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(続き)
Photo G
「道がないよ!」 仙人沢の源頭。 (2013/6/24 7:46)
尾根道は次第に右手に尾根を持つ山腹の道になり、さらに沢に向かって降っていく。そこは仙人沢の源頭なのだが、沢の向こうに道が見えない(徒渉点5)。イオが困って後を振り向いている。
沢を7、8mほど下ると対岸に道が見える。じつは必要な場所には赤い(色褪せてピンクだが)布が木に括り付けられていて、見落とさなければ心配はないようだ。
Photo H
この沢が登山路。(2013/6/24 7:53)
仙人沢の源頭を渡った後の道は、人の踏み跡が残らないような沢道だ。イオには道に見えないらしく、少し戸惑っているようだ。突然、支沢が分かれたりするが、ここでも赤い布が過不足なく目印となっていて迷うようなことはない。
ゴロタ石の沢道は歩きやすいわけではないが、このあたりにはまだショウジョウバカマが咲き残っていて目を楽しませてくれる。
左手に真っ黒な泥道の急斜面があらわれて4、5mを這い上がると、もうそこは背丈ほどの笹原のダンゴ平である。道脇には濃淡の紫のハクサンチドリがたくさん咲いている。
Photo I
ダンゴ平出合いから見る前山、仙台神室岳。(2013/6/24 8:03)
道は三叉路となって、左手の山形神室岳と右手の仙台神室岳を結ぶ道に出合う。ずっと木下道を歩いてきたので、日射しが気持ちよい。東の方向には登山路がはっきりと刻まれた前山、その後にこれから登る仙台神室岳が逆光で黒い姿を覗かせている。
1230mほどの前山の頂上も眺望がよいが、ここでは白い花を咲かせているハクサンシャクナゲに目が引かれる。近くの雁戸山にはピンクのアズマシャクナゲが咲いていたが、ここではピンクの花は見えない。隣の山形神室岳では咲いているシャクナゲを見ることができなかった。シャクナゲの木はたくさんあるが、どれにも花が着くというわけではないらしい。
Photo J 前山からの仙台神室岳。(2013/6/24 8:22)
前山から見る神室岳は、やはり逆光で黒々と聳えている。これから頂上直下の急坂に喘ぐのである。ここの急坂は粘土質の道で滑りやすい。足がかり、手がかりが少ないのだ。上りは這うように登れるが、下りが心配になる道だ。
左:ハクサンチドリ、右:コケモモとゴゼンタチバナ。
息を喘がせてのぼれば、そこにはマルバシモツケがたくさん咲いていたし、群生するゴゼンタチバナの中からコケモモが顔を覗かせていたりする。
Photo K
仙台神室岳頂上。(2013/6/24 8:49)
予定よりだいぶ遅れて、8時49分の頂上着である。登山口の案内看板には「仙人沢入口-ダンゴ平 150分」とあった。20分のロスを除いて、実際には140分を要した。ダンゴ平-頂上は45分ほどかかったことになる。
遠く南の雁戸山、熊野岳には雲がかかり始めている。太平洋側は曇り、日本海側は晴れである。笹谷峠に斎藤茂吉の歌碑があったが、この地にちなんだ歌が他にもある。
はかなかるわれの希ひの足れるがに笹谷峠のうへにゐたりき [1]
うつせみの胸戸ひらくわがまえに蔵王は白く雁戸ははだら [2]
蔵王のぼりてゆけばみんなみの吾妻の山に雲のゐる見ゆ [3]
白雲は湧きたつらむか我ひとり行かむと思ふ山のはざまに [4]
蔵王山に斑 (はだ) ら雪かもかがやくと夕さりくれば岨ゆきにけり [5]
頂上で遅い昼食である。イオはイオの、私は私の弁当を食べる。相変わらずイオは私の弁当の方が気になるらしいが、ほぼ完食する。雁戸山、山形神室岳から3回続けて完食というのはイオには珍しい。食欲があるのはいいことだ。ご褒美に甘いクッキーを少しやる。
食事をしていると夫婦連れ(たぶん)の登山者が頂上に着いた。女性が大きなザックを背負って先に到着し、その3分1ほどの荷物を背負って息をハァハァ言わせながら男性が5分ほど遅れ到着した。高速「笹谷IC」付近から歩いてきて仙人沢コースを登ってきたのだという。
少し離れて休んでいるお二人に挨拶して、9時30分過ぎに下山をはじめる。下りには不向きな悪路のことを考えれば、下山路に仙人沢コースを取るのは賢い選択ではない。
仙人沢コースを上り、山形神室岳-トンガリ山-ハマグリ山-笹谷峠と周回するコースを勧めている登山書もある。ただ、そのコースでは笹谷峠から仙人沢入口まで炎天の舗装路をイオが歩く羽目になりそうなのだ。犬は炎天のアスファルト道路に弱い。
舗装路をバイパスする山道が地図には記載されている。しかし、笹谷峠付近で数回探したのだが、未だにその道を発見できていないのだ。
とにかく、仙人沢コースを下るのである。頂上直下の急坂をそろそろと降り、ダンゴ平の下のゴロタ石の沢では転ばないように気をつける。つまり、時間さえ気にしなければたいしたことではないのである。
とはいえ、サワラ林の尾根からの急降下には苦労した。下りで登山者に出合う可能性が高いのでイオをリードから放せない。イオを4mの伸縮リードの範囲内でコントロールしなければならない。イオとすれば、4足で一気に駆け下りて行く方が遙かに楽なのである。
4mの範囲でイオに「待て」と言い、私がイオに近づくまで静止させておくのは意外に難しい。「待て」で待っているのだが、私が動き出すと自分も動いていいと判断するらしい。2度ほど4mを越えて宙づりになってから少し問題を理解したらしい。しかし、最後の岩の壁は途中で止まりようがない。イオを上に待たせておいてロープを伝って私が途中まで降り、イオが一気に駆け降りられるようにした。ところが、私の目測が間違って50cmほどリードが足りなくて、最後にもう1度、イオは宙づりになったのだった。
徒渉点4の仙人沢の上流200mほどの仙人大滝に行ってみることにする。ザックを置いて右岸の道を辿ると途中から沢の中を行くことになる。大きな倒木があって結構歩きにくい。
小さな沢の上に渇水で水量は少ないが、滝全体の構造は圧倒的である。写真には写っていない左右の岩壁は大きくハングオーバーしている。真下からはとても写真には収めきれないのである。かといって、離れれば狭い谷の両岸に隠れてしまう。
Photo L
渇水の仙人大滝。(2013/6/24 11:24)
3つの急斜面を無事に降り終え、仙人大滝も見た。あとはひたすら歩くだけである。下山路では何人かの登山者と出会うだろうと思っていたが、まったく出合わなかった。午前中に、仙人沢コースを登ったのは3人と1匹だけのようだ。
ゆっくり歩こうと心がけていたせいか、ほとんど疲れを感じない。年齢相応の歩き方というものがあるのだろう。そんなことを思いながら歩いていると、どうもイオの様子がおかしい。歩いている私の前に回っておやつをねだるのだが、後ずさりするとペタンと座り込んでしまう。後ろ肢に力が入らないらしい。
家に帰り着くと、イオは左の後ろ肢をほとんど動かさなくなった。家族みんなでああだこうだと心配したのだが、次の朝には、いつものように散歩に出かけ、いつものように普通に歩いていた。
イオの症状はひとまずはおさまったものの、次の山歩きが心配なのである。
[1] 『斎藤茂吉句集』山口茂吉/柴生田稔/佐藤佐太郎編(岩波文庫 2002年、ebookjapan電子書籍版)p. 232。
[2] 同上、p. 230。
[3] 斎藤茂吉『歌集 赤光』(新潮文庫 平成12年)P. 210。
[4] 同上、 P. 109。
[5] 同上、P. 55。
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