森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2017.09.23
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森田先生は心臓神経症の患者に対して次のように治療された。
今夜寝るときに、発作が最も起こりやすいという横臤位をとり、自ら進んで、その発作を起こし、しかもその位置のままに苦痛を忍耐し、かつその発作の起こり方から、全経過を熱心に詳細に観察するようにしてください。
そうすれば私は、あなたの体験によって、将来決して発作の起こらない方法をお教えする。
もし今夜このために、どんなに激しい苦痛があって、徹夜するようなことがあったとしても、長い年数の苦痛と不安と取り去ることができれば、 十分忍耐する価値があることである。

患者さんは、 「その夜教えられたように実行したけれども、自分で発作を起こすことができないで、 5分間ほどもたたないうちに眠りに入り、翌朝まで知らなかった」ということである。
森田先生は、あなたはそのとき、一晩中発作の苦痛を覚悟したのである。恐怖そのものの内に突入したのである。この時は、発作が、あるいは起こりはしないかという疑念もなければ、また発作から逃れようとする卑怯な心があるのでもない。これこそ発作が起こって来なかった理由である。
今までは知らず知らずの間に、発作の襲来を予期してこれを迎え、一方にはこれから逃れようとして心に迷いが生じ、いたずらに苦痛不安を増大させたのである。 (神経質の本態と療法 森田正馬 白揚社 129ページより引用)

同書のあとがきで、河合博医師がわかりやすく解説をしておられる。
この治験例は、できるだけ発作を起こすように努力してみよということである。

すなわち意識の中心より周囲に押しやろうと押し込めようとする。そうすればするほど、それは意識の中心を占領する。
意識しまいとすればするほど、ますます、 1点に凝集強化される。これが神経質の症状である。
しかし、意識は、絶えざる流動・変化である。神経質症状も、環境の中で力動的に変化消長する。
そして症状が意識の中心より、やや遠ざかった時に、意識的に無理にこれを中心に持ってくるように完全に努力させる。
発作を起こすようにさせる。これは平素の患者の努力とは反対の心の働きをさせるのである。
すると、ここに意外なことには、中心に持っていこうとする努力とは逆に、周囲に退くのである。
(同書 267ページより引用)

心臓神経症の患者さんは、発作が起きると、いつ突然死するかもわからないので、いつもそのことに恐怖している。
つまり、頭の中は全神経を1日中心臓発作のことで占められている。
森田先生は器質的な疾患がないという事を確認した上で、森田療法が有効であると判断されたのである。
認知行動療法では、不安を10段階ぐらいな階層に分けて、簡単なことから恐怖突入をさせる。次第に慣れさせて、段階を上げて、更に恐怖突入をさせる。次第に不安が遠のいて、日常生活はなんとかできるようになる。

そうは言っても、この方の場合は、不安を取り去ることにばかり神経が集中している。
不安を取り去るという意識をなくするためには、逆説的に不安を受け入れて、その不安の行き着く先を確認させようとされたのである。症状にとらわれてなすすべがない思考パターンから抜け出すための究極の選択である。
そうすることによって、心臓発作が起きなかったということを体験させることが治療につながるのである。
これは、不眠で悩む患者さんに対しても有効な治療法であったという。





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