.18%増、輸出額が16.47億ドル、2003年比20.08%増。1995年(輸出量63.63万トン、輸出額4.72億ドル)と比べて、それぞれ391.26%、248.94%増加した。輸出総量の中、生鮮果物と加工品の比率は大体それぞれ半分を占めている。種類別から見ると、りんご、りんごジュース、かんきつ類の輸出量が依然として圧倒的に多い。中国の果物輸出の主要な貿易相手はアメリカ、日本、ロシア、インドネシアである。2004年、4国に対して果物の輸出量がそれぞれ輸出総量の14.8%、11.1%、9.3%、6%を占めている。2004年以来、中国はアメリカ、インドネシアに輸出量の大幅増が目立ち、2004年、アメリカへの輸出量が46.22万トン、2003年と比べて31.77%増加;日本に34.69万トン、16.14%増加;ロシアに29.11万トン、19.26%増加;インドネシアに18.71万トン、63.69%増加した。2.2.2 果物の輸入2004年、中国の果物の輸入量(加工品含め)106.19万トン、2003年と比べて4.22%増、輸入額5.86億ドル、2003年と比べて17.39%増。1995年(輸出量22.45万トン、輸出額0.75億ドル)と比べて、それぞれ373.00%、681.33%増加した。輸入量が多い種類はバナナ(38.09万トン、0.93億ドル)、かんきつ類(6.69万トン、0.4843億ドル)、ジュース(2.87万トン、0.31億ドル)、りんご(2.09万トン、0.16億ドル)である。輸入の中:タイから27.41万トン、2003年と比べて98.8%増加;チリから5.52万トン、16.68%増加;フィリピンから29.59万トン、6.6%減少;米国から10.11万トン、1 .52%減少;ブラジルから3.91万トン、25.01%増加した。日本からの輸入量はわずか0.23万トンであったが、2003年と比べて84.86%増加した。2005年1月から3月が0.11万トン、前年同期と比べて、131.58%増加した。他の国に比べてその増加速度は急激である。他に、2004年、ASEANに対して輸出量が90.63万トン、輸出総量の29%を占め、2003年と比べると17.38%増加している、輸出額では3.15億ドル、輸出総額の19%を占め、2003年と比べて22.6%増加した。一方、ASEANからの果物の輸入量は75.32万トン、輸入総量の70.09%を占め、2003年と比べて8.15%上昇し;輸入額では3.04億ドル、輸出総額の51.9%を占め、2003年と比べて26.38%増加している。中国はASEANとのFTA枠組み協定に沿い、タイとの間でアーリーハーベストとして2003年10月から果物(80品目)と野菜(108品目)の関税を撤廃した。これにより中国からの温帯果物輸出にとっては有利になったものの、熱帯果物がタイから入りやすくなったことで、中国内の主産地である広東、広西、福建、海南等の農家は厳しい競争に直面することになった。
2005年07月11日
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1.3 日本産果物の対中輸出の推移 アジア諸国・地域では、経済発展による高所得層の増加や、日本食ブームなどから、 高級贈答品として日本産果物の人気が高まり、1999年から2003年までの4年間に、中国台湾向けのリンゴ輸出が13.3倍に、中国香港向けではイチゴ輸出が3.5倍に伸びるなど、輸出が急増している。このため日本農水省は、経済成長が著しい中国大陸も、農産物の輸出市場として有力と判断している。現地ではかなり割高だが、日本国内生産者らの努力が実り、「安全・安心」をキーワードに中国富裕層の心をつかみ始めた。守勢が目立った日本の農業政策が行き詰まり、工業品のように海外に販路を拡大する姿勢に転換したのも追い風である。巨大な中国市場が日本の農林水産業を多少変貌させる可能性がある。財務省関税局のデータによると、中国本土への果実の輸出は1994年にはわずか1890万円だったが、2004年には4億5750万円と20倍以上に跳ね上がった。これから日本の果物が中国を中心にアジアへ積極的に輸出されるようになると思われる。 1.3.1 台湾市場に進出果物輸出を輸出先別品目別にみると、輸出先としては台湾が、中でもリンゴの割合が大きくなっている。過去10年間の推移で見てみると、2002年から急増して、「台湾へのリンゴ輸出」が果物輸出の増加における主因となっている。10年前のリンゴ輸出は台湾、香港、タイが三分していたが、2003年には台湾のみで9割以上を占めた。これは、2002年に台湾が世界貿易機関(WTO)に加盟したことが契機となっている。日本産リンゴの輸入割当数量が撤廃され、関税も50%から20%に下がり、輸出しやすい環境が整ってきている。「世界一」「陸奥」等の高級品種に引き合いがあるが、日本産リンゴが浸透してきて、「ふじ」「王林」等の普通品種の消費も増加している。WTO加入後の輸入枠が撤廃された台湾への日本のりんごの輸出量は8,376トン(2002年)と加盟前の4倍に増え、日本からの果物の輸入品は品質において「別格」扱いで、高級品として定着している。日本一のリンゴ産地である青森では、この好機にさらなる輸出増加を目指し、様々な取組を行っている。2002年には青森県が「青森りんご輸出拡大推進事業」を計画し、輸出量の増大を図るため、台湾の百貨店でのリンゴ見本市や、台湾の現地業者向け販売促進講習を開催した。2004年7月に、JA全農とっとりは鳥取県産スイカを台湾に初輸出した。二十世紀ナシの輸出ルートを利用して、スイカ1玉(7キロ)入りの箱、130箱を輸出、台北市内の百貨店などで販売した。台湾のスイカは日本産に比べて小振りで甘みが少ないため、甘くて大きな日本産スイカは新しい果物として受け入れられるとみている。1.3.2 香港市場に進出中国香港特別行政区の人口は約600万人。イギリスから返還後も特別行政区として自由貿易を中国中央政府から保証されている。600万の中の160万人が富裕層として存在する。香港は米国に次ぐ、日本食品の輸出先であり、中国大陸市場を開拓する際の参考になると思われる。香港の食品市場は初め、大丸、三越、そごう、西武など日系のデパートからスタートし、次に、ヤオハン、ユニー、ジャスコなど日本のスーパーが進出し、現在はパークンショップ、ウェルカムなどの地場のスーパーが日本食品コーナーを作り、取扱い品目を増やすという展開になっている。日系スーパーに限らず現地香港系のスーパーでも日本産の果物や野菜などの日本食品が置かれ、日本食品を扱うスーパー、百貨店の数、アイテム数、売り場面積、レストラン数もたくさんある。香港で日本から輸入された日本食品を食べている人の7~8割は現地の人達で、「日本食を食べるのはステータス」として、若い人達からも支持を受けている。香港で日本食品が受け入れられている一つの理由に、日本文化の浸透が上げられる。香港には子供の漫画から始まって、映画、テレビドラマ、ファッション雑誌など様々な日本文化が流入している。その中には日本の食文化も取り上げられていることも日本食品が売れている一因である。香港では日本各地の果物が販売されている。2005年1月栃木県産フルーツが香港へ向け商業ベースとして初輸出を遂げた。栃木市のJAしもつけは1月下旬、主力品「とちおとめ」イチゴ1,000パックを香港に初輸出。330グラムの1パックが香港の店頭では、日本国内の約2倍にあたる約1,200円の高値だったにもかかわらず、わずか4日間で完売したこともあって、3月までに5,500パックを空輸した。輸出を進める、社団法人とちぎ農産物マーケティング協会は、品質管理にこだわった。生産農家を栽培優秀な12戸に限定したり、輸送中の傷みを防ぐためパッケージに緩衝材を入れたりするなど対策をとった。将来的には巨大な中国市場への進出も視野に入れて、まずは香港から攻めるという戦略をとっている。自由貿易の香港では、本土進出のための「予行演習」が行われている。全国1位の生産量を誇る栃木県産のイチゴがその一例である。福岡県地域食品輸出振興協議会(県、JAふくれん中央会など8団体)も香港では2002年、台湾では2004年から、現地で商談会を開催。香港向けは2005年度から定期的な輸出が始まった。台北市では2005年1月に開いた「福岡フードフェア」で「あまおう」が人気となり、注目したデパートやショッピングモールなど7店舗が2月末から「あまおうフェア」を開いている。この結果、香港・台湾向けの「あまおう」の2005年度輸出量は、フェア開始前の2月上旬までに、前年度対比5倍以上の約8トン(27,000パック)に達した。1パック1,000~1,500円の「あまおう」のほか、1キロ1万円の「巨峰」も予想以上の人気を呼んでいる。協議会はこの勢いに乗って来年度、中国本土進出を目指して上海で商談会や販促フェアを計画しており、県も支援を拡大する。それに、香港はカナダについで日本産みかんの2番目の輸出先である。2002年の輸出数量は138トン、金額は23,000千円。1.3.3 中国大陸市場に進出2004年9月、10月は、日本産果物について北京、上海、青島において展示、販売、試食などの催しが相次いで行われ、中国市場へのアプローチが目立っている。北京:2004年10月11日に日本貿易振興機構の主催で「日本産農産品紹介セミナー」が行われ、中国の農業、貿易関係者も出席した。日本園芸農業協同組合連合会からの講師が、日本での果実栽培の特徴を紹介した。セミナーの後には日本産のみかん、梨、りんご、ぶどう、柿といった果物の試食会も行われ、初めて口にした中国側参加者にも好評であった。また、10月11日から15日まで、北京の全国農業展覧館では中国農業部の主催により「中国国際農産品交易会」が開催され、この会場でも上記の日本産果物は展示と試食を通じて参観者に大いにアピールした。上海:2004年9月20日にはJETRO上海センターが、市内デパートに「日本産果物コーナー」を設置し、青森県、岩手県、茨城県、長野県、鳥取県、熊本県の6県から輸出されたナシ3品種、リンゴ4品種の合計7品種について2005年2月までの5カ月間限定で試験販売を始めた。最も高い熊本県の「新高」梨が1個88元(約1200円)のほか、青森県の「陸奥」りんご及び鳥取、長野県の「二十世紀」梨が1個28元(約370円)である。鳥取県の「二十世紀」梨が、「口当たりがサクッとさわやかで、香りも高く、甘くジューシーで、たくさん食べても飽きない。」と高い評価を受けている。青森県のリンゴも中国で人気である。2004年1月、上海向けにテスト輸出を開始し、11トンを送り込んだ。2004年11月から輸出を本格化させ、2004年12月までに29トンを輸出した。中国はリンゴ生産量が日本の20倍以上という世界一のリンゴ産地であるが、高級品種では競合しないとみており、都市部の富裕層を中心に日本産リンゴの消費が期待されている。JA全農いばらき(茨城県)は2005年夏、商業ベースでの中国への輸出に初めて挑戦する。商品は県内産のナシ約12トン。2004年秋に上海で試験販売した結果、日本の3倍近い1個1100円を超える高値だったにもかかわらず、「甘みと酸味のバランスが取れておいしい」との評判で売れたからである。青島:2004年10月8日から一週間、佳世客(ジャスコ)で日本食品フェアが開催され、和菓子、紅茶、ビール等とともに梨の「新高」「伊万里」が展示・販売された。「新高」については、日本で研究開発された新品種で、ジューシーで口当たりがよく、鮮度が長持ちするという紹介が行われた。報道によれば、日本の食品は小さいというイメージがあるなかで、「新高」はその大きさが注目されたという。今のところ日本から中国へ輸出できる果物はリンゴとナシしかない。リンゴとナシに続いて、日本からの輸出候補に上がるのが、モモ、ブドウ、柑橘類、カキ、イチゴなどである。日本農水省が中国に対し、メロン、柑橘類、ナシ、イチゴ、サクランボ、モモ、ブドウ、カキ、スイカ、キウイなど国産農産物計12品目の輸入受け入れを求めて本格交渉に入ったことが2004年9月14日、明らかになった。すでに中国側に病気や害虫の発生や生産状況の資料を提出して、輸入受け入れのための検疫体制の整備を求めている。日本が多品目にわたる包括的な農産物の輸出交渉を行うのは初めて。日本の農産品は中国産の輸入品に押されてきたが、輸出促進で反転攻勢をかける。こうして、日本産果物の対中輸出がどんどん増えてきた。1998年から2004年までの6年間、輸出数量が100倍、金額が31倍に増えた。2005年1月から3月は前年同期と比べて、数量が131.58%、金額が151.10%増加した。1998年対中輸出果物が日本輸出果物総量に対する割合はわずか0.17%だったが、2004年は9.44%に達した。2005年1月から3月はさらに11.07%になった。表1.7 中国(大陸)向け輸出の日本産果実の数量と金額 (略)表1.8 対中輸出果物が日本輸出果物総量に対する割合の推移(略)
2005年07月04日
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第1章 日本の果物の生産と貿易現状1.1 日本の果物の生産・消費現状日本の果樹農業は、地域の立地条件を活かして多種多様な果物を生産し、農業生産だけでなく地域振興の面からも大きな役割を果たしている。また、果物や果物加工品は国民の豊かな食生活の確保、健康の維持・増進という面でも重要な役割を果たしている。しかしながら、日本の果樹農業をめぐる最近の情勢は大きく変化しつつある。消費面では、食生活の多様化が進む中で、生果需要の少量多品目化、輸入品を中心とする果汁等加工品需要の増加等が見られる。一方、生産面においては、樹園地の整備や作業の機械化が立ち遅れている中で、中山間地域を中心に果樹農家の減少、担い手の高齢化、後継者不足等が深刻化しており、省力化、軽作業化、経営規模の拡大等による担い手の育成確保と産地体制の強化を図ることが重要な課題となっている。表1.1 日本の果樹栽培面積と収穫量 (略) 果物の需要量は、加工品の生果換算を含む全体では、近年ほぼ横ばい傾向で推移して、1人当たりでは40kg程度となっている。しかしながら、食生活の多様化による果実消費の少量多品目化が進展し、生鮮果物の消費の減少が進む一方、果実加工品、特に果汁消費が増加傾向にある。近年1人当たりの生鮮果実の消費は30kgくらいであり、2000年の消費量は1988年の77%しかない。このなかには膨大な輸入果実の消費も含んでいる。年齢階層別にみると、若者層では中高年齢層に比較して生鮮果実の消費が極端に少なく、しかも年々減少傾向となっている。表1.2 生鮮果実の年間一世帯当たり購入数量および支出金額 (略)表1.3 生鮮果実の年間一人当たり購入数量および支出金額 (略)日本国内の果物消費量減少と輸入品増加に対応しながら、過剰な生産能力を生かす方法の一つとしては、果物の海外輸出が考えられる。1.2 日本の果物の貿易現状 日本は世界最大の農産物純輸入国である。財務省「貿易統計」による平成14年の日本の農林水産物の貿易動向は、金額ベースで7兆2,085億円の輸入額となっており、種類別では農産物4兆3,011億円、林産物1兆1,452億円、水産物1兆7,622億円となっている。主な輸入先国・地域は、アメリカ、中華人民共和国、EU、カナダ、オーストラリアなどである。 他方、輸出は、3,509億円で、種類別では、農産物2,064億円、林産物80億円、水産物1,365億円となっている。主な輸出先国・地域は、アメリカ、香港、台湾、韓国、中国などである。このように、日本の農林水産物の貿易動向は、大幅な入超となっている。果物の貿易もこの動向を反映している。1.2.1 果物の輸入 果物及び果物加工品の輸入金額は農産物の輸出金額の1割に近い。種類別から見ると輸出数量と金額が一番多いのはバナナである。表1.4 果実及び果実加工品の輸入数量と金額 (略)1.2.2 果物の輸出青森のりんご、静岡のみかんなどのカナダ向けの輸出は明治時代から続いており、鳥取の二十世紀梨は中国香港と台湾、シンガポール、アメリカ、オランダ、マレーシア、タイ、オーストラリアなどに果物の高級品として輸出され続けている。しかし、数量は少ない。2002年と2003年の果物輸出が急増したのはりんごが中国台湾向けに増えたからである。りんごは中国香港、タイなどにも輸出している。近年、価格の高さなどから国際競争力が低いとされる日本の果物を、本格的に輸出しようとの動きが目立ち始めた。まだ輸出額は少ないものの、日本の農業に「守り」から「攻め」へと転換を図る動きが見られる。図1.1 果物の輸出が増加傾向 (略)表1.5 果実(鮮果類)の輸出数量と金額 (略)表1.6 加工果実の輸出数量と金額 (略)
2005年07月03日
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