森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2024.01.30
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帚木蓬生氏のお話です。

「無所住心」の境地を日々実行しているのが、熟練の看護師や介護士です。
たとえば、高齢者50人が坐る食堂で、朝食が始まったとします。
50人のなかには、自由に手が動かせず、食事介助が必要な入所者が数人います。
介護士は、そのうちの二人を受け持って、ペースト状にされた食事を食べさせるのです。
ひとりの高齢者の口にスプーンで食事を入れると、また別のスプーンでもうひとりに食事を入れて上げます。
その際に、最初のひとりが、喉に食事を詰まらせないか注意する必要があります。
とはいえ、注意はそれだけにとどまりません。
他の入所者がどうなのか、全体に眼を配らなければなりません。

かと思えば、椅子からずり落ちる入所者もいるでしょう。
まさに、「無所住心」そのものであって、注意はホール全体に行き渡らせなければ、仕事はできません。
(生きる力 森田正馬の15の提言 帚木蓬生 朝日新聞出版 90ページ)

不安にとらわれる人は、一つの不安に意識や注意を集中する傾向があります。
森田の精神交互作用では、一つの不安に注意を向けていると感覚が鋭敏になるといいます。
感覚が鋭敏になると、気になって、益々そこに注意を向けていく。
その悪循環のスパイラルはどんどん増幅されていきます。
そして最後にはアリ地獄の底に落ちて、神経症として固着してしまうのです。
天気の良い日に虫眼鏡で太陽の光を一点に集めると、新聞紙はすぐに燃え上がってしまいます。
これと同じ現象が精神世界に起きているのです。
その悪循環に陥らないようにするためには、四方八方に注意や意識を向けることです。


途中で入室した人、受講生のしぐさ、外から聞こえてくる騒音、机の上に置いてある水の入ったコップ、時計や講義メモ、講義内容など。
これがまさに「無所住心」の状態です。

どうすれば「無所住心」の態度になれるのでしょうか。
精神状態を弛緩状態ではなく緊張状態に置くことです。
今ここの瞬間を真剣に生きていく態度が肝心です。


車の運転をする人は、交通事故を起こさないように、あるいは警察に反則切符を切られないために緊張しながら運転をしています。
例えば交差点で右折するとき、信号、市内電車の動向、対向車の動向、交差点内での歩行者の動向などに細心の注意を払っています。
時々交差点内で事故を起こす人がいます。そういう人は注意力散漫です。
心ここにあらずで、頭の中では別のことを考えていたという人もいます。
昆虫のように四方八方にアンテナを張って気が張っている人は、軽率な事故を起こすことはありません。
「無所住心」を身に着けている人は、神経症の蟻地獄に陥ることはありません。





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Last updated  2024.01.30 06:20:06
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森田生涯 @ Re:阿久悠さんが「ジョニーへの伝言」に託した思いとは(03/06) 通りすがりさんへ コメントありがとうご…
通りすがり@ Re:阿久悠さんが「ジョニーへの伝言」に託した思いとは(03/06) この曲の歌詞の意味がわからなくて検索し…
森田生涯 @ Re[3]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ 今の生活は日中のほとんどが…
stst@ Re[2]:強情と盲従の弊害について(02/27) 森田生涯様、返信アドバイスをしていただ…
森田生涯 @ Re[1]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ コメントありがとうございま…

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