March 24, 2015
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カテゴリ: 未来社会の構造
5.不老長寿社会の人口問題


合計特殊出生率(一人の女性が一生に生む子供の数)は世界平均では現時点(2005-2010年)で2.56程度であるが、経済的に豊かな国々ではこれより小さい。アメリカ合衆国は2.08、一人っ子政策を推し進めている中華人民共和国が1.77、日本は1.27の低レベルである。人間の平均寿命とこの特殊出生率のレベルによって将来の人口推移は決まる。
寿命が延びない状況で特殊出生率が2を下回るのであれば人口は増えない。寿命が延びていく場合にはその延び率に応じて特殊出生率を下げていく必要がある。若返りの薬が普及して寿命が大幅に伸びても、特殊出生率が1程度の状態が継続すれば、人口増加は抑えられる。発展途上国ではいまのところは人口増加が著しいが、避妊器具や避妊薬が普及したりすればおのずと特殊出生率が低下するかもしれない。しかし、特殊出生率が2程度の状態で、若返りの薬が普及すれば、人口増加に歯止めがかからなくなる。
人口増加に歯止めがかからなくなれば、地球環境問題とは別に、不老長寿によって増え続ける人口問題が未来世界の重大問題になる。現在以上に人口が増え続ければ、個人レベルから国家レベルまでの様々なレベルで争いが起きるようになるであろう。
ここで人間が不老不死であるものとし、男女比率を1:1、特殊出生率を1に抑制するものと仮定し、未来の人口規模を計算してみる。これは次の簡単な級数の式で表現できるが、未来の人口(Nf)は人口抑制策開始時点の人口(Nn)の2倍に収束する。
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つまり、厳密に一人っ子政策を継続的に推し進めていけば、人間が不老不死になっても、人間の総数は政策開始時点の2倍に抑えられる。但し、一人っ子政策の行きつく先は、次のように子供がいなくなる社会になる。
64人→32人→16人→8人→4人→2人→1人→0.5人→0.25人…
生まれた人間はめったなこと、つまり不慮の事故と自殺以外では死ななくなり、これまでどおりの出生率が継続するならば人口は増える一方になる。このため、若返りの薬や不老不死の薬の開発・販売はこのような人口抑制策と一体に行われる必要があり、これに失敗すれば人口爆発が制御不能になり、地球が人間で溢れ返るような事態になる。

世界的規模で特殊出生率を1に抑え込むのは極めて困難なことになるであろう。全体主義国家ならばいざしらず、民主主義と人権を建前上後生大事にする国々で、一人っ子政策を採用することなど果たしてできるものであろうか? 人口爆発よる人類の危機が予想されていても、多少とも時間が残されているうちは、このような際どい選択を避けて、これまでの延長線上で次のような対策が採用されるのかもしれない。
●資源開発
・地球の生態系を豊かにして食糧を確保
・これまで居住や食料生産に適さなかった地域や場所の開発
・砂漠のオアシス化や海洋を居住可能な場所とするための洋上都市開発
●資源の有効利用
・資源のリサイクル
・肉食から菜食主義に切り替えて食料の総量を増やす
●人口抑制策
・薬の使用が進んでいる国から順に一人っ子の奨励
これらは比較的穏便な対策であるが、破局の先送りに過ぎない。破局が近づけば、国家間での資源争奪を巡る国境紛争の挙句の果てに核戦争を勃発させ、これで人口問題を「解決」するというような乱暴な方法だって絶無とはいえない。いずれにせよ、どのような対策を実施しようが、地球の資源は有限であるため、人口が増え続ける限り最終的には地球での居住可能人口の上限に到達してしまう。このため、なんとしても人口が一定程度以上に増えないようなルールづくり、世界システムをつくりあげる必要がある。

6.子供を産まなくなる


死なない命のため、新たな多数の命が生まれることができなくなる。生きているものの特権により、多くの新しい命の開花が許されなくなる。
ここまでくるのであれば、一人っ子政策と出産禁止が同じことになってしまう。つまり、人間は赤子を生まなくなる。人間はS・E・Xによって赤子を生み・育てるという世代交代を放棄することになる。但し、不慮の事故や自殺で死んだ人がいる場合にのみ、その補充が許可されて新生児を誕生させることができる。この誕生は妊娠・出産という形態をとらなくなっているかもしれない。
宇宙船地球号に定員を設け、定員割れになった場合にのみ、その不足を補うことが許されるということである。死んだ人の遺言により、どのように子供を誕生させるかを指定できるようになっているかもしれない。新しい子供は冷凍保存した卵子と精子を使うかもしれなし、IPS細胞から卵子をつくり、試験官などで培養して製造するようなことができるようになっているかもしれない。
セックスは人生の楽しみだけのためにあることになり、生殖行為としては行われなくなる。女性は月経が始まる年齢に達すると不妊手術を受けることになるのかもしれない。他の動物と異なり人間のS・E・Xはすでに生殖行為としてではなく99%以上が楽しみのためのものになっているので、意外にすんなり受け入れられるのかもしれない。
ところで、IPS細胞から人間を製造できるようになり、死んだ人間が遺言で、自らの細胞を元に、新生児を誕生させることができれば、死というものが受け入れやすくなるかもしれない。安楽死の技術がこれをサポートするであろう。子供は死んだ人の生まれ変わりということになる。遺伝子は同一なので、記憶だけが引き継がれないということになる。子供は前世の親の経歴をトレースすることにより、その人の生まれ変わりであると考えるだろう。





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最終更新日  March 24, 2015 08:42:45 PM
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