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「ただいまー♪」 本来なら反抗期であってもおかしくはない中学2年生、矢島克哉の挨拶は元気だ。帰ってきたのかいないのか分からないような少年少女たちも多くいるというこの御時勢にあって、可能な限り素直に育っていると言えよう。 どこかの誰かに見せたいほどの几帳面さで脱いだ靴をそろえると、克哉は家の中に入っていった。ついでに少々乱れていた他の靴も整理するあたり、これ以上すると嫌味になるので気をつけたほうが良いかもしれない。「おかえりなさい。ちょうど良いところに帰ってきてくれて助かるわぁ~」 そんな克哉を迎えたのは、パートに出かける寸前の母、弓子であった。何があったのか知らないが、克哉の姿を見て明らかに安堵している。「何かあったの?」 何か面倒ごとに巻き込まれるのではないかという懸念は微塵ほども浮かばないのか、あっけらかんと弓子に問いかける克哉。まあいつも奈里佳がらみの面倒ごとに巻き込まれていれば、普通レベルのトラブルなど何ほどのものかということなのだろう。「お父さんから電話があって、夕方の5時までに届けてほしい書類があるそうなのよ。何だか分からないけど大事なものらしくって、それがないとものすごく困っちゃうそうなんだけど、私はもうパートに出ないといけない時間なのよね。だからお願い。これなんだけど、お父さんの会社まで届けてくれないかしら?」 そう言いながらきちんと封がしてある茶封筒を克哉に差し出す弓子。学生鞄を足元に置いて、手渡された封筒を確認してみると、その中には何やら冊子のようなものが数冊入っているのが分かる。「お父さんの会社まで届けるの? しょうがないなあ、じゃあ着替えてくるから……」 面倒くさいとは思っていても、母親の言うことを素直に聞いてしまう克哉。でもマザコンでは無いので安心して欲しい。まあ、それはともかく家に上がる為に克哉は靴を脱ぎかけた。「そんな時間なんか無いから、もう学生服のまま行ってちょうだい。今すぐ出れば4時12分の電車に乗れるから、5時にはギリギリ間に合うわ。じゃあこれが地図と電車代だからお願いね」 弓子は家に上がりかけた克哉を押しとどめると、有無を言わせずドアの外へと追いやった。あっという間の出来事だった。「あ、ちょっと……」 克哉は目の前で閉められた玄関のドアに話し掛けるように右手を伸ばしたが、すぐに諦めた。基本的に克哉は押しに対しては弱い人間なのだ。「もう、お母さんってば強引なんだから」 一言そうつぶやくと、克哉は財布を学生服のポケットに入れると、駅に向かって歩き出した。本当に素直で流されやすい性格だ。「お父さんの会社には小学生の時に一度行ったきりだけど、地図もあることだし、なんとかなるよね」 素直な上に前向きな克哉だった。悪く言えば『てんねん』まであと一歩かも知れない。 ちなみに小学生の時に父親の会社に行ったことがあるというのは、社会見学の一環で、『お父さんが働いているところを見学してみましょう』という授業があったからだ。もっともその企画も、母子家庭の子供に対して不適切な授業内容だという批判が出て、後にも先にも一度きりしか行われたことがない。世の中、そんなもんだ。 というわけで駅に向かう道を歩いている克哉の頭の中に、なにやら話しかけてくる声無き声が聞こえてきた。(克哉君も大変ですね) 声だけなので姿は見えないが、それはピンク色をしたぬいぐるみの猫のような姿をしているクルルだった。見た目はともかく7000年後の未来にある魔法の国、ネビルからやってきた魔法生物(?)だったりする。(あ、クルル、もしかしてどういう状況だか分かってるの?) 最近は慣れたもので、克哉も声をまったく出さずに離れた距離にいるクルルと話すことができるようになっている。まあ、だからと言って何の役にも立たないのであるが。(ええ、基本的に僕はいつでも克哉君やそのまわりのことをモニターしてますからね。ちゃんと分かってますよ) やってることはストーカーと大差ない魔法の国の魔法生物(?)である。(じゃあさ、何か魔法でぱぱっと片づけられないかな?) 素直に言うことを聞いているだけかと思ったら、やっぱりそれなりに楽はしたいらしい。(奈里佳ちゃん2号が起きてるのなら話は簡単なんですけどね。まだ寝てるんでしょ?) 暗に今は無理だと言っているクルル。(うん、昨日、また変身してフューチャー美夏とバトルしたばかりだからね。まだしばらくは起きてこないんじゃないかな) クルルに答える克哉の口調はややため息混じりだ。例によってまたしても発見した結晶化現象を解除するために、克哉こと魔法少女♪奈里佳の活躍と、それを妨害するナノテク少女フューチャー美夏との激しいバトルが、昨日あったばかりなので疲れているというだけでもなさそうだ。(やっぱりまだ起きてきそうにありませんか。奈里佳ちゃん2号は) 予想の範囲内といった感じで答えるのクルル。 ちなみに克哉はクルルの魔法によって普段から周囲の魔力を吸収し続ける体質に変化しているのだが、その魔力値が最大容量達した時、魔法少女♪奈里佳に変身することができるのである。 そして変身するには魔力が足りないが、ある程度の魔力が溜まった段階で、克哉自身の精神とは別に【魔法少女♪奈里佳】という第二人格が、【克哉の精神のサブシステム】として現れてくるのだ。(でもまあ奈里佳2号が出てきても、役に立ってくれる以上に迷惑もかけてくれそうだから別に良いんだけどね) 克哉は、2号とはいえ奈里佳が自分自身であることを忘れたかのような発言をする。まあ忘れたくなる気持ちも分からなくもない。 そしてああだこうだと言っているうちに、克哉は中津木駅に着いたのだった。【なかがき】 かなりブランクを開けてしまったので、リハビリの為に妖精的日常生活の第15話を書く前に、魔法少女♪奈里佳の番外編を先の書きますのでよろしくお願いいたします。 あとアイディアさえ出てくれば妖精的日常生活の番外編も書きたいと思ってます。
Nov 30, 2006
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