2008年04月19日
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カテゴリ: シリーズ幕末史


坂本龍馬は、「亀山社中」を留守にする日々が続いていました。

そうした龍馬が留守の間、
「亀山社中」では、困難な事件が相次いで持ち上がっていて、
その運営自体が窮地に追い込まれるまでになっていました。

以下、「亀山社中」で持ち上がっていた事件のいくつかを。


(近藤長次郎の切腹)

「亀山社中」は、幕府の発令により武器や軍艦の調達が出来ないでいた長州藩に対し、
武器や軍艦を購入するための仲介役を果たしました。
これが、薩長同盟に向けての実績となっていったわけですが、
この時に、中心となって活躍したのが近藤長次郎でした。

この功労により、近藤長次郎は長州藩から高く評価され、
長州から多額の成功報酬を受け取りました。

この時、彼もこれを「亀山社中」に届け出れば良かったのですが、
かねてから、イギリス留学を希望していた長次郎は、
これを資金にして、密かにイギリスへの渡航を企てます。

グラバーに船の手配をしてもらって、出航を待つ長次郎。
ところが、折からの天候不良のため出航は延期されることとなりました。

やがて、このことが社中の仲間に露見することとなり、
長次郎は「同志の盟約に背いたぬけがけである」として、
隊士たちから、隊規違反を詰問され、
切腹して果てました。
慶応2年(1866年)1月14日のこと。

家業から、饅頭屋の愛称で呼ばれていた近藤長次郎。
龍馬は、後でこれを知り、長次郎の死を悼んだと言います。


(ユニオン号所有権問題)

ユニオン号は、「亀山社中」の仲介により長州藩が購入した軍艦。
但し、名義は薩摩藩、「亀山社中」が薩摩旗を掲げて薩長両藩のために操船・運用する、
という取り決め(桜島丸条約)が結ばれていました。

ところが、この位置づけについては、各々の思惑があって、
その後もくすぶり続けました。

一旦は、坂本龍馬の仲介により、ユニオン号の運用については長州藩の統制下に置くこととし、
実質的に、亀山社中の同志が乗り組み運用するということで決着しました。

しかし、結局は、長州海軍局が「長州が購入費用を負担するからには長州で使用すべき」との
主張を譲らず、最終的には長州海軍局の所属となりました。

ちなみに、この船。
最初はユニオン号と呼ばれていましたが、薩摩藩・亀山社中では桜島丸と呼ばれ、
さらに、長州藩籍となってからは、乙丑丸と改名されています。


(ワイル・ウェフ号の沈没)

ユニオン号(桜島丸)の運用がままならない状況で、
龍馬は、新たな船の入手へと動きます。

海運業を中核事業とする「亀山社中」にとって、
肝心の船がなければ、事業自体が成り立ちません。

ワイル・ウェフ号は、そんな龍馬が薩摩藩の後援を得て、
苦心惨憺、ようやく手に入れた洋式帆船でありました。

慶応2年(1866年)4月。
ワイル・ウェフ号が、長崎に到着。
命名式を行うため、まず、鹿児島へと向かいます。

そこへ、偶然、長州から薩摩へ寄与される米を積んだユニオン号(桜島丸)が
長崎に入港していたことから、
ユニオン号がワイル・ウェフ号を鹿児島まで曳航していくことになりました。

ワイル・ウェフ号の船長は、鳥取浪士の・黒木小太郎。
副将は土佐出身の池内蔵太と、塩飽佐柳島出身の佐柳高次、
以上3人の、社中のメンバーが乗り込みました。
他に水夫が十人余り乗り組んでいました。

長崎を出港し、順調な航海を続けながら薩摩領の甑島近くにたどり着いた時、
ワイル・ウェフ号は、突如、猛烈な暴風雨に巻き込まれます。
ユニオン号も、曳航していくことが危険であると判断して、
やむなく、引き綱を切断することを決断。

その後は、暴風雨の中、為す術もないままにワイル・ウェフ号は漂流を続けました。
そして、ついに、五島列島沖合いの暗礁に乗り上げて転覆。
船体は一瞬のうちに破壊されてしまいました。

黒木小太郎や池内蔵太などの、社中幹部をはじめ、水死者は12名。
3名が一命を取り留めましたが、他の者は積荷とともに海中に泡となり沈みました。

霧島から鹿児島に戻ってきていた龍馬は、
ワイル・ウェフ号が到着するのを、楽しみに、
今かとばかりに待っていました。
そこへ届いた悲報でした。

同年、6月。
龍馬は同志の死を悼み、ユニオン号を下関に送り届ける途中、
社中の同志を連れて、五島列島に立ち寄りました。
龍馬は、自らが碑文を書き、土地の庄屋に金を渡して碑を建てさせ、
志半ばにして散っていった同志の霊を慰めたと言います。

この事件は、当時、窮乏状態の亀山社中に追い打ちを掛けることになりました。
龍馬の亀山社中は、最大の困窮期を迎えることとなったのです。

そうした中、龍馬の操縦するユニオン号は、下関に到着。
しかし、そこではすでに、幕府と長州との戦い、
第2次征長戦が繰り広げられていました。
その間に、時代は、また、一歩先へと進んでいたのです。





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最終更新日  2008年04月19日 08時03分10秒
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