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第4章 日本産果物の対中輸出の構想プラン4.1 日本産果物の位置付けどんな国にも必ず高品質・高価格の高級品に対するニーズ、値段も手頃で品質も悪くない中級品に対するニーズ、低価格の普及品に対するニーズが存在し、それぞれのニーズに応じたマーケットが形成されている。そうしたマーケットにおいて、自分の商品をどんな位置につけるか、どんな価格レベルを設定するか、というポジショニングを明確しておくことが戦略をたてる上で重要である。特に、現時点では、日本と中国の所得・物価水準の違いがあるため、対中輸出はターゲットを絞り込むことが重要なポイントである。海外市場では、日本の農林水産物や食品は価格が高いが、品質がよく安全で美味しい、これを購入することが「ステータス」になる、そういう位置づけの商品となっている。富裕層は食に対して高くても良いものを買う傾向がある。日本産果物も、この部分にターゲットを絞っていろいろな戦略を立てて行くことが必要である。「ニッチ・マーケット」とは、規模や範囲は限られているが、特徴のある商品を売るのにふさわしい場所( すきま )という意味であり、日本産果物を愛する人達、あるいはこれから働きかけることにより、日本産果物のファンになってくれる大切な人達が存在するマーケットのことである。日本産の果実種類は、一般の中国市場でも流通しているため、高級果実として売り込むには、一般の市場とは違う分野の確立が必要であり、つまり差別化戦略が必要となってくる。果物の中国向け輸出事例を見ると、鳥取県の梨「二十世紀」や青森県のりんご「富士」は、皆高級果実として台湾、香港向けに輸出され、特に贈答品として、地位(ブランド)を確立している。中国在住の日本人、日本からの駐在員などもターゲット顧客である。現在、上海日本商工会に登録している会員数は約800社で、未登録の日本企業も含めると3,000社くらいにはなる。上海に在住する日本人の実数は約3万人。蘇州、無錫、杭州、寧波など周辺都市の開発区にいる日本人を合算すると4万人近くはいると推定される。5年以内に海外最大規模の日本人社会になるとの予測すらある。最初にねらいを定めた市場に向けて、いろいろな販売促進をやっていくうちニーズがどんどん変わっていくこともあるので、現地でのフィールド調査とコミュニケーションによりマーケットの変化を細かくキャッチしておく必要がある。
2005年08月28日
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3.4 日本産果物の対中輸出の脅威3.4.1 他国産果物の対中輸出の増加東南アジアでは、日本で開発された果物や野菜の現地生産が広がっている。日本の法令では、品種の開発者には一定の権利が認められ、他人は無断で栽培できないが、種苗を違法に持ち出して現地で栽培されている「コピー」農産物も出始めた。安い上に栽培技術も年々向上したため、中国における日本産果物と競合している。中国はASEANとのFTA枠組み協定に沿い、タイとの間でアーリーハーベストとして2003年10月から80品目の果物の関税を撤廃した。アメリカ、南米産の果物も中国市場に進出している。日本産果物にとって、生産規模が大きく、コストが低く、品質が良いアメリカと南米産の果物も有力な競合相手である。3.4.2 台湾産果物が大陸市場で販売増加中国国務院台湾事務弁公室は2005年5月3日に、台湾産果物の輸入許可品目を従来の12種類から18種類に拡大、そのうち最大で15種類については関税をゼロとする規制緩和策を発表した。2005年5月23日に、中国国家品質監督検験検疫総局は具体的な品目を発表した。これを受けて、関連業界では商機拡大への期待が高まっている。これまで台湾産果物は12~16%の関税、保存期間が短いといった問題から中国大陸市場での販売は低調だった。現在、台湾産果物は香港経由で年間1,000~2,000トンが中国大陸に輸出される。しかし免税となることにより、価格競争力が明らかに上がる。今後は生産業者や流通業者の間で中国大陸の果物市場開拓に向けた動きが加速するだろう。ゼロ関税が実施されれば毎月1,000~2,000トンが輸出され、年間12億人民元(約152億円)の市場となると予測されている。台湾は日本の農業生産技術と普及システムを導入して、生産した果物は品質が良く、高級ホテルやデパートなどにすでに市場を確保している。狙うマーケットターゲットが日本産果物とある程度重なっている。3.4.3 日本出資の会社が中国で日本品種の果物をつくるたくさんの日本企業は工業生産工場を中国へ移したように、近年日本企業は中国で果樹栽培にも進出している。日本出資の企業は中国で日本品種の果樹を栽培して、生産された果実は中国市場で販売し、あるいは海外へ輸出する。例えば、日本と中国の合弁会社北京源林生物有限公司は中国で7つの農業生産基地をつくった。その中の昌平基地は日本青森県の栽培技術を活用して、毎年約1万トンの「富士」などの日本品種のりんごを生産するし、海淀基地も「富士」りんごを栽培する。大興基地は「二十世紀」、「幸水」、「豊水」など日本品種の梨を栽培する。それに、北京市内の繁華街で3つの高級果物専門店「源林屋」をつくり、自社生産の日本品種の高級果物を販売している。中国で生産された日本種の果物は生産費が日本で生産されたものよりずっと低いので、価格の競争力が強い。3.4.4 貿易摩擦 近年中国経済の発展と共に中日間の貿易量も飛躍的に増加し、両国の貿易関係は親密なものになっている。しかし、中日の貿易関係は全てが順調というわけではなく、いくつかの問題を抱えており、中日貿易摩擦は深刻なものになりつつある。良質で安価な中国からの輸入品は日本の消費者にとって有益なものである反面、生産者はこれらの輸入品との激しい競争の嵐に直面することとなり、中国製品の存在は脅威となっている。こうした中で、日本国内ではセーフガード発動など輸入制限を求める動きが活発化している。日本は1995年、1996年に繊維セーフガードで調査を計2件実施し(発動せず)、97年には豚肉に特別セーフガードを発動したのみで、一般セーフガードを発動の事例はなかったが、2001年農産物3品目について一般セーフガードの暫定措置を発動した。中国政府は、2001年6月21日、先に日本政府がセーフガード暫定措置を発動したことを受けて、対抗措置として日本製の空調機器、携帯・自動車電話、自動車の輸入品に対し、100%の特別関税を追加課税することを決定し、6月22日より実施した。2001年12月21日、日中両政府は、農産品3品目のセーフガード本発動の回避に向けた閣僚会議を開き、合意に達した。合意内容は、日本政府は本発動を回避、中国は日本製自動車などに課していた高率関税を撤回するというものであった。今後中国経済はより一層市場経済化が進み、日本との貿易関係はさらに複雑になることが予想される。様々な産業で起こると予想される摩擦の中身をしっかりと見極め、それにどのように対応するかを考えていかなくてはならないと思う。
2005年08月13日
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