山行・水行・書筺 (小野寺秀也)

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小野寺秀也

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2016.01.27
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テーマ: 街歩き(651)
カテゴリ: 街歩き

 東京メトロ銀座線の終点、浅草駅から地上に出るとすっかりと晴れ上がった上天気である。この空の下を歩いてから地下鉄に乗ったはずなのに、この時に気づいたというのは変なことだが、地下から地上へという落差がそうさせるのかもしれない。
 早朝に仙台を出て、上野の東京都美術館で『ボッティチェリ展』を見てからの街歩きだが、仙台を出たままの服装で館内に入ったら、暑さで気持ち悪くなってしまった。
 季節を2か月ほど巻き戻すように脱ぎ捨てた服でザックがパンパンに膨らんで、ただの散歩なのに傍目には山登りのように見えるだろうと思いながら、まったく起伏のない墨田区の街を歩くのである。

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Photo A1  吾妻橋西詰から。(2016/1/27 12:09)

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Photo A2 (上) 吾妻橋から下流、駒形橋方向。(2016/1/27 12:10)
Photo A3 (下) 上流、水上バスと東武線橋梁。(2016/1/27 12:11)

 スカイツリーへの案内が地下鉄のアナウンスで流れたとき、この辺りはスカイツリーの地元だということを思い出した。吾妻橋の上の賑わいはそのせいだろう。スカイツリーは、浅草から東急線で一駅だが、吾妻橋からも1km弱でとても近い。
 隅田川をのぞき込むと、水上バスというのだろうか、平たい船はまもなく出船するらしく、船の後部から沸き立つ波が少しずつ大きくなっている。

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Photo B1 (左) 観光案内所脇の道。(2016/1/27 12:18)
Photo B2 (右) ずっとこんな道。(2016/1/27 12:24)

 吾妻橋を渡り終えて、東詰で右斜めに分岐する道に入った。時代劇でよく耳にする「本所」という地名に惹かれて南へ向かうのである。分岐する角に吾妻橋観光案内所があって「スカイツリー周辺ガイドマップ」をいただいた。スカイツリーが真ん中に位置する地図だが、亀戸駅がかろうじて左下隅に入っているので役に立ちそうだ。
 しかし、街並みは変化がない。普通の民家に3階から5階くらいまでの事務所ビルやアパート、マンションが混在し、時々商店が現れる路が続く。まっすぐな道ばかりで、街は方形に区切られていて、左に曲がっても右に曲がってもほぼ同じ風景である。ときどき目につくのは、民家の前の鉢植えガーデンである。歩道と車道の境に高低を塩梅してたくさんの鉢植えが並べられているところがあるが、箇所は少ない。
 この辺りは、関東大震災でも東京大空襲でも甚大な被害をこうむったところで、道はまっすぐに付け替えられただろうし、同じ時期にいっせいに家々を建てたのだろうから、どこも時代的変遷という意味では似てしまうのであろう。これもまた、この街の歴史の所産ということだ。

 南北に走る細い道から春日通りに曲がるあたりに源光寺という寺があって、門の脇に「無門堂」の案内があった。「墓地を継承、お祀りする継承者がいない方の為に、〔……〕墓地内に永代供養合祀墓「無門堂」を建立しました」とあって、なぜかほっとする気分になる。
 わが家の墓所にも放置された墓が散見されるが、町内に空き家がどんどん増えていることと相まって、これからますます継承者がいない墓が増えるだろう。こういう施設なり施策なりが必要なことは言うまでもないが、多くの墓が宗教と強固に結びついていて行政は立ち入ることができないという困難もある。葬送、埋葬はごくごく私的な行いだが、すべての人間に例外なく訪れるという意味ではすぐれて共的な側面もあるのだが……。

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Photo C  外出小学校と若宮公園。(2016/1/27 12:32)

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Photo D  冬のシンビジウム。(2016/1/27 12:35)

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Photo E  野見宿祢神社と総武線高架。(2016/1/27 12:44)

 春日通りから左折してふたたび南北に走る道に入る。この辺りはとっくに本所で、時代劇の地名でインスパイアされた街歩きだったが、そんな時代の面影はもちろん見つけられない。
 細道に入ってすぐ外出小学校があり、道向かいは若宮公園である。公園内にはたくさんの自転車と若いお母さんたち、子どもたちがいる。お母さんたちは三つほどのグループに分かれておしゃべり(たぶん)に夢中である。風体怪しい身としては、公園の写真を撮るどころではなく、急ぎ足で通り過ぎるのである。
 この道の道端ガーデンに立派なシンビジウムの鉢植えがあって、今を盛りと咲いている。1月の外気の中で咲くシンビジウムなど仙台では想像できないが、東洋ランの血が入ったシンビジウムも多く、寒さに強いものもあるのだろう。そういえば、ブログ友のなかに房総でオープンガーデンをやっている人がいて、冬に地植えのシンビジウムが咲いているという記事を読んで、狭い日本のその広さに驚いたことがあった。

 南に歩き続けて、遠くに総武線の高架が見えだす頃、北斎通りに出る。通りの向こうに見える社は、野見宿祢神社である。野見宿祢という名前からものすごく古い神社かと思ったが、明治18年建立とあった。境内に2基の石碑があって歴代横綱の名前が記されている。

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Photo F1 (上) 大横川親水公園(1)。(2016/1/27 13:00)
Photo F2 (中) 大横川親水公園(2)。(2016/1/27 13:04)
Photo F3 (下) 大横川親水公園(3)。(2016/1/27 13:06)

 野見宿祢神社から北斎通りを東へ、地図の帯状緑地「大横川親水公園」に向かう。7~10階建てのマンションが目立つ道である。三ツ目通りを越えて800mほどの距離である。
 親水公園を北に歩くと正面やや右にスカイツリーが見える。水管橋が並走する清平橋までは両脇に植栽のある広場のような公園である。清平橋は関東大震災の復興事業の一つして架けられたというプレートがあった。
 清平橋の下をくぐった向こうは、流水のある文字通りの親水公園になっている。浅いけれども結構な速さで流れている小川が分岐していて、中洲の道を歩いていくと蔵前橋通りに架かる法恩寺橋に出る。

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Photo G  法恩寺。(2016/1/27 13:14)

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Photo H  本所消防署。(2016/1/27 13:25)

 法恩寺橋の西詰から蔵前橋通りに上がり、橋名の由来になった法恩寺を見に左の横道に入る。法恩寺の塀越しに三重塔(鐘楼になっていた)が背後のスカイツリーと並んで見えている。法恩寺は太田道灌によって創建された古刹だという。
 三重塔と山門とスカイツリーを1枚の写真に収めたが、たくさんの電線も一緒に写っている。16本まで数えられたが細い線がもう少しあるようだ。どっかにカラスかトンビが絡まってはいないだろうかと心配するほどの線である。

 法恩寺から東に歩いて四ツ目通りに出る。すこし北上して右折するとピラミッドのような斜面壁をもつ本所消防署の建物が目に飛び込んでくる。このビルは背後の方形のビルやピラミッドに突き刺さったような円形のビルと一体になっている。この建物には左右に玄関が二つあって、一つは本所消防署、もう一つは本条防災館の看板があった。

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Photo I1 (上) 栗原橋から横十間川下流。(2016/1/27 13:32)
Photo I2 (下) 栗原橋。(2016/1/27 13:33)

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Photo J1 (上) 亀戸天神社の脇参道。(2016/1/27 13:38)
Photo J2 (中) 亀戸天神社。(2016/1/27 13:41)
Photo J3 (下) 太鼓橋と藤棚。(2016/1/27 13:42)

 亀戸天神社経由で亀戸駅まで歩くように、本所消防署から栗原橋に出て横十間川を越える。 裏手から亀戸天神に入ろうと細道に入ったが、途中で方向を失ってしまった。右、左、右と曲がったあたりで亀戸天神の方角が一瞬分からなくなったのだが、そこから5mほどの左手が神社の裏口だった。
 境内の西側の道(脇参道と呼んでおく)を通って本殿の前に出る。さすがに結構な人出である。境内には池があって朱に塗られた太鼓橋が二つ架けられている。池の周りには広く藤棚がしつらえてある。天神様なのに梅ではなく藤の名所らしい。

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Photo K  明治通り(亀戸十三間通商店街)。(2016/1/27 13:59)

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Photo L  JR総武線亀戸駅。(2016/1/27 14:03)

 亀戸天神を出ると蔵前橋通りである。蔵前橋通りを東に100mほど歩いて、右手の常緑広葉樹(樹種はわからない)の並木の道を歩く。ここも事務所ビルとマンションの道である。
 常緑広葉樹の道から左に折れるとすぐに明治通りに出る。歩道にアーケードのある商店街で、亀戸十三間通商店街と記された「迎春」の旗がたくさん吊り下げられていた。
 その商店街を南下すればJR総武線亀戸駅である。駅前のバス発着場付近まで来ると、高架駅に到着した下り電車が止まっていた。ずっと墨田区を歩いていたつもりだったが、横十間川のこちらは江東区である。

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街歩きMap。 A L は写真撮影ポイント。
地図のベースは、「ゼンリン いつもNAVI(PC)」。

読書や絵画鑑賞のブログ かわたれどきの頁繰り(小野寺秀也)






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Last updated  2016.02.03 19:03:18
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