劇場通いの芝居のはなし

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2019.06.13
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カテゴリ: 演出ノート(3)
彦市は、隠れ蓑を焼いた灰を身体に塗って、見えなくなって登場します。
「はあこらよかった。灰になっても神通力はいっちょん変わっとらん。……どうです、声はすれども姿へ見えずでっしゅうが?」。これは声だけ聞こえるというト書きになっていますが、どうもそれでは寂しい。それで、姿を出すことにしました。カッパのような、ビニールの薄い上着を着て、隠れ蓑の灰を塗ったつもりにしました。これで、観客に話しかけることが、素直に出来ます。
姿が見えなくなった彦市は飲んだり食ったり、散々に悪さをします。脚本にはその場面はありませんが、舞台では演じました。何人かがご馳走やお酒をもって、舞台を横切る。そのご馳走やお酒を、彦市が盗んでしまいます。彦市よりも、盗まれる人たちの慌てぶりや、キョロキョロする演技が、彦市の姿が見えないことを示してくれます。

散々に飲み食いして満腹した彦市は、そのまま木の下に寝転んで、いびきをかいて寝てしまいます。そこへ天狗の子がやってきます。今回は、起源が良いです。親天狗に褒められたからです。
「あの天狗の面は、うちの死んだ爺さんに生き写しげな。その上大好物の鯨の肉ば取ってきたとは大手柄。隠れ蓑はまた替えのあるけんゆるしてやる」ということで、一件落着です。しかし天狗の子は急に怒り出します。「ばってん、ああ腹ん立つ。どうもこうもわたいは、彦市んやつが癇癪ぃ障ってたまらん」。自分をこどもだと思って、だまして馬鹿にした。そんな彦市に対して、プライドが許さないのです。子ども同士の意地のはりっこのようなものです。このままにしておいては、将来も彦市に軽んじられるかもしれません。どうあっても、彼を徹底的にやっつけてやらねば、天狗のメンツがたたないのです。

彦市を捜し回っていると、いびきが聞こえます。でも、姿は見えません。ははあ、これは隠れ蓑を着て眠っているに違いない。天狗の子はいびきのするあたりに、ちかづいてゆきます。ここは手探りをする方が、観客に解りやすいでしょう。そして、彦市につまづきます。「やいやい誰か、人の寝とるところをば。……や、天狗の来た」。「やい彦市! 大ぬすど! どけぇおるか。蓑ば脱げ」。
天狗の子は彦市を捕まえようとしますが、姿は見えない。彦市は酒が抜けていないから、動きが悪い。滑稽な取っ組み合いになります。そして追い詰められた彦市は、転がって、川の中にザンブリ。
二重を組んでいるなら、川へはまるのは簡単です。そうで無ければ、一つは観客席におりる方法があります。ただ、これは観客から見えにくくなります。或いは、ここで舞台の前に波幕を拡げ、その中で動いて、川の中の様子を示す方法があります。
by 神澤和明





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Last updated  2019.06.13 09:00:09


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